キュッパのはくぶつかん (福音館の単行本)

 

子どもにはどんな物も宝物です。うちの子も「めずらしい色の石」やら「おもしろい形に虫食いされた葉」などを今だに拾っては、絶対に捨てないで、と空き箱に溜め込んでいます。

丸太の男の子だというキュッパも同じように素敵な物を見つけると拾わずにはいられません。そして、家中が宝物に埋め尽くされ、しまうところがなくなったキュッパは町に住むおばあちゃんに助けを求めます。

するとおばあちゃんはこたえました。

「おやおや、そうかい。まえにいしのはくぶつかんにいったのをおぼえているかい?おまえはずいぶんよろこんでいたよね」

「ああ、あそこね」

キュッパはちゃんとおぼえていました。

「たくさんのいしがわかりやすくてんじしてあって、すっごくきれいだった」

するとおばあちゃんがいいました」

「そんなにものがたくさんあるのなら おまえもはくぶつかんをつくってみたらどうだい?」

「わあ、おもしろそう!」

『キュッパのはくぶつかん』の愉快なところは博物館を本当に作ってしまうだけではく、数日後にはすっかり飽きてしまったキュッパは、さっさと閉館させて、今度は図録を作るところです。

物を仕舞うところがない、という現実的な問題に夢をもって解決していく様子はなんとも気持ちよく、楽しい気持ちにしてしてくれます。

 

最後に、キュッパが宝物を森にの物は森に戻し、まだ使えるものはリサイクルに出すなど、少し前には説教じみて聞こえそうな内容も、さらっと描かれ、今の子どもたちには当たり前のこととして受けいられているのも新しい時代なのだなあ、と感じます。

 

小学校などの読み聞かせでは、展覧会や美術展の前後に読むと喜ばれます。

なにをたべたかわかる?

えっ、とその展開に度肝を抜かれる絵本です。

読み聞かせの時間がちょっと余った時や、子どもにあと一冊、とせがまれて読むのに最適な愉快で短くて何度読んでもわらっちゃう絵本です。

釣った魚を背中に背負って歩いているネコ。ネコの知らないうちに、魚はぺろり、ぺろりと……。

しらーっとした雰囲気のクラスでも、子どもたちはいつのまにか夢中になるので、つかみの一冊にするのも効果的です。

 

まだ文字が読めない幼児から高学年まで、気がついたら長新太ワールドにどっぷりです。

宝島 (福音館古典童話シリーズ)

 

冒険物語の古典『宝島』は小学生の内に読んでおきたい一冊です。イギリスで初めて出版されたのは1883年とずいぶん古いお話のようですが、スリル満点で豪快な物語に今の子どもも引き込まれます。

宝の地図を手に入れた少年ジムは、仲間たちと一緒に大航海へと旅に出ます。

水夫として働きながら成長していくジムは、同じ船員であるジョン・シルバーという男と親しくなります。父親を亡くしているジムは、ジョン・シルバーをまるで父親や兄のように慕うようになります。また、ジョン・シルバーが自分を子ども扱いせずに一人前として相手にしてくれるのも嬉しく思います。

そんなジョン・シルバーが海賊だったと知ったときのジムの葛藤は、読み手をも動揺させます。

それはシルバーの声だった。話の内容をほんのすこしきいただけで、わたしは、ぜったいに姿を見せるわけにはいかなくなった。それで、極度の恐怖心と好奇心のいりまじった気持で、ぶるぶるぷるえながらも、耳をすまして。そのままじっとうずくまっていた。

福音館書店の坂井晴彦訳は、翻訳ならではの文体でを残しつつ話しの流れによどみがなく、冒険物ならではのスピード感があります。また寺島龍一の細かい挿絵が、その状況を想像する手助けをしてくれます。

 

この『宝島』はアニメになっているので、本とアニメ両方で楽しむことが出来ます。

アニメは音楽が素晴らしく、出崎監督ならではの臨場感溢れる映像は大人も楽しむことが出来ます。

 

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宝島

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源平の風 (白狐魔記 1)

 

斉藤洋の歴史物シリーズの最高傑作がこの白狐魔記(しらこまき)です。時代はタイトルが示す通り源平の戦いの真っただ中。人間の世界を一匹の狐の目線で巡る超大作です。

人に化ける術を身につけた若いきつねは頼朝に追われる源義経と行動を共にすることになります。武士達の争いをきつねなりに理解しようとし、悩み考えるところは読み手である子どもの気持ちを代弁し、子どもは安心してその世界に入っていけます。

そして、このシリーズの何よりもすばらしい点は、武士の無情さや家来の切ないほどの忠義心を、美しい歴史物語として終わらせるのではなく、きつねの心を悩まし、やはり人が人を殺し合うことは間違っていると、きっぱりと結論付けているところです。

 

物語のクライマックスでは、きつねと仲良くなった武士の忠信が自ら義経の身代わりとなり、頼朝の勢を食い止め死ぬ場面があります。歴史を知らない子どももぐっと胸が熱くなります。そして、大将を守るため、命まで犠牲にする忠信の忠義心に一種の憧れを抱くかもしれません。

そして、そこで話しを終わらせないのが斉藤洋です。

きつねは、武士忠信の行動を完全に理解が出来ないまでの、本人が大事だと思っていることのために死んだのだ、と納得します。でも、やはりきつねは思うのです。

どんな者でも、家来を何百人も死なせてはならないのだ。それだけではない。弁慶にむりやりつれていかれたとはいえ、やはり義経は忠信をおいていったのだ。義経は自分のために忠信を死なせたのだ。戦は敵も死ぬが、味方も死ぬ。いろいろ理屈はあるだろうが、それはよいことではない。戦いに勝つよりも、戦いをうまくさけるのが大将のつとめではないだろうか。

日本の歴史をなぞりつつ、人間の愚かさや魅力を感じることが出来る歴史物の入門として読むといいでしょう。歴史の学習を進める上でも何度も読むことで歴史の流れや人物を理解するためにも家庭の本だなに揃えたいシリーズです。

 

 

 

クリス・ヴァン・オールズバーグ作の名作魔法のホウキ」は、ハロウィンの読み聞かせにぴったりです。村上春樹の翻訳だけあって、大勢相手の読み聞かせには難易度が高めになりますが、謎めいた世界観とスリル感あふれる展開にこども達はうまく引き込まれていきます。学校やグループ相手での読み聞かせでは3年生以上が望ましいでしょう。

 

原文のタイトルはwidow's bloom (未亡人のホウキ)とあり、主人公は魔女ではなく、魔女を助けてホウキの新たな持ち主となる未亡人(そして魔法のほうき自身)です。魔女はほんの数ページしか出てきません。

一人で暮らす未亡人(村上春樹は「ごけさん」と翻訳しています)はやさしい心の持ち主。ひょんなことから、魔法使いを助け、その恩返しなのかはわかりませんが、魔法のホウキを手に入れることになります。この魔法のホウキ、それまでは空を飛ぶ魔法のホウキだったのですが、飛ぶ力を失っています。相方を無くした「ごけさん」と飛ぶ魔法を失ったホウキとの共同生活は喜びに溢れています。しかし、その噂を聞きつけた近所の人々は嫉妬と疑いの心から、なんとホウキに火をつけてしましますが……。

ちゃんとハッピーエンドなところも、安心して読める素敵な一冊です。

 

「ごけさん」という語彙は、こどもによっては馴染みのないものかもしれません。読みながら、「結婚した相手が死んでしまって、一人になった人のことて、この場合は夫をなくした女の人のこと」などと説明するとスムーズに話しを進めやすいでしょう。