サマセット・モーム
『人間の絆』 より抜粋
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愛すべき小哲学が、かんじんミルドレッドに現を抜かしていた時には、
これといって、一向役に立たなかったではないか。
実人生の指針として、そう理性が役に立とうとは、どうも思えなかった。
彼の全心を領していた感情の狂暴さ、
そしてまた、まるで綱でもって、大地にでも縛りつけられたように、
抵抗するにもできない無力さ、
そうした経験を、彼は、まざまざと憶えていた。
賢い知恵は、いくらでも物の本で読んだ。
だが、結局判断の根拠となりうるものは、
自身直接の経験だけだった。
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読書は楽しみだ。
いろいろな経験をさせてくれる。
登場人物とともに、一緒に話したり、歩いたりする。
しかし、実際の現実においては、
登場人物と私の経験は違うので、
本で学んだことは役に立たない、という場合が多い、
というのが正直なところ。
ノウハウや知恵を授ける本は、もっとそう。
実際の私の現実には、役に立たない。
私を実際に助けれくれるのは、
私の経験しかない。
--- y.