「日本フィル管弦楽名曲集Ⅲ」というアルバムの最後に入っている、2003年1月12日に東京芸術劇場で行われた第129回サンデーコンサートのライブ録音です。
小林研一郎さんは、極めてレパートリーが少ない指揮者という印象があります。
「炎のコバケン」と呼ばれ、コンサートでは大変熱い音楽を聴かせてくれるので、このボレロは楽しみでした。
コンサートだけではなく、録音されたチャイコフスキー、ドヴォルザーク、ベルリオーズなどの交響曲は、どれも感動的な名演です。
チャイコフスキーの交響曲第5番の終楽章を聴くと、全パートをコントロールして表情付けしているのがよく分かり、聴き込む度に発見があります。
この点から見ると、ラベルによって緻密に計算されたボレロはパートバランスで表情を付けたりテンポを揺らす事で特長を出すのが難しい曲に思えます。
ボレロは、テンポを正確に維持してリズムを際立たせ、音量を確実に上げていけば、平均点的に感動させることが出来る設計になっているのです。
コバケンの演奏は、ソロが腕前を見せる前半より、オーケストラをコントロールする後半が面白いだろうと期待していたのですがその通りでした。
トロンボーンのソロが終わってからは、段階的に音量を上げていく様子がはっきり分かり、最後の爆発を予見させてくれます。
弦楽器のトゥッティが終わった辺りからは、会場にいたら心臓がバクバクするに違いありません。
事実、演奏後はブラボーの嵐でした。
ボレロという曲は、単純明快に、はっきりと聴こえるリズムセクションに乗りながらソロの妙技を披露してくれ、後半は音量の増加がはっきりとわかるようにして、これ以上の音量が出るのかというところからもう一段階レベルアップしてくれれば感動できるのだと思うのです。
ラベルの作曲の素晴らしさです。