帯揚げや半襟、そして肩裏など所謂「裏物」には専門の職人さんや悉皆屋さんが居られます。
そして、初着等の子供用の着物でも。
表物の付下や訪問着には殆ど手を出しません。

そんな中で表物専門の我が工房は裏物にちょっかいを出すのです。

裏物屋さんは徹底した合理化で驚くべき安さで仕上げていきます。
表物なら安物屋さんしか手を出さない「糸目筒描き」は「型糸目」に。
「手伏せ」は「型伏せ」もしくは伏せの要らない「ダック友禅」に。
「ダック友禅」とは彩色する染料に防染剤を混入、熱を掛けると防染効果を発揮するので裏から地染めをすると「伏せ」が不要になります。

ありとあらゆる手法を行使して安価に努めるのです。
一回の注文の量が多いからこそ出来る技なんですが。

初着の問屋さんから注文を受けたときあまりの価格差に驚いたものです。
我が工房は量産態勢が全くありません。
一枚一枚コツコツとした手作りですから、思い切り安価に染めても「ウーン」と唸られる事しばしでした。
そんな訳で現在は問屋さんから初着の注文はありませんが、着物や帯を染めたお客様から初着の注文が入りました。

柄は手鞠と和玩具。
その和玩具で兎が遊んでいる図柄に。
地色は一般的な派手な朱色ではなく濃いめの臙脂色。
写真では日光に当たり明るく見えますが、実物はもっと深め。
お客様の指定色です。
染屋の独り言Ⅱ-お宮参り
実物はもう少し青味。
兎が和玩具と戯れているのがとても可愛いと仰って頂きました。
すやすやと眠っている赤ちゃんが可愛いですね。

この初着を染める為に依頼主にお送りした雛形がこちら。

染屋の独り言Ⅱ-初着:雛形
全体像が分かります。
三歳になると三つ参りに使われます。