地方の県の小役人・宋江の元に、宮仕えをしているという道士(占術・祈祷師)公孫勝がやってくる。彼は宋江にある物語を聞かせる。
・・・その昔、洪信という名の大尉が皇帝の命で著名な仙人に平安を願う祈祷を依頼に行った。その帰り道、彼は興味本位で古い寺院の封印を解き放ってしまい、そこから108の魔星が世界に散って行った・・・。
* * * * *

「永き封印が一旦開かれ、天罡地煞(テンコウチサツ)が飛び出した。これまで平穏だった世に混乱が生じ、災いを抑えるつもりが災いを呼ぶこととなった。
宋押司どの、かの伏魔殿から逃げ出した36の天コウ星と72の地サツ星、あなたはまさしくその中の一つなのです。」

「一に天コウ星がまさに世に現れる時に合致し、二に宋朝は忠義と良心を必要とし、三に折りよく洪信に会った。もしそうでなければこれは運命ではないですか?(もしそうであればこれは運命だ)」
「この宋江が天コウ地サツの中の一つ、それで?(→話の先を促している)」
「宋押司どのは36人の天コウ星と72人の地サツ星の長で、今一つの使命を負っている。あなたがそれをしようとしてもしようとしなくても、これは運命なのです。」
「どんな使命が?」

「貧道(わたくし)はずっと宋押司の名声をお聞きしておりました。今私は十万貫の財宝を持っており、押司どのにお会いさせていただいたお礼にお贈りしたい。押司どのは収めていただけますかな。」
十万貫はものすごい量なので、そんな財宝を持ってるわけがないと笑う宋江。
「先生のおっしゃるその十万貫の財宝とは、どこにあるのですか?」
「今の朝廷の太師の蔡京、彼の誕生日には各地の官吏が皆珍しいお宝を用意して彼に献上しなければならない、それを生辰綱と呼んでます。北京大名府の府尹の梁中書は蔡京の娘婿なのですが、民から十万贯を搾取し生辰綱として蔡京に献上するのです。ここ済州を通る、この財宝は逃せません。昔の人は言った(昔から言うでしょう)、取るべきを取らざれば後に悔やむことなかれと。」
「どうやって取ると?」
「奪い取る。」

「先生、この宋江は本当にその天コウ地サツの星の主だと?」
「もちろん本当ですとも。押司どのが(生辰綱を)取っても何ら問題はない。(※)」
「押司どの、貧道と酒でもいかがですか。」
「いいでしょう。(→別にかまわないけど、の意)」
公孫勝が袖を一振りすると酒がなみなみと注がれた杯が現れる。
「押司どのが先にお飲みください。」
「先生の(術による)酒は美味しいですね。」
酒を飲みかわすが、公孫勝はやおら立ち上がり誰もいない方向に向かって話しかける。
「汝らも酒を飲まんとするのか?下がれ!この妖怪ども、早く去らぬか!」
公孫勝は剣を振り回し木の枝を一閃すると、枝の断面から血のような赤い液体がぽたぽたしたたり落ちた。
「とても蒸し暑い日だな、やはり金札を点し風を呼ぶのがよかろう。」
公孫勝が懐から金札を取り出し宙に投げ、掛け声と共に指をさすと、金札は燃え上がった。
「押司どの、茶を出すほどの時間もなくすぐに風がやって来ますよ。」
宋江はおもむろに、公孫勝の剣を手にする。
※宋江は「天星の生まれ変わりが強盗なんて悪いことをすべきではないですよね」というニュアンスで言ってるのだが、公孫勝は「悪者からの強奪は世の正義なのだから天星の生まれ変わりなら当然実行すべきだ」と言っている。

「先生、この銅剣は松紋古剣でしょう。」
「その通りですが。」
「先生は声高に、洪大尉が誤って魔星を逃がしたなどという物語を語ったが、世間の道士がやるようないんちきで騙そうとしているだけだ。普通の人を騙せても、この宋江を騙すことはできない。
わたしがもし懐に酒袋を仕込んでおけば(何もない)宙から酒を出すことができよう、手指に少し黄リンをつけたものを仕込んでおけば宙から火を起こせよう、この剣に石薬を塗っておけば肉眼では見えない小鬼を断ち切って血を出す(出したように見せる)こともできよう、わたしがもしいくらか天文学や地質学が解り、月のかさで風を、礎の湿りで雨を知ることができれば、風を呼び雨を呼ぶ(呼んだように見せる)こともできよう。」

「押司どのはやはり凄い。わたくしの技を見破られましたな。」
「どこに天コウ地サツがあると言うのだ(、そんなものは存在しない)。」
「貧道は実際のところ押司どののような英雄にこのような事(道術で己の話を信じ込ませようとした事)をすべきではないのです。しかしこれは押司に不義の財である生辰綱を奪取してもらうためなのです。」
「貴公は天子(皇帝)に仕える道士であるのだから、君主に忠義を尽くすのが道理であろう、私は貴公の話を長く(もう充分に)聞いた、もううんざりだ。」
宋江は立ち去ろうとする。

「宋押司、貴方は(この話を)どう思うのだ?」
「…先生、後ろに人が!」
後ろを振り返った公孫勝に宋江は剣で切り付けるが、かわされてしまい逆に剣を奪われその切っ先を喉元に突きつけられる。
「押司は剣は使えないし拳もまた同じくだ。貴方は私には勝てない。」
「どうして拳法の強さで英雄の高低を論じることができようか。(拳の強さだけで勝敗が決まるわけではない。)」
「私がこの剣を押し出せば、貴方の心臓を一刺しにし冷たくすることができるのだ。貴方にはまだ何か話すべきことがあるのか?」
「私一人でどうやってその十万貫の生辰綱を取ることができるのか、先生には私と一緒に衙門に来てもらってさらに詳しい話をしていただきたい。」
「貴方はこのわたしを法で裁かせようというのか。」
公孫勝は逃げ出す。宋江は後を追いかけ黍畑で姿を見失うが、突如背後から現れた公孫勝に再び剣を突きつけられる。

「あなたはやはりこの宋江を殺し口を封じた方がいい。そうでなければ、私が生きていれば貴公が生辰綱を強奪することを通報することができるからな。」
「この公孫勝はそんな金が目的の強盗ではない。世に不平を抱き、義侠心ある者を訪ね、あの不義の財を奪い取り、人々に配るのだ。今回宋押司に出会ったのは、まさに及時雨に遇ったのと同じ。私がもし本当に貴方を殺したら、この世の中から及時雨(のようにありがたい、素晴らしい人物)が減ってしまう。」
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本来は生辰綱強奪事件後にしか出てこない主人公の宋江を無理矢理第一回に登場させるために作られたオリジナルエピソード。公孫勝の台詞の一部は原作で晁蓋に話している内容だが、まぁでもほぼオリジナルといっていいでしょう。
このドラマでファンタジーは一切無しだと最初に視聴者に印象付けるシーンでもある。
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