まず四坪の小屋からスタートしよう

 別荘に行って何をするのだろうか。テニス、ドライブ、スキー、ハイキング。木陰でゆっくりと読書もいいものだ。野外料理も別荘ならではの楽しみ方がある。何もしないでぼーっとしているのも贅沢な過ごし方だ。テラスに出てぼーっとしているだけでも気持ちがいい。こんなときは何かいいアイデアが浮かんだりする。 いずれにしても、昼間部屋の中に居る時間は意外に少ないものである。

 夜は暖かい色の明かりの下で、酒を飲みながら親しい人と話をする。薪ストーブが燃え、木に壁にランプの炎が揺れていれば、ずっと昔に忘れていた何かが思い出され、自然と話もはずんでくる。こんなときはお互いにあまり離れていないほうがいいものだ。寝る場所、調理する場所、そして食事をしながら語り合う場所があれば十分なのである。

 屋根を高くしてロフトをつくり、そこで寝てもいい。三分の二ほどふさげば三坪弱くらいの面積がとれるからゆったり4人が横になれる。小さな子供がいる家族なら5人くらいは大丈夫だ。全部ふさぐと息苦しくなるから、残りは吹き抜けにしておく。寝る場所さえ確保できれば、下はかなり自由に使える。部屋の半分くらいを腰掛けられるくらいに床を高くして、そこにカーペットや畳を敷く。椅子に座るよりゴロンと横になるほうが落ち着くという人は、格好のくつろぎ場所になるだろう。床を高くした分暖かいし、ちょっと手を加えれば床下にかなり広い収納スペースが得られる。寝具などは十分に収まってしまう。高くする部分は一畳単位に稼動式のボックスにすれば、時々レイアウトを変えて気分を変えることもできる。

 部屋が狭い分、トイレは考えてつけよう。外に別に建てるのもいいが、テラスの延長上にないと、夜が少し面倒だ。雨の日のことを考えると、傘をささずにいけるようにつくりたい。部屋の中から直接行けるようにする場合は、二重にドアをつける。

 調理台は出窓のように外に張り出して作れば部屋を広く使える。排水は本格的な浸透升を作ってもいいが、ポリタンクの水を使って洗い物をする程度なら、簡単なもので十分間に合う。30センチくらいの穴を掘るだけでも、自然がきちんときれいにしてくれるのだ。といってもこれは自分の土地で決められた場所に排水するときの話で、キャンプ場であちこちに穴を掘って排水を流すのはやめてほしい。

 小屋が小さい分、テラスは広くしよう。晴れた日に照らすにテーブルを出してとる食事はとても美味しい。きれいな空気と一緒に食べるから、なんでも美味しく食べられる。友人が訪ねてきたら、賑やかにバーベキュー・パーティーだ。

 考えて木を残せば木陰ができるから、その下で本でも読む。川で冷やした飲み物があれば極楽である。テラスの奥行きは最低でも1.5メートル以上はとったほうがいい。それ以下だと物を置くにはいいが、そこで何かをするのは難しい。板は電柱を製材したものがおすすめだが、最近は手に入りにくくなっているかもしれなし。タールが染み込んでいて腐りにくいし、何よりも安い。これで作れば、基礎も含めて坪一万円くらいでできる。五坪の広さでいろいろ凝って作っても十万円はかからない。

 どうだろう。狭く感じるだろうか。「でも四坪じゃあ」と思った人は、西丸震哉氏の著書『山小屋を造ろうヨ(中央公論社)』を読まれるといい。四坪の空間の贅沢さがよくわかるだろう。それでも狭いと感じた人は、もう一度別荘に何を求めているか考えてみるべきだろう。その答えがどうしても広さが必要とするもので、どうしても実現したいという気持ちが強いなら、思い切って借金するのもいい。私も広い空間で近所に気兼ねしないで大音量で音楽に浸りたいと思う。

 もし求めていることがこの広さでできるのに、やっぱり抵抗があるなと感じる人は、別荘を持つのはやめたほうがいい。仮に大きな立派な別荘を建てたとしても、そのうち使わなくなるだろう。ただのステータス・シンボルとしてしか考えていないのである。そんなことを遊びの場に持ち込むのはやめよう。ある雑誌にわずか1.5坪ながら、とてもかわいらしいデザインの丸太小屋が載っていた。大きな三角屋根にちょこんと明り取りの窓がついていて、手作りのドアの前に若い夫婦が立っていた。記事を読むと、相当な思い入れが伝わってきた。大きなどっしりとした別荘もいい。しかし、小さくても通りかかった人が思わずノックしたくなるような小屋も負けてはいない。