「N響85周年記念シリーズ」というアルバムの中に、コンスタンティン・シルヴェストリが指揮した2枚組があったので聴いてみました。
コンスタンティン・シルヴェストリは、ルーマニアの指揮者で、残されたアルバムはどれもダイナミックな起伏に富み、個性的で好きな指揮者です。
自ら「演奏は毎回同じにはならない」と言っているので、たまに客演で招いたオーケストラからすると、非常に緊張感を伴う指揮者のはずです。
このシリーズのオーケストラはNHK交響楽団で、シルヴェストリとの組み合わせがどんな結果になったのかは興味津々でした。
チャイコフスキーの「交響曲第4番」やドヴォルザークの「新世界」と「スラブ舞曲」、そしてお得意のエネスコの「ルーマニア狂詩曲」とリムスキー・コルサコフの「スペイン奇想曲」などが入っていて、どれもハラハラドキドキの演奏なのですが、特に面白いのは「スペイン奇想曲」。
この曲の演奏が行われたのは、1964年3月21日。
「スペイン奇想曲」は、5つの部分からなる16分ほどの小品です。
この5曲目の「ファンダンゴ」で、シルヴェストリは思い切りテンポルバートし、タメを作ります。
この歌いまわしは独特で、この指揮棒にオーケストラ全員が付いていくのは至難の業です。
NHK交響楽団もこの部分では総崩れになり、まるで下手なアマチュアオーケストラのようにガタガタの演奏になっています。
この崩れたところから曲は盛り上がるような構成になっているので、この先も油断はできません。
楽団員が必死でシルヴェストリ指揮棒に食らいついていく様子は実にスリリングです。
シルヴェストリは、1959年にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を振ってこの曲の録音を残しています。
同じ個所に注目して聴いてみると、やはり思い切りテンポを崩しています。
この箇所に代表される様に、シルヴェストリの指揮ぶりは何が起こるのかわからないところがあって、素晴らしい技術を持ったオーケーストラではとても面白い結果になりますが、そうでないと、悲しい結果になってしまいます。
N響の場合、結果的にガタガタになってしまいましたが、全体的には今のN響からは(私には)感じられないにはないスリリングな面白さがありました。
指揮者がユニークだと、オーケストラも別物のように面白くなるんだと再認識しました。
これに懲りたのかどうかわかりませんが、この後、シルヴェストリがN響に呼ばれることはなかったようです。
演奏を仕事と考えると、会社でも突拍子もないことをやらかす上司はできれば避けたいと思うのは普通なので、理解はできます。
ただ、こういう指揮者を呼び続けていたら、N響はもっと個性的なオーケストラになっていたかもしれなと思うと、ちょっと残念です。
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