「鬼が来た!」(2000年 原題「鬼子来了」 監督/チアン・ウェン 主演/チアン・ウェン、香川照之)
140分
鬼が来た! [DVD]/ジェネオン エンタテインメント

¥5,076
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――1945年、中国。海辺の小さな村・掛甲台は日本軍占領下にあり村人は駐屯する日本海軍に礼を尽くすことでそれなりに平穏な日々を送っていた。
ある夜、馬大三(マー・ターサン)の家の戸をノックする者がいる。マーが誰だと問うと「私だ」と返って来た。聞き覚えのない声に首をひねりながら戸を開けると突然銃を突きつけられた。その"私"を名乗る男はある二つのものを大みそかまで預かっていろと命じる。戸が閉まった音で目を開けるとそこには大きな二つの麻袋が。中には拘束され口をふさがれた男が入っていた!外から"私"の声が。大みそかまでにそいつらを尋問し報告書をまとめておけ、決して日本軍に見つかってはならない、失敗したら村中の人間を殺す、と。――
[ここからネタバレ-------
マーは事の次第を長老や村の男たちに話す。大みそかまではあと5日。話し合った結果なんとか5日間彼らを隠し通そうということになった。
麻袋の二人を尋問。麻袋に詰められていた男は片方は中国人で董漢臣(トン・ハンチェン)と名乗り通訳をやっていると、一緒に捕えられた日本人は花屋小三郎という名の料理人で、命だけは助けてほしいと懇願する。だが花屋という男は怒りの形相でわめきちらしている。(本当は花屋は軍人で今すぐ殺せとわめいているのだが、トンは助けてくれと叫んでいると通訳する。)
マーは地下室に二人を閉じ込めるが、彼らが大声で叫び出したり、花屋は柱に頭を打ち付けて自害しようとするため、仕方なく二人を布団で簀巻きにしてマーと魚児(ユィアル)の二人が食事と下の世話をしてやる。そうしてやっと5日が過ぎた。今夜"私"が二人を引き取りに来るだろう。最後の夕食にマーは借金をして小麦粉(※戦時中は高値であった)で作った餃子を用意してやる。トンは(中国では処刑の直前に豪華な食事が与えられることから)いよいよ殺されると涙を流し餃子をほおばる。
だがその夜どれだけ待っても"私"はやって来ず新年が明けた…。
また村で話し合いが行われ、このまま隠し通すことも困難、いっそ二人を殺してしまおうという結論に至る。誰が手を下すのか…騒動の原因になったと言われたマーがその役を負うことに。村の男二人が山に大きな穴を掘り、夜を待って麻袋につめた男を運んだ。(※生き埋めにして殺す算段。)あとは頼むと任されたマーはシャベルを手にとる…。だが彼に人殺しはできなかった。二人を麻袋のまま近くの長城(※万里の長城の一部)に運び込んでいた。そして人目を盗んで彼らに水や食糧を与えに行った。
だが二人が長城にいることが子供の口からばれそうになり、村人はマーを非難する。しかしマーに代わって手を下せる人間もいなかった…。長老はマーに町へ行って暗殺者を雇ってこいと命じる。マーは一太刀の元に首を刎ねるという剣の達人リウ老人を連れて来た。彼の手にかかれば苦しむこともなく幸せに死ねる、その証拠に落ちた首は皆三度瞬き笑みを浮かべていたというのだ。リウ老人はまず花屋の首を斬るが、首が落ちるどころかかすっただけで花屋は痛い痛いといって跳ねまわる。リウ老人は失敗を恥じて逃げ出してしまった。
本当の死の恐怖を味わった花屋は一転して命乞いを始める。自分は軍曹だから日本軍に返してもらえれば彼らの身の安全は保証し村に穀物を車二台分提供すると約束する。マーと村の男ら数人、そしてトンと花屋は日本陸軍の駐屯地へ。花屋は酒塚隊長に帰還を報告するが、敵の捕虜となり自害もせずおめおめと生きて戻ってきたのかと罵倒され仲間から殴る蹴るの暴行を受ける。
酒塚は花屋が掛甲台の農民に穀物を提供する約束を交わし念書まで取られていたことを知り、誇り高き日本人として約束を破るわけにはいかないとマーに車二台と言わず六台分を与えると告げる。マー達は大喜び。酒塚隊長率いる日本陸軍が先導しマー達は六台満杯の車を引いて村へ。
