『自然を楽しむ週末別荘傑作選』を読んだ

「自然のなかに家を建てたい!」

と思っていても、どんな家にするか、一から想像するのは難しい。

外観は? 間取りは? 設備は?

何か基準がなければ、理想の家はイメージはしにくい。

 

そこで、『自然を楽しむ週末別荘傑作選』を読んでみた。

本書で取り上げられている別荘は「名作」と言われるものばかり。質素な佇まいで、自然に調和するように考えられたものが多い印象だ。

中にはため息が漏れるような別荘もあるが、家づくりを考えている人にとって、ひとつの良い基準になるんじゃないかなと思った。

 

別荘といえば、吉村順三

 

 

別荘建築が上手かった日本の建築家をひとりだけ挙げるとしたら、間違いなく「吉村順三」ということになります。

 

『自然を楽しむ週末別荘傑作選』は、巨匠・吉村順三の名作別荘のほか、住宅の名手10人がつくった週末別荘の最高傑作を紹介する本。

冒頭からずいぶん「吉村順三」推しだなと思ったが、別荘といえば巨匠・吉村順三だそうだ。ほどよいサイズ感、自然を取り込む眺望、自然のなかでいかに気持ちよさを獲得するのかについて深い考察と哲学をもち、日本の最高傑作といわれる吉村山荘を始め多くの名作を残したということだ。

 

本では、1960~1970年に建てられた4つの別荘を写真付きで解説してあった。特徴的だったのは「眺望」で、とにかく窓からの眺めが素晴らしい。

吉村の有名なエピソードで面白かったのは、設計を始める前に敷地にやぐらを建てて景色を観察したというところだ。二階レベルからの眺望を確かめて、部屋の向きやプランまで変えたという。たしかに、都会のアパートでも1階と2階じゃ見える風景が全然違う。土地探しをするときは、長い脚立を忘れずに車に積んで行ったほうがいいかもしれない。 

 

 

「だって、ちょっと上がってみるだけでね、たとえば向こうに海が見えたりさ、いい山並みが見えたりしたら、デザインがずいぶん違ってくるでしょう?」

-『吉村順三住宅作法』より

 

土間のある住まい

『自然を楽しむ週末別荘傑作選』には、ほかにも住宅の名手と言われる人の別荘がたくさん紹介されている。

質素風ではあるが、ため息が漏れるようなものばかりだ。やはり、別荘というものは、お金に余裕がある人が個人用のホテルや旅館を所有することなんだなとあらためて思った。普段は忙しく休む暇もないから、別荘に来たときは少し散歩をしたら家に入って、暖炉の火を入れて、風景を独り占めして、ゆっくりと贅沢な時間を過ごす。別荘とは何もしないためのスペースであると思った。

そうでなかったら、2階にリビングやダイニングを配置することはないだろう。出入りするのにいちいち階段を上り下りしなくちゃいけないし、私なんかは自然に来たら外でバーベキューをしなけれが気が済まないが、そういうことも考えられていない。

 

そのなかで目を引いたのは中村好文さんの『ASAMA HUT』だった。

部屋の構成はすごくシンプルで、土間を中心にダイニングと寝室を左右に振り分けるという3分割構成。

特に土間がいいなと思った。

私が求めるのは定住するための家。自然のなかでアレコレと何かしたい、働きたいと思っている。野菜を育てたり、薪割をしたり、犬の散歩をしたり。

実は、私の祖父母の家には土間があった。子ども心に、なんか汚いな、陰湿だな思っていたが、今にしてみると土間は合理的であったと思う。土がついた野菜を台所に運んだり、木屑のついた薪を薪ストーブの前に積んだり、あるいは、外で飼っている犬が人間の間をウロウロするのにも、外と地続きになっている土間は使い勝手がいい。

もし、私が自然のなかに家を建てるなら、そんな風に、リビングやダイニングが自然と“地続き”になっている家がいいなと思う。

 

『自然を楽しむ週末別荘傑作選』を読んで

その人が家に何を求めるかで構成は変わってくる。安らぎの眺望を求める人もいるし、どこにいても働いていたいという人もいるだろう。

でも、何よりも、別荘の基本は簡素にして質素であること。環境と調和していること。

吉村順三をはじめ、別荘の傑作選を見て「人が何を気持ちよく感じるのか」を考えることが大切なんだなと思った。

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。