第6回 わたしの愛するベーシスト「アンソニー・ジャクソン」 | ブラックミュージック系ロックバンド「Someone」のブログ

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テレキャス×335×スラップベース。ブラックなフィーリングで世界を変えます。札幌。

どうもベースのジョイです。

今回はジャズ・フュージョン界では超有名ベーシストであるアンソニー・ジャクソンの新3大「よくわからないけど憎めないプレイ」を紹介します。
アンソニー・ジャクソンといえば今でも「ファースト・コール」(ライブ・レコーディングの際にまず一番に声がかかるプレイヤーのこと)と呼ばれ、幅広いジャンルで安定したプレイをするベーシストとして有名です。


そのプレイはリズムに対してどこまでもストイック。
音価・粒の揃い方が絶対的でまさに他のプレイヤーを引き立たせるプレイ。
また彼はベース界で初めて多弦ベースを導入したことでも知られています。
コントラバス・ギターというアホみたいにでかい6弦ベースで多様な演奏をこなしています。
ピックでも指でも芯のあるゴリゴリとした音、ブリッジミュートを使った低音の出過ぎない柔らかいデッドな音、フェイザーをかけたピック弾きやボリュームペダルを使ったボリューム奏法など曲の雰囲気に使い分けるまさに一流プレイヤーです。

しかし、そんな職人ベーシスト、アンソニー・ジャクソンさん。
こだわり抜いた音やプレイとは裏腹に「よくわからないプレイ」をすることでも有名です 。
今回はそんな「よくわからないけど憎めないプレイ」を3つご紹介します。  

ミシェル・ペトルチアーニのライブからジャズスタンダードのTake the A Train。
アヴァンギャルドでゴリ押しなペトルチアーニのソロ後、3:11からがベースソロ。



ん?
(あんまりかっこよくないぞ・・・・・・)
という声が今にも聞こえてきそうなソロですね。
見守るペトルチアーニのだるそうな表情にも注目ですね。
元々よくわからないソロを弾くアンソニーですがこのライブにおけるソロは圧巻!
アウトフレーズを駆使しまくった超技巧派ソロなのです。
ソロ終わりもよくわからないので(しっかり尺通りには終わってますが)拍手も1テンポ遅れて入ります!さすが!
スティーブ・ガッドの「あ? 終わったの?」みたいな後姿が実にクールですね。



こちらはナベサダの80年代のライブから。
5:40からが若かりしアンソニーのソロ。
ここでのアンソニーのソロはびっくりするぐらいわかりやすくてかっこいいのです。
フレーズのつながりも自然でどことなくファンキーなボイシングもかっこいい。
曲のテーマをもじったコードプレイも珍しく盛り上がります。
蝶ネクタイも似合っていてキュートです。
ナベサダもアンソニーのソロで笑ってるのか顔芸で笑ってるのか判別できません。


最後は矢野顕子のライブからアンソニーがフィーチャーされているのを。
今までの意味分からないプレイを一掃するほどの素晴らしいコードプレイ!
元々クラシックギターの経験がある彼だけあって流麗で美しいコードソロ。
じゃあギター弾けばいいじゃん という声は絶対にタブーです。
しかし

キュッキュッうるせえ!!!!!!!!!

しかも出だしのピアノとの呼吸が試される繊細なところでキュッキュッうるさいのです。
実は1ライブごとに弦を替えるアンソニー。
「弦の寿命は2時間」とも語るアンソニーは長丁場のレコーディングでは途中で替えることもあるとか。
弦はフォデラの高級弦で音にこだわり抜くアンソニーの姿勢がうかがえます。
そのせいで弦のスクラッチノイズが半端ないのです。
「そんなに音にこだわるのならキュッキュッをどうにかしろよ!!!」
という言葉は残念ながらアンソニーには届かないのです。


近年は上原ひろみトリオで活躍し日本での人気も再燃しているアンソニー。
上原トリオではサイモン・フィリップスの音がデカすぎてベースがあんまり聞こえませんがいいプレイしてますよ。
ローBの使い方も絶妙で落としどころを心得ていて非常に気持ちいい。
意味の分からないプレイでみんなをハラハラさせる彼のプレイはじわじわと染み込んできますので辛抱強く聞き続けてください。