本日は午後より休診とさせていただき、とあるセミナーにお勉強をしに行ってまいりました。
明治製菓株式会社さん主催の
「実践 麻酔・疼痛管理セミナー」です。
明治製菓?ってお菓子じゃん。と思われるかもしれませんが、
私たち獣医師が使う動物薬の販売も行っているのです。
現在、人間の医療においても、ペインコントロール(痛みの制御)は重要視されています。
昔は、痛くても我慢して痛み止めは出来るだけ使わないという時代でした。
しかし、医療技術の発達や研究の結果、痛みやストレスを感じた時に体内で産生される
「カテコラミン」という物質が、傷の治りを遅くしたり、痛みの原因となっている病気以外の病気を
引き起こす事がわかってきました。
そのため、現在の医療では出来るだけ痛みによるストレスをかけないように、
積極的に痛み止めや麻酔を使うペインコントロールをするようになっています。
ペインコントロールは人間の医療に限らず、動物医療においても重要視されています。
痛みを感じる経路にはいくつかのプロセスがあります。
まず、刺激を受けた部分で、刺激が『痛みに変換』されます。
変換された痛みは感覚神経を伝って、『痛みの伝達』が行われます。
伝達された痛みは、脊髄において、『痛みの調節』が行われます。
脊髄で調節された痛みが、大脳皮質に届いて『痛みを認識』します。
と、このように痛みは『変換』⇒『伝達』⇒『調節』⇒『認識』の4つのプロセスを経て、
痛いと認識されるのです。
麻酔薬や痛み止めには様々な種類があり、
薬ごとにどのプロセスに作用して痛みをとるかが異なります。
単独の薬を用いて、単独のプロセスに作用して痛みをとる事も可能ですが、
痛みをとる為には高用量の薬を使わなければならなくなり、副作用が出る恐れがあります。
そのため、最近の麻酔やペインコントロールは、複数の薬を用いて、
様々なプロセスに作用する事によって、一つ一つの薬の使用量を減らして、
出来るだけ副作用が出ないようにする方法が主流になっています。
当院でも、もちろんペインコントロールには力を入れています。
特に、去勢や避妊手術など健康なワンちゃんやネコちゃんが受ける手術においては、
『手術を受けた為に健康な子が数日間痛くて元気がなくなる』ということが出来るだけない様に、
手術前から痛み止めを使用し手術中も局所麻酔薬や全身麻酔薬を組み合わせて、
手術後も元気に過ごせるように処置させていただいております。
もちろん、術後も全く無痛というわけには行きませんが、
手術した次の日から元気よくごはんを食べていますと、ありがたいお言葉をいただく事もあります。
そのほかにも、椎間板ヘルニアが原因でなんとなく元気がなかったワンちゃんが、
痛み止めの処方や理学療法を行う事によって、
若返ったかのように元気にお散歩にいけるようになったなんて例もあります。
本日のセミナーでは、様々な新しい麻酔薬や痛み止めの特徴や作用について講義と、
若齢や高齢、肥満、心疾患などのいわゆるハイリスクな動物に、安全に麻酔をかけるための
テクニックについての講義を受けてきました。
いままで、当院では使った事がない麻酔薬やその組み合わせなど、非常に有意義な講義を
受ける事が出来ました。
今回のセミナーで学んだ知識や技術を用いて、より安全なペインコントロールや麻酔管理を
当院に来院いただく患者さんに提供していきたい思います。
余談ですが、セミナーの資料と一緒にお土産をいただきました。
さすが、明治製菓・・・・。