新しいライフスタイル
3畳の部屋が人気のようだ。
“現代”の3畳一間が今人気のワケ。都心で始まる新しい一人暮らしの形 - FNN.jpプライムオンライン
このところ立て続けにそんな極小住宅のニュースを見たが、本当に気が滅入る。
私のもっかの不安は「将来の年金が少ない」ことだが、「これからは3畳ワンルームをたくさん普及させますから」「皆さんが入れるようにしますから安心ですよ」という話を広めようとしているのではないかと勘繰ってしまう。
この数年は「モノを少なく暮らす」というミニマリスト的生き方が流行っていたが、あれは前振りだったのではないか。モノはあなたのお荷物です。モノは少なくても、精神は自由に暮らせますよ。小ぢんまりとしたスペースがあなたに見合っていますよ……。私はせっせとオークションでモノを売り、ブックオフで本を売って流行に乗り遅れるまいと頑張ってきたが、実はモノを全部捨てさせて、みんな丸ごと極小住宅に押し込んでしまおうと、闇の権力に操られているのではないかと妄想してしまう。
3畳の暮らし
3畳ワンルーム。
人一人が通れる廊下を歩き、扉を開けると、小さなキッチンとトイレがある。その間をすり抜けてリビングの3畳。綺麗だし、6畳のワンルームをそのまま3畳にした感じ。
3畳あれば、テレビと小さなテーブルぐらいは置けるようだ。
ベランダがないので、洗濯物は室内干しになる。寝る場所は4畳のロフトでかなりゆったりくつろげる。
新大久保駅から徒歩6分でオートロック付き。なるほど、それで6万円台なら住む人もいるだろう。
しかし、私が将来入るような年金数万円生活者のワンルームはそんな部屋ではないはずだ。
同じ3畳でもペラペラの薄い壁で隣の音が筒抜けな部屋に決まっている。
テレビや音楽を楽しみたいなら、当然のようにヘッドホンは必須だろう。上下左右、全員が他人様に気を遣って生活するのがルールだ。音はできるだけたてないように、声のトーンは低めでお願いします。
私も3畳の部屋で、ひっそりと、音を立てないように気を付けながらブログを書いているのだろう。
何かがうごめく音を感じながら。
どこからも、そこからも、ゴソゴソ……、ゴソゴソ……。
上からも下からも、ヒソヒソ……、ヒソヒソ……。
ひえ~、ヘッドホンはノイズキャンセリングでないと、気が狂いそうだ。
そんなところに閉じ込められるなら、いっそのこと山の中にタダ同然の土地を譲り受けて、小屋でも建てて暮らした方が100倍マシだと私は思う。雨露防ぐ小屋と年金さえあれば、ひもじくとも、精神的に死ぬことはなさそうだ。小屋は慎ましいが、ドアを開ければそこには自由がある。そう、私の土地だ。そこでのんびりと菜園を作り、アウトドア道具の手入れをしよう。晴れた日には、道具を収納する小さな倉庫をDIYするのもいい。太陽の光を浴びて、自然のうつろいを感じながら、オレは人間らしい生き方をするのだ……。
『自作の小屋で暮らそう』を読んだ
『自作の小屋で暮らそう』を読むと、私の妄想は膨れ上がっていくばかりだった。
著者の高村友也さんは、68万円で山林を購入し、約10万円で10平米の小屋(※)を作り、月2万円で暮らしているフリーダムな人だ。誰にも文句言われずに、好きなだけ寝ていられる場所が欲しい。それが希望だったが、都会の隅での段ボール生活では他人の干渉があった。そこで、山林に理想の土地を求め、移り住むことにした。
小屋を建てようと思うが、出費はできるだけ抑えたい。やってみたら、そのへんのホームセンターで売っている鋸ととんかちとか、とにかく一番安い物で充分であった。
※リビング3畳、キッチン1畳、トイレ1畳の、5畳ロフト付きの小屋。都心の3畳ワンルームとほぼ同条件だ。
月の生活費はこんな感じだそうだ。
食費 | 10000円 |
ガソリン | 200円(原付100km) |
カセットガス | 500円(1週間1本) |
灯油 | 0円~1500円(0~1缶) |
電気・上下水道 | 0円 |
携帯電話 | 100円~(通話料次第) |
インターネット | 5000円 |
銭湯 | 230円×4.5回=1000円 |
雑費・消耗品 | 1000円 |
年金 | 0円(全額免除) |
健康保険 | 1500円(7割免除) |
所得税、市民税 | 0円 |
固定資産税 | 0円(免税点以下) |
計 | 約20000円 |
週に1度だけ風呂に入り、買い出しに行く。
大体同じ飯だが3食しっかり食べて、あとは紅茶にクッキーをつまみながら読書をしたり、好きなだけ寝て過ごす。
高村氏はフリーダムだ。頭がいい人なのだろう。私より10歳ぐらい若いのに、さっさと自由を手に入れている。
『自作の小屋で暮らそう』を読むと、なぜ私はコミュ障で悩んだり、働けない、金がないと怯えているのか不思議になる。私もすぐにでも小屋作りに入れば、そこに自由はあるはずなのに。
Bライフという生き方
Bライフという言葉はよく聞くが、高村氏が作ったそうだ。私の好きなからあげ隊長のブログで知って、それからはたまに目にする言葉だった。
本書では、100万円足らずの初期費用によって、月2万円程度で維持できるお気楽生活への道がちゃんと開かれていることを示したい。(略)「そこ」に帰ってくれば最低限の生活が保証されている、でも最低限だから維持費なんて全然かからない、そんな自分だけの安全地帯を、低予算で、しかも完全に独力で構築する。
私は将来の確かな安心が欲しい。
どこかの保険のフレーズみたいだが、いくらあれば私は暮らしていけるのか、何をどうすればいいのか。それさえわかれば、この先の人生を心穏やかに生きていくことができるはずだ。
3畳の極小住宅には、私は希望を持てなかった。しかし、同じ3畳でも自作の小屋にはお金に囚われない精神の自由を感じた。
月2万円あれば快適に暮らせるんです。Bライフという新しい道を示してくれる楽しい本だった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。