この写真は、ミノックスのB型と呼ばれる超小型カメラです。
このカメラの最初のモデルは1936年にラトビアで誕生しました。
VEFという電気メーカーが製造したもので、後にミノックスが製造権を手に入れました。
脅威的な技術がそのボディーに押し込められています。
フィルムは特殊な専用のタイプで、約50枚撮影できます。
すぐに撮影できるように、ボディーを横に引くと、レンズが表れると同時に、シャッターがチャージされます。
一枚撮影して、ボディーをスライドして元に戻すと、この時にフィルムの巻き上げが行われます。
つまり、さっと左右にひくと、すぐにシャッターを切れるわけです。
この事を知らないで、引いたり閉じたりを繰り返していたら、1枚も取らないうちに、半分位のフィルムが巻き上げられてしまいました。
この小柄なボディーに、露出計、シャッター速度調整、距離合わせのすべての機能が入っています。
最近の液晶画面付きカメラや1眼レフカメラを使っている方は、液晶画面に見えているまま、または、ファインダーからのぞいたままの画角で撮影できるので気がつかないかもしれませんが、ファインダーとレンズが独立したカメラでは、そうはいきません。
近くのものを撮る場合、ファインダーから覗いている位置から少しずれた位置をレンズが向かっている事になるので、思った通りの構図で写らないのです。
これをパララックスといいます。
スパイといえば、敵の高官の部屋に忍び込んで、機密文書を撮影する、なんていうシーンが思い出されますが、現像してみたら文書が切れていた、では困るのです。
そのために、このカメラには、パララックス自動補正機能がついています。
距離ダイアルを動かしながらレンズを見ると、距離に合わせてレンズの位置が左右に移動させることがわかります。
さらに、このカメラには、60cmの鎖の様なものがついています。
ただの飾り用の鎖ではありません。
所々に丸い金属の目印があり、この鎖を使って、撮影したい文書からの距離を正確に測るのです。
なぜ、これだけのカメラがそれまでカメラの技術を持たなかったラトビアで誕生したのかはわかりません。
このカメラは、家内の亡くなった義父の形見としてもらったものです。
このカメラを手にして、カメラの道具としての奥深さを知りました。
今は一段落していますが、一時は私をクラシックカメラの泥沼の世界に引きずりこんだカメラです。
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