少し前のこと

ある女性の手術の麻酔を担当しました
特に難しい手術ではありませんでした

術前の説明に言った時
病室には御主人もいました

それから毎日、病院の中で御主人をみかけるようになりました
朝、出勤して間もなく御主人と顔を合わせました

その奥さんが手術後しばらくして腹膜炎をおこしてしまいました

全身状態は悪く
かなり厳しい説明がされました

御主人は廊下で声を上げ
涙をポロポロ流して泣いていました


奥さんは決して良い状態ではありませんが
もちこたえています

夕方お部屋をのぞいたら

ベッドサイドに座った御主人が、ベット柵にタオルを置いて枕替わりにして座ったまま寝ていました

柵の間から奥さんの手を握り
眠っていました

奥さんも


眠っていました

奥さんがそこにいるだけで
いいのです
御主人には

奥さんがそこに

目の前にいることが
大切なのです