立ち飲み屋で一人で飲んでいると、やることもないので、カウンターに置いた百円玉の残りと見慣れたメニューを何度も見比べるか、まわりの酔っぱらいを観察するかしかありません。


数人で飲んでいる人と、一人で飲んでいる人の違いって、あるんです。

知ってました?


数人で飲んでいる人は、仲間がいるから、心おきなく酔っぱらっています。

一人で飲んでいる人は、介抱してくれる人はいないから、正気を保とうと努力しながら飲むわけです。


でも努力したって、酔うものは酔う。

「おのれ」と「全身を駆け巡るアルコール」との闘いです。

勝てっこない無駄な戦いです。


で、どうなるかというと、

「わし、酔ってなんかいないもんね」

と言わんばかりに、ひとつひとつの動作が大きくなる。


直線的にジョッキに手をのばせばいいのに、やや外回りで手がジョッキにたどりつく。

カウンターの七味を、ぐいっと目の前に持ってきて、

「うん、確かにこれは七味であるぞ。一味ではないぞ。ソースでもないぞ」

と確認する。


そして、えいやっと、上下30cmくらいの移動距離で、七味を数回振る。

歌舞伎役者みたいに動作が大げさになるんですね。


真っ赤になった焼き鳥にも、あわてない、というか味覚が反応しません。


全身の緊張感がとれたバランスの良い姿勢もあやしくなり、体の軸を中心に、ゆらゆらと回転運動をはじめます。

それでも、

「わし、よってないもんね。そのしょうこに、しせいだって、しゃんとしているもんね」

ひらがなばかりの思考になり、伸ばした背筋とゆれのバランスをとるように、肩は後ろに、首は前に、という、「バランス保持型直立微動姿勢」になるのです。


・・・なんていう人間観察を終え、やー、今日も楽しかったと帰る自分の姿は、たぶん「綱渡り型大股歩き」です。


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