腫瘍から大出血する可能性が高い
余命は3ヶ月から6ヶ月
ご家族は主治医からそう聞かされていました
ご本人は認知機能が低下していて
細かいことや複雑な内容は理解できていません
心配しているご家族の不安は大きく
いつ
突然出血するのか
死んでしまうのか
怖くて怖くてたまらないとおっしゃいました
外来で2ヶ月ほど診せていただきました
その間特に何もなく過ごすことができました
「少し遠出をしてもいいですか?」とご家族
残り時間を大切にしたい
思い出を作りたい
主治医から出血する、出血すると聞かされ
とても怖がっていましたが
毎日何も起きず
患者さんもいつも通りなので
そんな気持ちになってきたそうです
恐々出かけたミニ旅行もなんの問題もなく
みなさん楽しく過ごされて
楽しかったです!と報告してくださいました
がんを忘れることはありませんでしたが
患者さんを中心にご家族が集まって
いろんなことをされました
でもある日
脳梗塞を発症して緊急入院
がんが進むと血液の粘度が高くなり
脳梗塞を起こしやすくなるのです
幸い命に関わることはなく
お話もできますし食事もできます
しかし軽度ですが片麻痺が残ってしまい
これまで以上に介護が必要となってしまいました
2週間経過したころ
「一度病状説明をしたいので来てください」
とお願いしました
脳梗塞による症状のことやリハビリの経過報告
もとのがんの現在の状態などを説明するためです
当日
これまでに来たことのない親戚の方も来られました
ご家族は
連れて帰ることはできない
退院させられても困る
それを伝えたかったようです
長く入院できないことを理解されていて
こちらからの話しは
「退院の話」だと思われたようで
話の初めから
自分たちの体調が万全ではないこと
自宅の環境には
階段がある、トイレまで距離がある
など問題が多いこと
そんなお話をされました
これまで受診に付き添ったことのない方が
一番強く主張されていました
そういう「役割」を担っているのだと思います
親の面倒をみるのは当然のこととはいえ
様々な事情があるのは当たり前
自宅で介護できないからといって
愛情がないわけではありません
自分の力で動くことができない方と
暮らすことは本当に大変なことです