岡村ちゃんとは、岡村靖幸。
かまってちゃんとは、神聖かまってちゃん。

ご存知の方ならわかると思うが、どちらも強烈なインパクトを有する。
ファンには失礼だが、一言で言えば「変」な人たちという印象だ。
この2組の対バンなんて、誰が考えた組み合わせなんだろ。
差し詰め、新旧「イッちゃってる対決」というところ。
会場は「新木場スタジオコースト」という大箱のライブハウス。
19時開演で、会場に入ったのが18:40くらいだが、もうかなりの人が入っている!
もちろんオールスタンディングでだ。
私は「変」なものには何気に興味を持ってしまうところもあるので、出演する両者とも一応知ってはいた。
が、特に思い入れがあるわけではなかったので、自ら率先して時間やお金を費やしてまでは見なかったろう。
そういう意味では、招待のお誘いだったのでいい機会ではあった。
だが、誘ってくれた方は、実は全くと言っていいほどどちらに対しても知識を持ってなかった…。
どうやら、ひょんな流れからこのライブに関わっている方が知人だったらしく、招待チケットを貰って、無駄にするのもその知人に失礼なので…という理由で、このライブへ行くことになり私が誘われたのだった。
まずは、神聖かまってちゃんからのスタート。
若い子たちならではの破壊的なパワーで、バンドブーム以降のビートとノイジーな演奏で、統率や予定調和というものが嫌いなタイプである。
ヴォーカルの「の子」は精神的にイッちゃってるようで、彼が喋りだすと止まらなくなり、メンバーたちが静止したり軌道修正をかけたりするほど。
世界観が独自だ。
内に籠もる人の、屈折した気持ちを表現し、そこから生まれる負のパワーが物凄いエネルギーと化していく、そんな感じ。
詞も、死ね!とか、殺してとかそんな言葉がポンポン出てくる。
でも、伴奏で流れるキーボードの旋律が意外と切なく、どこか聴かせる「何か」がある。
そして、場内の半分が仮に岡村靖幸ファンだったとしても、これだけ人を集客できるのはやはり「何か」がある証拠だ。
ライブの最後は、予定演奏曲を全部終了しても、ヴォーカル&ギターの「の子」が一人いつまでもギターを弾いて歌い続けようとする。
他のメンバーはもう諦めて、ステージを降りる。
しかし「の子」はまだ一人で続けようと居残る。
結局、スタッフがステージに出てきて、ギターを取り上げ、説き伏せて、ライブを終わらせた。(笑)
もう50近いおっさんの私には理解出来ないが、いつの時代もインナーへ向かう気持ちが爆発したタイプのクリエイターたちはいるので、「神聖かまってちゃん」は現在におけるその代表格なのだろう。
思えば、ピンク・フロイドのシド・バレットや、Xなんかも前の時代のそのタイプだった。
神聖かまってちゃん…いいんだか悪いだかはそれぞれの感覚によって大きく別れるが、とりあえず凄くはあった!
そして岡村靖幸。
こちらは世代的にもそれほど変わらないし、ファンク要素を持つポップソングなので、先のかまってちゃんよりは格段聴き易い。
プリンスの影響をデビュー時から強く受けているので、「変」と言ってもプリンスの変態性のような感じ。
それでもデビューした1980年代では、充分インパクトはあった。
デビュー曲「OUT OF BLUE」はカッコイイ曲だったし、本人もスリムで眼光の鋭い感じでかっこ良い印象だったのだが、その後は身体は全体的に膨張しだすし、なんかナルシストな感じが前面に出てきて、そう今で言うお笑いのノンスタイルの井上のようなキャラになっていった。
やがて才能がありながら、薬物所持で実刑を受けた。
そしてそれを何度も繰り返すようになってしまう…。
彼の「イケナイコトカイ」というバラード曲は好きだったなぁ、あの頃。
この日のライブでは、独特のあのクネクネ、カコカコしたダンスと言うかステージアクションは健在!(って言葉だけでは判んないですね…失礼!)
「どおなっちゃってんだよ」、「カルアミルク」、「スーパーガール」、「だいすき」など当時のレパートリーを披露。
大人になった分、時代が変わった分、昔のような「変」さは感じずに、ファンク&ポップな小気味良いステージだった。
神聖かまってちゃんと一緒だったこともあるだろうが、それにしても若い観客が多くて驚いた。
時代に左右されない音楽をやって来た人なんだと改めて気づかされた。
いつの時代も異才を放つミュージシャンはいる。
それが、いつまでも記憶や伝説として残れるかどうかで「本物」のアーティストかどうかが証明されるのだろう。