いつものように玄関のチャイムを鳴らしてドアを開けると魅力的な旋律の曲が聞こえてきました。


玄関を入り、レッスンに使っているリビングに入ると、先生はソファーに座ってギターを弾いていました。このソファーは先生のくつろぎの場所だったようで、よくそこで横になって休んでいました。先生が楽器を持たないときは、そこに腰掛け、手を頭の後ろに組んで、「じゃあ、弾いてみて」と言い、レッスンが始まります。緊張の瞬間です。

先生は、軽く目で迎えてくれ、演奏をそのまま続け、余韻を残して曲が終りました。

「いらっしゃい。どう?この曲」


「いいですね。なんていう曲ですか?」


「アルベニスのカプリチオ・カタラン、カタルーニャ奇想曲だよ。」


「響きがいい綺麗な曲ですね。楽器のよしあしがよくわかりそうですね」


「うん。やってみる?」

そのときは別の曲のレッスンの途中だったので、次回からレッスンを受けることになりました。楽譜はマイケル・ロリマーですが、例によってセゴビアの演奏からの耳コピーで、大幅な修正が加えられています。

この曲でも改めて認識したのですが、先生の演奏の魅力は低音弦の処理にあります。


たとえば最初のラとレの和音は、普通は6弦のレをP指で弾きますが、先生はレをi指で弾きます。そして2小節目は最初の小節と同じなのですが、ここでは6弦のレをP指でとるのです。この微妙なこだわりが音楽の表情を変えるのです。おそらく、先生は最初の音として、P指よりデリケートなi指を必要としたのだと思います。

5弦のラは、m→i→m、i→i→mで弾くくのですが、音のとりかたにこだわった個所は、右手の指使いは全て楽譜に書きこまれていました。このようにすることで、キラキラと輝くようなベースの中で、3小節目からはじまる歌をたっぷりとした音でとって、低音と対比をつけることができます。この出だしの6小節の音の処理がとても魅力的で、その後を期待させます。

全部は書ききれないので、楽譜の変更点をいくつか。


・3小節目の最初の拍の高音のファとレは2弦と3弦でとり、続くラとレは削除します。低音のラとレはPでとり、たっぷりと響かせます。
・65小節目から続くレシソの和音では、シを省略します。
・73小節目の最初の拍のラは省略し、高音は12フレットのハーモニクスとします。
・89小節目から104小節目まで削除します。
・111小節目の低音のラは6弦のレに変更します。
・最後の和音の1弦のレは削除し、1オクターブ低いレに変えます。

この曲は発表会のほか、高崎で行われたギター以外の音楽も含むアマチュアのコンサートでも演奏しました。もしひと晩のコンサートプログラムを組むことがあったら、必ず入れたい曲です。

(記:2002年9月19日)


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