村では駐屯している日本海軍も招いて大宴会が開かれた。村人も軍人も皆一体となって楽しんでいるところで酒塚は突然花屋を呼び銃口を向ける。その場は一斉に静まり返る。花屋とトンを拘束した男、そいつらこそが売国奴だ。その男を出せと酒塚は突きつける。だが花屋もトンも知らない。ではマーが知っているはずだと言う。マーは丁度ユィアルの元へ行っていて宴会には来ていなかった。酒塚はマーが今売国奴に連絡しに行っているのだと言う。村人は酒塚の怒りを収めようと慣れ慣れしくふるまい、それが間違いなく隊長の怒りを爆発させるとわかる花屋は村人を切り捨てた。だがそれがきっかけとなり日本軍は村人を包囲、次々と殺し村には火が放たれた。
宴会場へ向かっていたマーとユィアルは炎上する村を見た。幸せは一転して悪夢へと変貌した…。
日本が降伏し戦争は終結を迎える。日本軍は捕虜として一か所に集められ拘留される。町にはアメリカ軍のジープと中国国民党軍が闊歩した。
町で煙草を売り歩くマー。ある日拘留されている日本軍人が煙草を買いに出て来た。偉そうに火を貸せと言ってくる日本人にマーは感情を押さえられず彼を殴り殺してしまう。さらに拘留所内まで追いかけ回し斧で次々と日本人を殺害する…。
数日後、広場にマーは引き出される。国民党の高(ガオ)少佐は戦争は終わったにも関わらず相手国への憎しみを引きずり命を奪ったとしてマーの処刑を言い渡す。そしてその手を下すのは被害を受けた日本軍であるべきだと言って日本軍捕虜に処刑を命じる。酒塚隊長は花屋を指名し日本刀を持たせる。
花屋はマーの首に刃を当てる。処刑の号令がかけられた。花屋は刀をふりかぶる。一刀の元にマーの首は体を離れ地面に転がった。その顔は三度瞬き柔らかな笑みを浮かべていた…。(終)------ここまで]
うーーーむ・・・後味は悪いけどすごい話。作りこまれてる。
予想に反してめっちゃシリアス劇。「人を殺す=鬼になる」心理を描いた物語。
日本軍占領下で、それなりに平穏な生活を保ってきた小さな辺境の村に突然転がり込んできた災厄。この窮地から逃れるためには誰かが死ななければならない、そして誰がその犠牲者を手にかける役を負うのか…前半は馬大三を中心に、後半はむしろ花屋小三郎の信念の揺らぎにスポットを当てて、その葛藤を描く。
物語は本当にシリアスに人間の心理葛藤を抉り出すものだけど、全般的に「さらば復讐の狼たちよ」にもあったような、どこかしらやんわりとした笑いが含まれている。真剣な場面なのに絵的に滑稽に感じてしまうシーンがちょこちょこ挟まれてて。これが良いか悪いかは微妙なところ。私個人的には、シリアスでしかも長尺な物語なので生真面目に演出されたら重すぎてつらいかも。でもこのテーマで滑稽なシーンが必要だったのかというと、どうだろうという気もする…。
チアン・ウェンが演じる馬大三は、ここではさすがにパーフェクト男前キャラではなく平凡な、いたって平凡な男。なので観客は彼の視点・心境で物語を追っていく。
もちろん平凡な主人公の存在あってこそだろうけど、花屋小三郎を演じる香川照之がものっすごい光ってた。序盤は妙ちくりんな日本語の台詞&早口でどうした香川照之!??ってくらい違和感感じたけど、中盤からの心の変遷、絶望的に心折られる場面、そして因縁のラストシーン…言葉では言い表せない手に汗握る表情お芝居!
キャストは日本人役は日本人が演ってるのだけど、セリフ回しになんだか違和感感じる部分が多い。日本人はこういう時そんな事言わないよなぁと思う場面がちらほらと。脚本は中国人が書いてるので無理もないが。戦時中の日本の天皇陛下万歳な雰囲気も、日本だともっとカルト的、妄信的な描き方されるのが当然だけど、中国人からはただの王様にしか見えてないようで、天皇陛下万歳っていうより皇帝陛下万歳って感じかな。
TSUTAYA DISCAS
2枚ずつしか借りられない。そしてひと月に4枚借りねば損…。
16勝10敗3引分け。