先日「週刊誌がひどい」という記事にも書きましたが、光文社FLASHが載せた近藤誠氏の、子宮がん検診は意味がないという記事に対して、大阪大学産婦人科木村正教授が抗議されています。→クリック
炎上狙いの釣り記事に慣れてやや麻痺すると、

相手にしたら負けや
拡散したら相手の思うツボや

と思ってしまいがちですが、実際には、

専門家がだんまりを決め込むとは何か都合の悪いことでもあるのか?
ちゃんと反論すれば?

という人もそれなりにいるのが事実ですので、木村教授のような方がこのように反論されることは素晴らしいと思います。
たとえ近藤氏やFLASH編集部の良心をかすりもしなくとも、です。

ついでに言い添えると、近藤氏のようなトンデモ理論を編集者は嘘と分かっていて商売のために垂れ流しているのではと思っている方が多いようですが、実際に信じちゃっている理系や医療に弱い編集者はいっぱいいるので、言う時は言ってあげないといけません。本当の話。

以下、木村正教授の文章を全文引用いたします。



子宮頸がんに関心をお持ちのすべての皆さまへ


最近、週刊誌上で「子宮頸がん検診を受けてはいけない」
「上皮内がんは治療しなくてよい」などと書かれた記事が掲載されていることを知り、
腰が抜けるほどびっくりしました。

医療が進歩した今日でも、子宮頸がんは放置すれば死に至る悪性疾患であることに変わりありません。私たちの阪大病院でも多くの患者のみなさんの悲しみの声を聞きながら何とか健康を取り戻していただくよう懸命に治療をしています。子宮頸がんの罹患率と死亡率は、細胞診による子宮頸がん検診を受診すれば、受診しない場合と比べて、減少することが科学的に明らかにされています。わが国においても、厚生労働省研究班が詳細に検討し、「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン」1)において、「細胞診による子宮頸がん検診が有効である」という結論を公表しています。

日本には、検診で異常が発見された場合には次の精密検査を確実に受けていただき、その結果に基づいて、一人ひとりの女性が適切な診療が受けられるよう「診療ガイドライン」2)があり、私たちは地域の産婦人科の先生方から検診で異常があった場合にご紹介いただき、的確に検査、治療を進めています。少し専門的になりますが、細胞診を見る病理医が不足しているアフリカやアジアの国々では肉眼的に酢酸加工で見える初期病変を円錐切除で治療する、という簡便な方法を用いてでも子宮頸がんの死亡率を下げることに成功しています3)。日本はさらに精密に診断をしたうえで治療をしていますので決して取らなくてもよい子宮を摘出したり不必要な円錐切除をしているわけではありません。

今回のようなめちゃくちゃな情報を決してうのみにされないよう、予防・治療ができるがんを野放しにするようなことがないようにぜひ、お近くの産婦人科で子宮頸がん検診を定期的に受けてください。与謝野晶子の愛する弟への歌ではありませんが、私たち産婦人科医が大切に思っているすべての女性の皆さまへ「君、子宮頸がんで死にたまふことなかれ!」とお伝えしたく緊急に私たちのホームページからメッセージをお送りいたします。

 

平成26114

木村 正

 

 

参考文献

1)http://canscreen.ncc.go.jp/guideline/shikyukeigan.html

2)日本産科婦人科学会日本産科婦人科医会 編集・監修:産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2014

3)J Natl Cancer Inst. 2014 Mar;106(3):dju009. doi: 10.1093/jnci/dju009.(英語ですみません。インドの貧しい地域でもこのように子宮頸がんと闘っています。)