カタカタと言う音ではなくジャー、ジャーという音。
これはミシンの音。
裁縫のミシンではなく刺繍ののミシン音です。

数年前に山陰地方のある料理屋さんから問屋さんを通じて、ご自分の帯を暖簾にして欲しいとの注文を頂いた事があります。
朱色の名古屋帯で華紋を織り込んだ西陣織でした。
その時は文字を黒にしてお納めしたのです。
昨年NHKの「鶴瓶の家族に乾杯」にその暖簾が出るエピソードもありました。
表に飾る暖簾、ましてや帯を使ったのですから退色するのは当り前、一度は補正した事もあったのですがあえなく引退する事に。
そして今回もご自分の帯を暖簾に新調する事になりました。
注文は文字を白にする事でしたが、抜染では黄色にしかならないので刺繍で仕上げる事に。
染屋の独り言Ⅱ-一味真
この文字はある有名な方が来店の折りに書かれた色紙を元にしています。
「一味真」料理屋さんに取っては有難い言葉です。
左に書かれた文字がその有名人のサイン。
誰か解りますか?
元首相の「小泉純一郎」さんです。
色紙を頂いた時は正に絶頂の時だったに違いありません。
店の文字はサインではなく店のロゴマークから。
染屋の独り言Ⅱ-あじろ
「あじろ」さんです。
この刺繍可成りの強者。
見事な腕。
拡大したかすれた部分をご覧下さい。
染屋の独り言Ⅱ-部分
上手く表現出来ているでしょう。

こちらは出来上がった暖簾の全体像。
染屋の独り言Ⅱ-暖簾
良い暖簾になりました。
この刺繍屋さんを訪れた時、掛かっていたものはこちら。
染屋の独り言Ⅱ-龍虎
金で描かれた線が下絵。
それ以外の指示は無く配色全てお任せ。
拡大すると。

染屋の独り言Ⅱ-拡大
良く出来ています。
この刺繍、考えるより先に足を出しています。
ミシンの制御は足踏み式、ミシンの音がカタカタではなくジャー、ジャーという猛スピードで仕上げていくのです。
正に技術、残しておきたいものです。