傻小李元霸 | あさひのブログ
庶民に広く親しまれている歴史武侠物語「隋唐演義」のキャラクターの一人、李元霸を主人公にしたドラマ。「(98版)水滸伝」の張紹林監督作品。

「傻小李元霸」(2004年 監督/張紹林 主演/李解)
全35話


傻はばか、まぬけの意味。けなし言葉というよりは「(愛情込めて)馬鹿な子だね」とか「(驚いて)そんな馬鹿な話があるか!」みたいな時に使われている気がする。
李元霸は史実では唐の高祖・李淵の三男(建成、世民の弟、元吉の兄)だけど早逝したらしい。「隋唐演義」では四男(元吉の弟)の設定で、子供なのに超怪力で天真爛漫に暴れ回り大人を困らせるという、わりとよくあるキャラクター。

――隋煬帝の時代。太原を治める李淵の四男・元霸は心が幼く怪力で暴れ出すと止まらない。しかし幼少のころから一緒に育った肖美娘ととても仲が良く、彼女の言う事なら素直に聞いた。
宰相の宇文化及は皇帝のご機嫌を取りながらも腹の内では謀反を企てていた。まずは邪魔な太原侯・李淵を陥れるために皇帝専用の別荘を半年で建造しろと無理難題を吹っ掛ける。そして息子の宇文成都を視察に向かわせた。また皇帝には後宮に国中の美女を集めると提案し、全国に美女召集令が発布された。
肖美娘の母は自分の娘が若く美しいために召集されるのではと心配するが、美娘は大丈夫、といつものように出掛けて行った――

史実では煬帝の正室である簫美娘が、実は李元霸の幼馴染で…という設定のコメディ。「隋唐演義」をベースに置いたまったく新しい物語。
キャラがわかりやすくギャグもとってもベタでわかりやすく、安心して観られる。ただ終始コメディというわけではなく、元霸と美娘の純愛を軸に描いてたり、羅姑娘の復讐劇は任侠もののそれだし、中盤では元霸が殆ど出てこずお堅い歴史陰謀ものになってたりでバラエティに富んでいる作品。

純心無邪気で強い李元霸は子供たちにとってはヒーローに見えるし、大人からは手がかかるけど可愛い息子を見てるよう。もちろん立派な大人が演じてるけど、本当に愛すべきというキャラクターになってる。彼自身はいわゆるイケメン、憧れの男子という感じではないけど、ライバル役の宇文成都がばっちりイケメン俳優だし、美娘、邵陽公主、羅素梅の三種三様な恋模様が女子視聴者をがっつり捉える。アクションはコメディらしいブッ飛びもありつつカメラの早回しなどで迫力をみせる武術で爽快。

いやしかし、これお兄ちゃんの李世民がカッコ良すぎるんよ。この作品では李建成と李元吉は存在しないかのような扱いで、李淵はなんか頼りないし、李世民が正義役を一手に引き受けてるような恰好になってて。演じるのは「大秦帝国」の景監をやってたユィ・ヤン(于洋)。生真面目ゆえに自由人に振り回されるという役どころはまったく同じなのに、やたらカッコイイ。そして「大秦帝国」で彼を振り回してた自由人・衛鞅を演ってたワン・ジーフェイ(王志飛)が楊広というのがまた妙な組み合わせw
一見頼りなさそうな李淵を演じるのは私の好きな俳優ヤオ・ルー(姚魯)さん。正義側の李淵をなんで彼みたいなコワモテに演らせるんだろうと最初は疑問だったけど、この李淵は相当なタヌキおやじ。納得の配役。
ヒロイン美娘はニン・チン(寧静)。彼女の芝居はやっぱ凄い。ただカワイく見せるだけじゃない、計算高さが見えるところが好き。小悪魔だねぇ~。
あと斉士達を演じるリー・トングォ(李冬果)は「(98版)水滸伝」の阮小七。似たような山賊役なのにこっちは大変かわいそうな目に遭う。でもなんかドリフのいかりや長介みたいなプロフェッショナルシップを感じさせるんだなぁ。

せっかく「隋唐演義」がドラマで人気を呼んでるので、この作品もスピンオフな感じで日本語版でやってほしいなぁと思った。そりゃまぁイケメンは一人しか出てこないから華やかさに欠けるかもだけど、楽しいし物語的には絶対女子ウケする。
中国語ちょっとでもわかる方は是非。


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主な登場人物
(カッコ内はドラマでの主な呼び名。)

李元霸(四公子)
太原侯・李淵の四男。発達障害で心が幼く、無鉄砲で怪力。暴れ出したら止められないが、唯一幼馴染の美娘の言う事だけは素直に聞く。

肖美娘(美姐姐)
元霸を育てた乳母の娘。一緒に育った元霸を実の弟のように可愛がっている。傾国の美女。

李淵(太原侯)
隋朝の重臣であったが政敵の宇文化及に追い出され今は太原をおさめている。優秀な次男・世民に仕事をまかせっきり。趣味は小鳥の飼育。

李世民(二公子、老二)
李淵の次男。しっかり者。皇帝の別荘の建設を任されているがとても間に合いそうになく途方に暮れている。

福福&蛋蛋
元霸付きの小姓(遊び相手)。

宇文化及(相国)
皇帝の寵臣。実は皇帝を暗殺し国を乗っ取る計画を立てている。

宇文成都(天宝将軍)
宇文化及の息子。李淵を牽制するため太原へやってくるが、そこで美娘に一目惚れしてしまう。

楊広(皇上)
隋皇帝。いろんな事にやる気がなく日々だらだら過ごしている。後宮に美女がいないと嘆き宇文化及に美女を集めるよう命じる。

邵陽公主
楊広のいとこ。宇文成都が好きで結婚したいと逆プロポーズして追いかけまわす恋する乙女。

羅素梅(羅姑娘、羅妹妹)
宇文化及に父を殺され復讐を誓う娘。山賊に襲われたところを宇文成都に助けられ、親の仇と知らず恋に落ちてしまう。

斉士達(斉大侠、斉大哥)
山賊のボス。美娘に一目惚れし恋煩いに陥る。