CDでクラシックを聴いていると、もうちょっと潤いというか優しさが欲しいなぁと感じることがあります。
聴いていた曲のレコードを持っている場合は、これに切り替えると、その「もうちょっと」が埋められます。
CDはかなり音が良くなっているとは言え、時間軸上で見ると、音は段階的になっていて、連続した曲線とはなりません。
逆に振動を直接刻むレコードは、デジタルの様に段階的な音になれません。
デジタルもビット数が多くなり、より連続的な音に近くなっているはずです。
音の波形を比べるなら、人間の耳では、デジタルとアナログの差聴き分けられるはずはない様な気がします。
それでも違いを感じるのは、音の雰囲気という、感性に訴えかける部分があるからでしょう。
マスタリングの差も無視できません。
レコードの場合、超低域と超高域の音を1本の刻むので、振幅の大きな低音の振動に、高音の振動が影響を受けてしまいます。
そのため、低音のレベルは落として溝に刻み、再生するときに低音を持ち上げる処理が行われます。
CDはそんな事をする必要がないので、アナログの源音をそのままデジタル変換して記録するか、デジタルの良さを発揮できるようなマスタリングが施されます。
それぞれの処理がデジタルとアナログの音の傾向としてあらわれ、それが音の好みにも関わってきます。
もう一つ、聴くときの姿勢の違いもあります。
デジタル音源は、再生を始めたら、あとは聴くだけという手軽さが魅力ですが、その手軽さゆえに、音楽に対峙して聴くのではなく、何かをしながら聴くということになりがちです。
これに比べてレコードの場合、レコードを取り出して、盤面にホコリがあればそれを落とし、針先をきれいにしたり、場合に寄ってはカートリッジを交換し、ターンテーブルを回すスイッチを切り替え、トーンアームをゆっくり下ろすという作業が必要になります。
音楽の再生が始まっても、20数分で片面の再生が終わるので、盤をひっくり返すという作業が必要になるため、なかなか、ながら聴きをするのが難しく、結果的に音楽を聴くぞという姿勢になります。
こういう味付けも加わることで、いっそうアナログの方が音の雰囲気が良く感じられるのでしょう。