手先が器用な上、職業柄か、カゴ編みに使う道具をつくるのもお手の物。
加えて、竹割りのナタやナイフは常に切れ味抜群。
扱いが乱暴で、錆びたり、歯の欠けた道具ばかりの私とは大違い。
自ずと出来上がりに大差がつくのは、当たり前の事である。
そのSさんは家庭菜園の腕前もかなりのものらしく、時々サークルのお仲間に自作のナスやピーマンを下さる。
たまたま隣りに座っている私には特に分け前が多い。
先日、銀杏をバケツいっぱいに持ってきてくださった。
銀杏など、お正月のお煮しめの飾りに少量使うだけで、他につかいみちが思い浮かばないのだが、私以外は全員男性なので、欲しがる方はいない。
折角のご好意なので要らないとは言えず、結局は全部引き受ける羽目になった。
とはいえ、大量の銀杏は果肉を腐らせてから中の種子を取り出して使う。
暫くは庭先に放置しておいたが、家人などは近くを通っただけで「臭い、臭い。」と連呼する。
仕方なく重い腰を上げ、銀杏剥きの仕事を始めた。
ビニール袋で手を覆い、一つずつ果肉をこそげ落とし水洗いしてから干す頃には日が陰り、北風が吹く夕暮れになってしまった。
二重のビニール袋で覆っていたにもかかわらず、手のひらにはなにやら膜のような物が付着して、いくら洗っても落ちない。
銀杏の脂肪らしい。
三日後の今朝、掌に付いた膜がだんだん剥け始めた。
家人は手が荒れて痛そうだと言うが、銀杏の膜なので、少しも痛くない。
ただし見映えがまことに悪い。
さて、この大量の銀杏をどうしよう。
行商にでも出るか?

