台風12号、なかなか日本列島から遠退いてくれないですね。

確か、当初の天気予報では、先週の水曜日あたりに本州に上陸するなんて話だったのですが、

もう1週間近く日本列島の付近をウロウロしてくれてますね。

和歌山県や三重県のほうでは、かなりの被害があったとのことで、ご冥福と一日も早い復興を願うばかりです。


さて、私はというと、先々週の週末から夏風邪をひいてしまい、熱と激しい咳と痰に悩まされ来院された皆様にはご迷惑をおかけいたしました。

おかげさまで体調は万全に戻ったのですが、気管の炎症だけはなかなか治らないらしく、咳だけは残っています。

よくケンネルコフで来院されたワンちゃんに対して、

「風邪は治っても咳だけはしばらく続くと思うけど、それは気管や喉の炎症が取れ切れていないだけだから、心配しなくていいですよ。」

なんて、説明をさせていただいておりますが、まさに今私がその状態になっております。


夏風邪は長引くなんてよく聞きますが、本当に夏風邪は長引きました。

皆様も体調には気を付けてくださいませ。


では、前回に引き続き、「心臓のお薬」についてのお話です。



・β遮断薬


このお薬は、心臓を支配している交感神経のβ1受容体を遮断して、交感神経の興奮を抑える作用があります。


心臓をコントロールする神経には交感神経と副交感神経があります。
交感神経が興奮すると心臓は心拍数が上がり、心臓の筋肉が収縮する力が強くなるために血圧が上がります。
逆に副交感神経が興奮すると、心拍数は下がり、心臓の筋肉の収縮力が弱まり血圧が下がります。


小型犬に多い「うっ血性心不全」では、心臓から全身に血液を送るポンプ機能が弱まります。

ポンプ機能が弱まると、体の隅々まで血液を送る能力が落ちるために、体の末端での血圧が下がったり、酸欠状態になってしまいます。
体の末端の血圧が下がったり、酸欠状態になると、体の防衛本能が交感神経を興奮させて、心拍数を上げたり、血圧を上げようと過剰な反応をしてしまいます。


この交感神経の過剰な反応が、弱った心臓に鞭を打つことになり、心臓の機能がさらに弱まってしまいます。

β遮断薬は交感神経の過剰な反応を抑えることによって、過剰な心拍数の上昇や過剰な血圧の上昇を抑制して、心臓の負担を軽減してくれます。



・強心配糖体


このお薬は、心臓の筋肉の細胞に働きかけて、心臓が収縮する力を高める作用があります。
また、交感神経の活動を低下させ、副交感神経の活動を高める作用があるので、心拍数を下げる作用があります。
その他にも、心臓が収縮するための神経伝達を遅らせる作用があるので、不整脈を改善する作用があります。


このお薬は、様々な作用がある半面、薬としての安全に使用できる量と、中毒を起こしてしまう量に大きな差がありません。
また、お薬を飲んでから体外に排泄されるまでの時間が、個体によって大きく差があります。
そのため、体外へ排泄するのにかかる時間が通常よりも長いワンちゃんに、長期間このお薬を与え続けると、体外へ排泄される前にさらにお薬が体内に追加されるため、体内にお薬が蓄積してしまい、中毒症状起こしてしまう危険があります。


中毒にならないために、このお薬を使用する際にはこまめな観察や検査が必要となりますので、注意が必要です。


中毒症状には、房室ブロックなどの不整脈や、低カリウム血症、食欲不振や軟便、嘔吐があります。



今回は、β遮断薬と強心配糖体について説明をさせていただきました。
どちらのお薬も、最近使用される獣医師が減りつつあるお薬ですが、症状によってはまだまだ現役で使用されているので、「心臓のお薬」として処方されているワンちゃんも多いかと思います。

特に、強心配糖体は使用する際に注意が必要となるお薬なので、処方されているワンちゃんは、かかりつけの先生と検査のタイミングや副作用についての説明をしっかりと聞いておくとよいと思います。


次回に続く




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