知っている限り、「ボレロ」のアルバムで、リバース再生の45回転盤は2種類あります。

 

1つは、前にCD盤でブログを書いたことのある、カルロ・リッツィ指揮ネーデルランド・フィルハーモニー管弦楽団のもので、もう一つは、カラヤン指揮ベルリン・フィルによるものです。

 

 

再弱音から始まり最強音で終わる「ボレロ」は、レコードの内周からスタートして外周で終わる、通常とは逆再生のリバース方式というのは理にかなっています。

 

単位時間当たりの溝が短い内周に最強音の情報がつめこまれると、どうしても歪みっぽい音になりがちです。

 

これを内側から再生する「リバース」という方法で解決しています。

 

内側に針を落とすと外側に向かってアームが動くわけですが、なんとも奇妙な光景です。

 

 

さらに、このカラヤン盤では、45回転という通常より早い回転数にすることで、音質を向上させています。

 

このアルバムは、かつて第一家庭電器が会員向けに配布していた「マニアを追い越せ大作戦」の中の1枚です。

 

この企画は、カートリッジの領布会で、買ったカートリッジを十分に楽しめるように特典として高音質レコードをおまけにつけていたという、なんとも贅沢なものでした。

 

既存の録音を使うだけではなく、たとえば岩城宏之指揮日本フィルの「ローマの松」のように、アルバムのためにコンサートを企画し、ライブで収録したものもありました。

 

録音方法も、対象によって、アナログとデジタルを使い分けたりと、そのこだわりは半端ではありません。

 

オーディオは金食い虫といわれることを否定できないような企画で、今では考えられません。

 

当然、そんな企画の会員になれるはずもなく、このアルバムは中古店でやっとみつけることができました。

 

実際に聴いてみると、楽器の分離と低音の深さが素晴らしいものでした。

 

CDやSACDのほうが音がいいかというと、そうとは言い切れません。

 

CDは20,000ヘルツ以上をカットしているから、アナログ・レコードのほうが音がいい、とかいうはなしではありません。

 

マスターテープの音は、想像をはるかに越える高音質だとわれます。

 

でも、そこは、テープなので、どうしても劣化してきます。

 

さらに、その時代で求められる音、という問題もあります。

 

たとえばラジカセやミニコンポなどの再生装置が主流の時代では、そこで再生されたときによい音が出るようなバランスになるようにミキシングするということもあって、ある時代の日本のポップスCDをオーディオ装置で再生すると、どうしようもなく情けない音になってしまう、ということもあります。

 

マスターテープにエンジニアが手を加えてリミックスしてCDやSACDになるので、その結果がベストとは言い切れないわけです。

 

「マニアを追い越せ大作戦」のシリーズは、マスターテープのクオリティをレコード再生で実現させるために、拘れるところは徹底的にこだわっています。

 

どうでもよいと思われる、レコードを入れるスリーブまでこだわっています。

 

細部へのこだわりが、全体のクオリティにあらわれるのは、どんな仕事でも同じですね。

 

ところで、このアルバム。

 

裏返すと、違うデザインになっています。

 

 

B面には、J.シュトラウスの喜歌劇「こうもり序曲」は入っていて、カラヤンのゴージャスな音が楽しめます。