自分で建ててみよう

 小屋はできるだけ自分で建てる方針でいく。これがとても大切だと思う。
世の中がどんどん進歩し、高度に分業化が進み、自分の家はおろか、衣や食をつくることに全く関わらない人が増えてきた。生き物の中で自分の住む家を他者につくってもらうのは人間くらいだろう。住む家となると少し大変かもしれないが、せめて遊ぶための別荘くらいは自分で建てたいものだ。

 しかしこれに適さない人もいる。第一に根気のない人。小屋を建てるのは長期戦になるから、根気のない人やあきっぽい人は途中で挫折する可能性が高い。第二に、そしてこれは非常に大切なことなのだが、フットワークの悪い人。長距離の車での移動が苦にならず、よし、と思ったら直ぐに腰を浮かせることができることが必要だ。これは『自然工房』の恋沼氏も言っており、私も同感である。会社で電話やメールを駆使して仕事を進めることに慣れている人は要注意だ。自分は仕事ができると思っていても、こういう場面では役に立つとは限らない。この場合、実際に自分が動きまわって自分でやれることが重要なのである。器用さや経験はあまり重要ではない。技術は情熱の後についてくる。

 自分で建てることに自信がない方は、キットを利用する方法もある。これにロフトやトイレ、テラスなどを付け、少しずつ自分なりの小屋にしていくのである。最近は三坪から四坪くらいのキットがたくさん市販されているから、好みのものが見つかるだろう。50万円前後からあるようだ。それでも自信のない方は、腕に覚えのある友人に応援を頼もう。気のあった仲間とわいわい言いながら建てるのは楽しいだろう。お酒を飲んでいる時間のほうが長いかもしれないが、それもいい。建てる過程を全て楽しむつもりでとりかかろう。失敗や挫折も楽しむことができないと、途中で辛くなる。

 自分で建てる楽しみを知ってしまった人は、きっともう一棟建てたくなるだろう。それでもはじめに建てた小屋は少しも無駄にはならない。一棟目で失敗した経験は二棟目で活かせるし、大きな楽しみを知っただけでも素晴らしい。建てているうちに自分はこういうことに向かないのかなと思っても、それはそれで少ない損失で済む。