呉用は石碣(セッケツ)村の漁師、阮(ゲン)三兄弟に会いに行った。久しぶりの再会を喜び食事を囲むが、ゲン兄弟は近年税の取り立てが厳しくなったのと梁山水泊に集う山賊のせいで自由に漁ができなくなったと不満をくすぶらせていた。生辰鋼(誕生祝いの宝物。奸臣が民から搾取した不義の財)強奪に参加するよう説得に来た呉用はこれは好都合だとほくそ笑むのだった。
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「(・・・この兄弟は三人ともやる気がある。私は彼らをゆっくりと誘引しどうやってゲン氏三兄弟に不義の財である生辰鋼を奪取するよう心動かすか、試してみよう・・・。)
ちょっとちょっとこちらへ。
小生(わたくし)はこの幾年か晁保正の村の近くで書を教えているが、最近彼がある財宝を持って行くのを待っているという事を特別に聞いた。なので今日は特別に何人か(→あなた達の意)と相談するためにやってきたのだ。私たちが晁蓋より先に行って彼のその財宝を奪取しよう。」

「なんでそんな事をするんだ?」
「かの晁蓋は弱きを助け不正と戦い、義を重んじ財を軽んずる好漢だから、彼がする事は忠義の事だ。俺達兄弟の誰かがもし彼の素晴らしい行動をだめにしたら、どうして(天罰として)頭にできものができ脚底は膿に冒され全身が悪くならないことだろうか(、いや必ずそうなる)。俺達がどうしてそんな人(晁蓋の行動を邪魔する人)だろうか(、いや違う)。」
「彼がもし助け合う人を必要としてるなら、我々兄弟は皆死んでも行くつもりだ。」
「よかった。まさにこれほど三兄弟の心意気は堅く義侠心に篤いとは。
私はあなた達とと本当の話をしよう。晁保正はずっとゲン三兄弟の名声を聞き及んでいて、今日特別に小生(わたくし)をやって来させたのは、実際にとある仕事があってあなた達に手伝ってほしいということをあなた達三名に説明させるためなのだよ。」
ゲン三兄弟は顔を見合わせる。

「おっとっと、この呉用は今酔っ払ってつい酔話(酒の上での話、でまかせ)を口にしてしまった。ゲンの三兄よ、どうかくれぐれも私のこの酔話はもらさないでおくれ。そ、そうでないとこの呉用と晁天王は本当に大変なことになる。」
ゲン小七は小刀を呉用に差し出す。
「あんたがもし俺達兄弟を信じられないのなら、この刀を持っていっぺんに俺達兄弟を殺して三人の口を封じるがいい!俺たちは絶対に嫌がってやり返したりはしない(抵抗はしない)。殺さないのなら、俺達を怨むことはできないぜ。あんたが信じるなら信じられるし、信じなければどうしようもない(そちらが信用してくれなければこちらは成す術はない)。
俺達兄弟三人はみんな本当にちょっとした嘘をつく人間も許せないんだ(→冗談で言ったわけじゃないだろう、の意)、もしあの晁保正が本当に兄貴に手を煩わせてここに来させたんだったら、俺達兄弟三人には協力する気があるんだ。」
「俺達三人がもし彼を助けるために命を捨てられなければ、この残りの酒にかけて誓う、俺達三人は皆(天罰として)酷い事故に遭い、悪病に身を蝕まれ、非業の死を遂げると。」
「俺達兄弟の体の中のこの熱い血を、(あんたたち)目利きに売ってやるよ。」

「呉学究よ、あんたの話の晁天王の財宝というのは、俺が推測してみるところでは、ある話のことではないかと思う。この件は来年の事だろう。」
「その通り。」
「その財宝とは生辰鋼だな。」
「この生辰鋼の報せは、入雲龍の公孫道長があなた達にあらかじめ伝えておいたものだ。」
「学究、じゃあ俺達はいつ行くんだ?」

「だがこの財宝はもし取っても、自分たちの物にはできない、困窮した人々に贈らねばならない。」
「そのためでなければ、俺達兄弟は行かないさ。」
「その通りだ、俺達がそうしないわけがない。」
「死ぬ前にこんな義挙を行えれば、良い男として終わっても(死んでも)この人生無駄じゃない。(※)」
「学究は書を知る、どうして財を愛しようか。阮氏の男は漁を楽しむ、またのんびり揺られているなぁ。ただ不義の金珠が(通って)行くことが、群雄の義侠心を集わせるのだ。」
※昔の中国では人は死ぬと生まれ変わりまた次の人生を生きると信じられていた。好漢としてこの業を成せれば今回の人生は充分満足だという意味。
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ここはかなり原作に忠実な場面。阮(ゲン)兄弟の義侠心の強さと同時に晁蓋がいかに人々に慕われているかを印象付けるシーン。兄弟の台詞がすごく古典らしい大仰さで個人的に好きなのです。ただこの兄弟の喋りは速くてまったく聞き取れない…orz
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