ラウロのワルツ・クリオロ(ベネズエラ風ワルツ第3番)は、学生時代から弾いていた好きな曲でした。初めて聞いたのは渡辺範彦さんの演奏だったと思います。手に入りやすい全音のギターピースに含まれていたのが幸いでした。

左手は難しそうに見え(実際のところ難しいのですが)、短いながらも全体が3つの部分に分かれていて変化があり、聞き栄えも見栄えもする小品だと思います。


ただ、発表会で取り上げるには物足りなく、これだけだと、登場してさらっと弾いて即退場ということになるし、簡単な曲ではないので上手く弾けない可能性が80%くらいの確率であり、そうなったら挽回するチャンスもありません。


この曲は途中で止まって弾きなおしをしたら、曲の良さが半減してしまいます。そんなわけで、敗者復活を考え、第4番を組み合わせて、演奏することにしました。


その頃。先生はほとんど弾いていなかったようですが、昔は良く演奏されたということでした。

楽譜は第1番から第4番のワルツが入っているB&P社の出版譜を使いました。

まず第3番ですが、これは正確に弾くことよりも、むしろアクセントを強調した、こう書くと誤解を招きそうですが、やや荒い、ただしノリの良い演奏を要求されました。イメージ的には、ギターを右足に乗せ、ちょっと軽いポップスのような気分で弾くような感じです。別にキタナイ音でいいというわけではないですが、音色の美しさはポイントになる音を除いてあまり要求されませんでした。

具体的にいくつか上げます。


・6、7小節目のシ→ラ→ソ→ファはしっかりと出す。14,15小節目
、18,19小節目、22,23小節目も同様に。
・27小節目のレと28小節目のドは、つながる感じで。
・39小節目のソは柔らかい音で。
・53小節目のソはテヌートしたピアニシモで。

これに対して第4番は、音の強弱や音色、音価のとり方など、細かい部分でのレッスンが行われました。


私は第4番からはフランスの香りを感じ、特にラベルのラ・ヴァルスと重なります。第3番ではベネズエラの香りを、第4番ではフランスの洒落た香りを出せれば面白いなと思い、先生に話したところ否定はされませんでした。

具体的なことをいくつか。


・最初のピアノは意識して。
・2小節目のドは急がないで。
・3小節目と4小節目の1拍目を除いて出し過ぎないように。
・10小節目のドはアクセントをつけて。
・21小節目のミ→ソはテヌート気味で。
・52小節目の最後のドは音を切り、次の小節のラははっきりと。
・61小節目のファはテヌート気味、ただし大きすぎないように。

レッスンののち、この2曲を発表会で演奏することができました。楽器はラミレスの664ミリでした。演奏に細かいキズはたくさんあったものの、止まることも無く、弾き終えることができました。本人はキズばかり思いだされ、失敗だと落ち込んでいたのですが、次の発表会のとき、同じ門下生がこの2曲を取り上げたことから、まずは合格点はとれていたのかな、とずっと後で思いました。


今考えると、その頃の私は緊張することが直接手に現われない、幸せな時期だったように思います。その後、楽器を広瀬ハウザーに変えた頃から、緊張の度合いが演奏結果に比例して無残に敗退する時期が長く続きました。

4番はこのとき覚えたので今はまったく暗譜で弾くことはできませんが、3番は学生時代から演奏していたので、数回楽譜を見ておさらいをすれば、すぐに暗譜で演奏できる状態になります。


こう考えると、若い頃、もっとたくさんバリバリ弾いておけば良かったなと悔やまれます。先生もそんなことを言っておられました。ある時期、若さに物を言わせてレパートリーを増やしておくことは、後の財産になるようです。

(記:2002年9月12日)


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