映画監督のマイク・ニコルズ氏だ。
2014年11月19日、心不全で逝去。
83歳だった…奇しくも高倉健さんと同齢。
個人的にマイク・ニコルズ監督作品で好きなのは「ワーキング・ガール」なのだが、やはり代表作は「卒業」だろう。
この作品でアカデミー監督賞を受賞した。
実は今年の夏、自宅の洗濯機の周囲から、何故か?映画「卒業」のパンフレットが出て来た。(笑)

そんなことがあった翌9月にテレビで「卒業」が放送されたので、録画だけして観ていなかった。
せっかくなのでこのタイミングで観るしか無いだろうということで鑑賞。
1970年代までは「名作」の5本指に入れられるほどの高評価だった。
そして、大はまりしていたサイモン&ガーファンクルの音楽が全編に渡りフィーチャーされているということもあり、リバイバル上映で観た。
当時はまだ中学か高校の頃だったので、正直今ひとつピンと来ない部分が多かったが、それでもS&Gの音楽とラストの強奪~共逃のシーンが印象に残っていた。
久しぶり(何十年ぶり?)に観た感想は…。
まずは、やはりラスト・シーン。
花嫁のエレン(キャサリン・ロス)を挙式中に強奪したベンジャミン(ダスティン・ホフマン)がバスに乗り込んだところ。
それまで2人は、してやったりの笑顔なのだが、その笑顔が徐々に真顔になり何ともいえない顔付きになっていく…。
このシーンに関して、この2人の表情に関して、観る人によって色々と捉え方もあるので、映画好きの間では議論の題材となる、やはり名作ということなのでしょう。
大多数の意見は、この先の2人の歩む人生が安易では無いということの暗示ということになっている。
原作を読んでいないのでどう描かれているか知らないが、あの表情は台本にあったのか?2人の演技の賜物なのか?それとも故マイク・ニコルズ監督の指示なのか?
その辺り、真相を知りたいですね。
今になって観ると、これは今流行りの熟女ブームの予兆作品?と思えたりして。(苦笑)
日本ではこの作品は、ダスティン・ホフマン主演の代表作の1つにされるが、映画を観るとメインのクレジットはロビンソン夫人役のアン・バンクロフトなのね。
大学卒業仕立てのベンジャミンを翻弄しながら落とすところはM気男子の方には魅かれるかも?(笑)
不倫相手の娘を好きなるなんて設定は、当時(1967年)はきっとセンセーショナルだったんだろうなぁ。
そして何より思ったのは、ロビンソン夫人、ベンジャミン、ロビンソン夫人の娘であるエレン、この3人が見せる何だろう“人間の業”と言うのかな?そんなものを描こうとしていたのでは?と思える。
前述のようにダスティン・ホフマン主演作という頭で見ていたので、最後にダスティン演ずるベンジャミンがどうしても諦め切れないエレンを奪うというところで「向こう見ずながら一途な愛」というラブストーリーのように捉えられているが、この3人とも実は“悪者”なのね、みんな。
(ベンジャミンがエレンを忘れられず追いかけるとこなんて、今じゃストーカー行為ですぐ裁判沙汰ですね。)
そういった意味では、人間の業を脱することで「卒業」となるのなら、なかなか凄いじゃない!
日本語で意味が成立しちゃう。
なんかこれをモチーフにした落語なんてありそう、いや実はそんな落語があってそれをヒントにこの原作は作られたんじゃない?などと思えちゃう。(笑)
そう言えば、この原作はチャールズ・ウェッブという方が書いたものですが、2007年、映画公開から40年後に、2人の40年後を描いた『卒業 Part2』が出版されていたんですね。
知らなかった。
マイク・ニコルズ氏は、この作品でサイモン&ガーファンクルの音楽を起用したことをきっかけに、この後の2作「キャッチ22」と「愛の狩人」では、アート・ガーファンクルを俳優としても起用した。
(どちらも観てないので観てみたい)
そのアート・ガーファンクルは来月単独来日公演が決まっている。
(観に行きたいなぁ)
改めて、マイク・ニコルズ監督のご逝去に心よりお悔やみ申し上げます。