次の写真をご覧になって、これは何だと思われますか?
染屋の独り言Ⅱ-笙の袋
細長い裂に長そうな紐が付いています。
裂ではなく細長い袋です。
紐は紫、袋の内側は紫紺。
天井格子の中に舞楽に謂れの深いものが並んでいます。

このブログに馴染みの方はお分かりかも知れませんが、写真の6釜ではなく4釜で作った手拭いの絵が基になっています。
図柄を良く見ると6釜の内、上の4釜は上を向いていますが、下の二釜は柄が逆に。
その下の二釜の右は裏の生地が覗いています。
そうです、下の二釜部分は開く様になっています。
そこから或るものを入れるのです。

入れるものは当然、舞楽に関係の深いもの、そうです「笙」(しょう)です。
雅楽に使われる代表的な楽器です。
染屋の独り言Ⅱ-笙
「笙」は高さが約50cm程度、神社だけでなく寺院でも使われている楽器。
昔はもっと大きな物があったそうです。

構造的にはパイプオルガンに似ているそうで、金属のリードを震わせて音を出します。
息を吐いても吸っても両方で音を出せますがその意味ではハーモニカにも似ていますね。
元は中国から入ってきたものと思われますが、日本独自の進化をしていて中国のものは大きく長い吹き口が付いています。
演奏時には直前直後に火で笙を暖めるのですが、それは息から出る湿気でリードに水滴が付かない様にする為。
水滴が付くとまともに音が出なくなるからだそうです。

上の袋の横にあるのは綿の入った「枕」
笙の竹の間にいれて壊れるのを防ぎます。

この笙の袋は枕を竹の間に入れた笙を下から挿入、下の二釜の部分を折返し長い紐でぐるぐると巻き付けるというものです。

一般に笙の袋は化繊の生地で作った物が殆どだそうです。
裏表両方とも正絹で作った物は無いとか。
笙を持つ人に取っては宝物になるのだそうで、作り手としては嬉しいお話ではあります。

さて、この笙の文様を使う着物は作った事がありませんが、帯は可成りあります。
その一つ。
雅楽の「竜笛」を吹かれるお客様からの注文で染めた雅楽の帯、彩色中です。
染屋の独り言Ⅱ-雅楽の帯彩色中
篳篥(ひちりき)、竜笛と袋、それに笙をモチーフにしています。