コミュニケーションはまず「聞くことから」と言われます。

でも「聞く」と言っても、ただ相手の話に耳を傾けているだけでは、会話は長続きしないものです。仮に、聞き役に徹するとしても、話が盛り上がるような、場が明るくなるような聞き方をしたいところです。

 

「聞き上手」さんの習慣』の著者の佐藤智子さんは、20年のキャリアで1万人をインタビューしてきたコミュニケーションの達人。人間関係を円滑にしてくれるようなヒントがあるのではないかと思い読んでみました。

 

苦手な人とのコミュニケーション

 

 

「コミュニケーション」とは、つきつめれば「尋ねる」ことと「答える」ことです。

そして、「尋ねる」という行為は、相手に興味がなければできません。苦手な相手、口もききたくない相手に、あえて質問することもないし、したくもない、というのがホンネでしょう。

 

 会話は相手に何かを尋ねることから始まります。お昼は何を食べたのか、休日は何をして過ごしているのか……。私が相手に尋ねたい質問は、相手への興味から生まれます。相手をもっと知りたい気持ちが質問になるのです。しかし、相手が苦手な人であれば興味などあるわけもなく、そこに良好なコミュニケーションは生まれません。

 

でも、現実には苦手な相手であってもコミュニケーションを取らなくてはいけない場面は多々あります。

どうしたら苦手な相手に興味を持つことができるのでしょうか。著者はその解決法として、相手の「人格」ではなく、相手が持つ「情報」に注目する方法を紹介しています。

 

何を話せばいい?人間関係が上手くいくコツ

相手の「人格」ではなく、相手が持つ「情報」に注目するとはどういうことでしょうか。

その例として、介護士のGさんの話が紹介されています。

 

 

「介護士」というお仕事は、時にはむずかしいお年寄りのお世話もしなければならない、肉体的にも精神的にもきつい仕事だと思っている方が多いのではないでしょうか。

  

まさに、そういうイメージがありますね。自分には務まりそうもない大変なお仕事だろうなという印象です。

ところが、介護士であるGさんは、お年寄りと話すと勉強になるだけでなく、人生をエンジョイできるようになったそうです。そのきっかけは、お年寄りは「何かの達人」だと考えるようになってからだと言います。

 

多くのお年寄りは趣味をお持ちでした。

囲碁ファン、アマチュア歌人、郷土史家……。みなさんがそれぞれ趣味を持ち、それぞれが何十年も続けているので、腕前や見識は、プロの域に達しているわけです。

 

 

相手の方を十把ひとかげらに“お世話すべきお年寄り”とくくって接してしまえば、介護士という仕事は、たしかにきつい労働かもしれません。でもね、“目の前のお年寄りは、それぞれ何かの達人なのだ”と思った瞬間から、どんな方も興味深いなあと思うようになったんです。

 

Gさんは、みなさんに心を開いていただくために、徹底的に趣味のお相手をすることにしました。

すると、もちろん会話ははずみますし、Gさん自身も多芸・多趣味になって人生をエンジョイできるようになったそうです。

 

誰もが何かの達人である

著者は「苦手な相手を、いきなりまるごと理解しようとしなくてもいい」といいます。そして、苦手な相手であっても、「何かの達人」と見てみる方法を提案しています。

すると、相手の「人格」ではなく、相手が持っている「情報」に注目することになります。そのうち相手にも興味が出てくるかもしれないし、人間関係も変わってくるかもしれないというわけです。

 

コミュ障の私にもいますぐ使えるテクニック

この本のなかで面白かったエピソードがあります。それは、小学生の課外授業で生徒にこんなインタビューをしたときのこと。

 

  • 好きなことは?
  • 自慢できることは?
  • 今までで一番うれしかったことは?

 

小学生にこんな質問をすると大盛り上がりだったそうです。状況が想像できますよね。

 

 

『聞き上手さん』とは、ようするに、「相手の『承認欲求』を満たすことができる人」なのです。

  

なるほどな~と思いました。

お年寄りの話も小学生の話も、どちらも相手が喜んで話したい雰囲気になる質問の仕方です。

振り返れば、私が何かを質問するときは、自分が知りたい情報を得るために質問をしていたと思います。

でも、私も満たされたいけど、相手も満たされたいんですよね。

 

『「聞き上手」さんの習慣』を読んで

 

私はコミュニケーション下手を克服するために、「まずは聞くことからはじめよう」と思ってこの本を手に取りました。

『「聞き上手」さんの習慣』というタイトルから、聞き上手になるためのテクニックが書かれた本だろうと思いましたが、正直なところ想像した内容とは違いました。著者はインタビュアーなので、インタビューで欲しい情報を手に入れる方法が書かれている印象です。

でも、相手が苦手な人であっても、自分の考え方次第で相手への興味が生まれるという話はとても参考になりました。人間関係を楽しくするヒントをもらえたように思います。

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。