在宅医の仕事に行った時のことです

 
ある医師からピンチヒッターを頼まれました
「なぜかコミュニケーションがとれない
数年前に脳出血をおこし失語がある
そのせいもあるが•••
最近はもう来なくていいとまで言われた
ひまわり先生行ってみてくれない?」
とのことでした
 
良い先生でじっくり話も聞く方です
女同士の方がいいのでは?と言われましたが
先生より私の方がよっぽど「おっさん」です
 
 
さてうまくいくかな
 
 
伺って
自己紹介
 
患者さんは麻痺が残る体でお出迎えしてくださいました
 
「何か困っていることはありますか?」
診察の前に聞いてみました
 
患者さんは何か言いたそうに声を出します
でも失語で思うよう表現ができず言葉になりません
 
でも「・・・・・で・・・あ・・・たまらないです」
はっきりと「たまらない」と聞き取れました
 
30分間、こちらから質問をして、なるべくYES、NOで答えられるようにしました
 
半年前に自宅で倒れたご主人のことが心配でたまらない
生きていることはわかっているし
今いる施設も名前は知っている
でもどんな状態なのかわからない
会いたい
できることなら連れて帰ってきたい
 
ずっと脳出血の後遺症があるご自分を介護してくれていた夫を
今度は自分が介護したいということでした
 
約1時間かけ、これだけの話を聞き
ご主人の状態を調べてお伝えすることを約束しました
 
出迎えてくださったときには固かった表情も笑顔に変わり
握手をしようと手を出してこられました
 
ずっと怒っていたのはご主人のことが心配で
でもケアマネさんも、ほかのご家族も「重症で帰れない」としか教えてくれず
居ても立っても居られなかったということです
 
不安がやがて怒りに変わり
コミュニケーションも取らなくなってしまったのです
 
失語のせいではありませんでした
 
 
患者さんご本人の病状の話をしたのは帰り際のたった5分
それにはみんなで笑ってしまいました
 
彼女の心配、気がかりはご主人のこと
自分のことは後回しでご主人のことを気遣っていました
患者さんの背景も含めてすべてが診療の対象なのだといつも思います