「現状の的確なとらえ方」について、外部環境がほとんど同じであるはずの「同業」の中にも好調の企業や、不調の企業があるのはなぜか、違いはどこから生まれるのか。不思議に思いませんでしたでしょうか?
企業は、外部環境の他に、「企業自身の環境」からも影響を受けます。具体的には、経営に必要な資源を保有しているか否かによって優劣がつきます。このような企業内部の環境を「内部環境」と呼びます。
経営資源として、「ヒト、モノ、カネ」が知られていますね。有形、無形を問いません。
具体的には、「ヒト」に関連するものとして、企業内部で必要な能力をもった人材の存在、熟練労働者の雇用、技術に関する知識やノウハウ、取引交渉の方法や能力、などがあります。
「モノ」に関連するものとして、機械設備の充実度合い、保有するブランド、営業権、などがあります。
「カネ」は文字通り資金力のことで、例えば新たな事業に投資できるだけの資本の存在を指します。
企業の強みや弱みを内部環境の点から分析する際には、経営学者のJ.バーニーが提唱
したVRIOフレームワークを理解しておきましょう。
VRIOは、内部環境を、価値(Value)、希少性(Rareness)、模倣可能性(Imitability)、組織(Organization)の頭文字をとった整理軸で、この視点から判断するものです。
価値(V)・・・「自社の保有する経営資源や能力によって、その企業が受ける機会や脅威に対応することが可能か」という視点から判断します。
希少性(R)・・・「自社の保有する経営資源には希少性があるか。競合企業はごく少数にとどまるか」という視点から判断します。
模倣困難性(I)・・・「自社の保有する経営資源は真似されにくいか。その経営資源を保有していない企業が新たに獲得あるいは開発しようとするとコスト上の不利に直面するか」という視点から判断します。
組織(O)・・・「自社の保有する価値があり、希少で、模倣コストの大きい経営資源を最大限に活用するための組織作りができているかどうか。具体的には、組織に蓄積された知識、組織成員の行動を律する規範や慣行のレベルは高いか」という観点から判断します。
ちなみに価値が高いと言われている企業の強みとして「見えにくい組織能力」は、他社からは模倣すべき対象がわからず、ここに模倣困難性や希少性が高いために、競争優位性が高まります。
内部要因分析の必要性は、自社に「強み」がある部分を明確にすることにより、経営戦略の核心を認識したり、逆に自社に「弱み」がある部分を認識することにより、勝ち目の薄い戦いに挑んで大きな損失を被ることを事前に避けることにあります。