『さむいですね~。春になりませんね~。
いきなり暑くなりましたね~。』


なんてことを言っていたら、いつの間にか関東も梅雨入りをしたようです。
春らしい過ごしやすい季節はほとんどなかったような気がします。


梅雨はジメジメしていて、湿度が高くなるのでさまざまな病気の引き金になりやすい季節でもあります。

ジメジメしてた季節で真っ先に思いつくもの。

そう、カビです。
今日はカビについてお話をしていきます。

カビとは正式には真菌といわれるもので、食べ残して捨てるのを忘れたパンの上で繁殖したり
お風呂場の隅でひっそりと繁殖したり、お父さんの足の指で繁殖したりとあまり良いイメージがない

生物です。

しかしながら、カビにも私たちの生活になくてはならないものです。
たとえば、納豆を作るのに必要な納豆菌、パンを膨らませるときに必要なイースト菌、
お酒を発行する時に必要な麹菌などなど、

一口にカビといっても、嫌われ者から必要なカビまで本当にたくさんの種類のカビがいます。


本日はその嫌われ者の1つのカビについてお話します。


その嫌われ者のカビは犬糸状菌といいます。。
犬糸状菌とはワンちゃんに付くカビのことで、顕微鏡で拡大してみると糸状の菌糸を出す、

文字通り糸状の真菌です。
余談ですが、この犬糸状菌の親戚が、実は皆さんの身近にいるのです。
お父さんの指の間なんかにいることが多い、水虫です。
水虫は人間に感染する糸状菌の一種です。
また、爪に感染する白癬症の病原体も糸状菌です。


犬糸状菌に感染すると、皮膚症状が見られます。
最初は小さな脱毛とフケから始まるので、犬糸状菌が原因かどうかわからないことが多いです。
症状の進行もゆっくりとしていることが多いのですが、
カビにとって繁殖しやすい環境が整うと

急激に進行して、脱毛部位が円形に広がっていきます。

一般的に皮膚に痒みは細菌性皮膚炎と比較してあまりないことが多く、
「痒がってはいないけど、脱毛してしまったんです。」と来院されることが多いです。


犬糸状菌症などの真菌性皮膚炎の診断には、培養検査が用いられます。
培養検査とは、症状がある部分の毛やフケを採取して、寒天で作った培養地にそれらを植え付けて
そこから何が培養されるかチェックして、病原体を発見する検査です。

犬糸状菌症場合、専用の培養検査キットがあるので少量の毛があれば簡単に診断がつきます。


さて、この犬糸状菌症はいったん感染すると完治するのにそこそこ時間がかかります。
というのも、水虫を思い出していただければ納得いただけると思います。
真菌という生物はなかなかしぶとい生物で、完全に死滅させることは非常に難しく、
治療方針も完全な死滅を目的とせず、限りなく真菌の数がゼロに近づくことを目的とします。


では、実際にどんな治療がおこなわれるのかを書いていきます。


軽症の場合はシャンプー療法と消毒剤、抗真菌軟膏の塗布を行います。
抗真菌薬が配合された薬用シャンプーを用いて、週に1~2回ほど薬浴を実施します。
また、真菌にはヨードが効きますのでヨードの塗布と、抗真菌薬の軟膏を塗布を行います。


重症、難治性の場合は、シャンプー療法などに加えて抗真菌薬の飲み薬を内服します。
抗真菌薬は塗り薬で利用する場合は、副作用について心配することはほぼないのですが、
飲み薬として内服する場合は、肝臓に負担をかけてしまうことがあるので、定期的な血液検査が
必要になります。

また、カビの胞子が症状のない部分についてしまうことによって、別の場所から症状が出てしまう
こともあるので、必要に応じて全身の毛を刈ってしまうこともあります。


糸状菌症は円形に脱毛することが多く、中心部から治って発毛していくので、治療の途中では
ドーナツ状の脱毛になることが多いです。
このことから、リングワームという別名もあります。


犬糸状菌症は一般的には治療しやすい病気ですが、治療に少々時間がかかります。
ゆっくりと慌てずに確実に治療をしていくとよいですね。


しばらくはジメジメとした季節が続きますが、できるだけ換気をしたり、除湿をして

皮膚のトラブルに備えていただければと思います。



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