増え続ける「不送致」という結果
最近韓国では、告訴をした後に警察から「不送致」という通知を受け取るケースが目立って増えています。弁護士として数多くの刑事事件を見てきた立場から、この流れには明確な背景があると感じています。韓国の警察は、告訴を受けて捜査を行った後、事件を検察に送らずに自分の判断で終結させることができます。これを「不送致」と呼びます。実際、最近のある韓国の報道は、この流れを次のように伝えています。
「警察の不送致件数は、2021年の38万9179件から昨年は58万774件へと、約49%増加した。特に、不送致決定に対する異議申立ての比率も着実に上昇している。2021年に7%だった異議申立て率は、昨年9.7%まで上がり、今年上半期には11.3%を記録した。不送致事件10件のうち1件以上が異議を申し立てている計算になる」
― 韓国紙・毎日新聞(メイル新聞)、2026年7月26日、「速報:警察の不送致異議申立て、4年間で2倍…今年上半期3万4000件」
なぜ不送致が増えるのか
このような統計は、決して偶然ではないと思います。今、韓国の警察には処理しなければならない事件の負担が大きくのしかかっています。そうした中で、告訴の段階から捜査機関がスムーズに捜査を進められるよう準備するのではなく、大まかな事実関係だけを伝え、残りは捜査機関が探偵のように一つひとつ調べて犯人を見つけてほしい、という形で告訴が行われると、多くの事件で不送致という結果になってしまうのが今の現実です。
「証拠まで私が集めるのですか」というお気持ち、よくわかります
このお話をすると、「私は被害者なのに、証拠まで自分で探さなければならないのですか。捜査機関がきちんと捜査してくれればいいのではないですか」という反応をよくいただきます。そのお気持ちは、本当によくわかります。ただ、捜査機関の立場から見ると、今まさに山積みになった事件を抱えている状況です。告訴状の内容が分かりにくく、証拠はほとんどないまま主張だけが並べられていて、主張と証拠がかみ合わず、証拠として提出された資料を見てみると、単にご本人が書かれた日記やメモにすぎないことも少なくありません。こうした場合、残りの証拠は結局警察が自分で見つけなければならず、告訴状の内容と証拠がはっきりと一致していて起訴意見で送致しやすい事件と、そうでない事件との間には、処理の優先順位において大きな差が生まれてしまいます。このような状況で、捜査機関が起訴しやすい事件を先に進めて処理件数を増やそうとするのは、ごく自然な選択だと言えるでしょう。
「後からの異議申立て」より「最初からの戦略」を
私は、こうした捜査機関の現実に合わせて、告訴も弁護士を通じて専門的に準備すべきだと考えています。とりあえず告訴だけ済ませておいて、送致されなかったからといって、そこから慌てて異議申立てをするという進め方はおすすめできません。
十分な準備をせずに告訴を進めるほど、かえって結果が出るまで時間がかかる傾向があります。そして、不送致決定を受けた後に行う異議申立ても、最初の告訴のときと同じように、十分な準備がないまま行われることが少なくありません。その結果、異議申立てへの結論もどこまでも先延ばしにされ、最終的に棄却で終わってしまうケースが繰り返されています。
おわりに ― 告訴も、最初から弁護士とともに
「私が被害者なのに、なぜ私が捜査機関を楽にしてあげなければならないのか」というお気持ちから少し離れて、事件をできるだけ早く、確実に解決したいとお考えでしたら、最初からきちんと準備できる弁護士を選任して告訴を進められることをお勧めしたいと思います。

