小さい頃、近くには原っぱや建材置き場がたくさんあって、そこで友達と『秘密基地』なるものをつくった。
何度も何度もつくり、そのたびに母親が誰かに謝っていた。
子供の背丈以上もある草が茂った一体は迷路をつくったその先に隠れ家のスペースを作り、
そこにお菓子やらジュースを持ち込んで喜んでいた。
草むらに薬のビンなんかが落ちているとそれだけで怪しさが増してきて秘密基地の雰囲気が盛り上がる。
秘密基地つくりは子供が大人になる過程で通るべきことのような気がする。

僕の子供たちにもそんな体験をさせたかった。
近所に格好の場所があれば、放って置いてもそんな遊びをしたかもしれない。
しかしここは23区のはずれとは言っても東京である。
そんな場所なんか見当たらない。

子供たちが適当に成長したら、いつか秘密基地を作らせようと考えていた。
1995年の夏。
「夏休みの自由研究、どーしよー」という子供たちの声を聞いて、僕は「よーし、秘密基地をつくろう!」と言った。
上の子が小学校四年、下の子が小学校二年のときのことである。

子供たちには「君たちの道具だから大切にしなさい」と言って、それぞれに鋸と金槌を買って渡した。

場所は浅間の小屋が建っている土地だ。
その森の中に3メートル四方くらいのテラスがあったので、その上に作らせることにした。
材料は本体の小屋を建てたときの余りを使わせた。

小屋のスケッチを書き、三角屋根にすることにした。
要所のガイドの線引きだけは僕がして、木材を切ること、釘を打つこと、ペンキを塗ることなどは子供たちにやらせた。

これは、そのときの記録です。