だんだんと厳しい寒さが和らいできたような気がしますが、まだまだ寒いですね。
年が明けて一ヶ月ほど経ちました。
この一ヶ月で当院で多く見られている症例があります。
膀胱結石症です。
以前にもブログにて取り上げたことがあるかと思いますが、
季節柄なのか、膀胱結石症を患っているワンちゃんやネコちゃんが多いので再度記載します。
膀胱結石とは、腎臓で作られた尿の中に含まれるミネラルが結晶化して大きくなったものです。
最初のステップとしては、ミネラル成分が集まって結晶を作ります。
下の写真にあるクリスタルのようなものが結晶です。
このクリスタルがたくさんできると、だんだん集まって結晶から結石を形成します。
下の写真が結石です。
一口に結石といっても、様々な結石があります。
結石を構成する主成分には、ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)、
シュウ酸カルシウム、シスチン、尿酸塩などがあります。
その中で最も多いといわれているのが、ストルバイトとシュウ酸カルシウムです。
ストルバイト結石は、一般的には尿がアルカリ性になると形成しやすくなるといわれています。
通常、ワンちゃんやネコちゃんの尿は弱酸性になっているので、ストルバイト結石ができ難い環境になっています。
しかし、膀胱内に細菌が入り込んで膀胱炎になると、細菌が産生する毒素によって膀胱内の尿はアルカリ性になって、結石ができやすい環境になってしまうのです。
また、ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)の原料となるマグネシウムが食餌に多く含まれていても、結石症の原因となります。
シュウ酸カルシウム結石は食餌中のカルシウムやたんぱく質が過剰になると形成されやすくなるといわれています。
あくまでも私の個人的な主観ですが体質に依存することが多いような気がします。
犬種によって発症しやすい種類があり、ミニチュアシュナウザーやチワワがなりやすいといわれています。
ストルバイトやシュウ酸カルシウム結石は、尿検査やレントゲン検査、超音波検査によって診断が可能です。
特に初期の頃はレントゲン検査では診断が難しいので、尿検査や超音波検査が有効となります。
尿検査では下の写真のようにクリスタルを見つけることができます。
エコー検査では、尿検査でクリスタルが検出されなくても、1mmくらいの大きさの結石になっていれば検出することが可能です。
Bが膀胱壁の厚さです。
また、レントゲン検査ではある程度大きななった結石を検出することが可能です。
矢印が結石です。
治療方法は症状の段階によって異なります。
治療の目的は、結晶が結石に成長して、膀胱壁を傷つけたり、尿道に詰まって尿が出なくなることを防ぐことです。
それぞれの段階を下に記載します。
ちなみに、あくまでも当院の分類方法なので詳しくはかかりつけの動物病院でご相談ください。
・初期:尿検査にて結晶(クリスタル)が確認されるが超音波やレントゲン検査にて結石の形成が
確認できない。
・中期:超音波やレントゲン検査にて結石が確認できて、その大きさが1~2mm位まで。
・後期:結石の大きさが2mm以上
初期では食餌療法や抗生物質、尿酸化剤の内服で結晶を溶かすことが可能です。
中期では、体格や性別によって治療方法に選択肢があります。
膀胱から外へ出る尿道は一般的に小型犬や猫よりも大型犬の方が太いとされています。
また、性別では男の子よりも女の子の方が尿道が太く、また、長さも短いです。
特に男の子の尿道は、膀胱からペニスまでの道のりが大きく湾曲しているため、尿道に結石が詰まりやすいです。
体格や性別から判断をして、結石がまだ小さくて、尿道に詰まらないで尿と一緒に外に出てくれそう場合は、内科的治療を行いますが、結石が小さくても、尿道に詰まってしまう恐れがある場合は、手術によって膀胱から結石を摘出します。
もちろん、小さな結石でも膀胱壁を傷付けて膀胱炎を起こしてしまうような場合も、摘出手術を行います。
後期では、高齢の動物や内科的疾患で麻酔をかけるリスクが高い動物を除いて、結石の摘出手術をお勧めします。
どの段階でも共通して大切なのは、適切な食餌療法を行うことです。
ストルバイトやシュウ酸カルシウム結石は食餌中のリンやマグネシウム、カルシウム、たんぱく質が過剰なために形成されます。
それらのミネラルなどを制限した、療法食に切り替えることによって治療、予防することが可能です。
療法食による食餌療法は獣医師による処方が必要になりますので、かかりつけの動物病院からの指示の元、適切な量と与え方を守るようにしましょう。
膀胱結石は早期発見と早期治療が大切です。
当院で診断した結石症の多くは、全く尿の症状が出ていないにもかかわらず、健康診断の尿検査で結晶が検出された症例です。
特に寒い時期は飲水量が減るために尿量が減り、古い尿が膀胱の中にいつまでも残っているため、結石がおきやすい時期です。
定期的な尿検査の実施をお勧めいたします。