シーダーローズの樹の下で ~シーダーローズ~ | 青嵐の霹靂

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~情熱と冷静の狭間で〜
悪性リンパ腫闘病記

こんばんは。

蒼月です。

濾胞性リンパ腫に罹患して17年。
今現在も、再々再々発中です。

 今は、17年前の記憶を掘り起こして書き綴っています。

 

時は、12月に入り、クリスマスシーズンの近くでした。

 

夫は、毎月お給料日になると、生活費を要求しにやって来ます。

休業中なので、休業手当は本給の8割ほど。

私の手元には、ほとんど残りません。

抗議をしようものなら、鬼のような形相で黙り込んだまま。

一切交渉は受け入れないようです。

 

治療につかれた私には、生活費を差し出すしかありませんでした。

何よりも二人の子供たちの生活が心配だったからです。

 

私は、頭痛のタネを抱えながら、売店のケーキ屋さんのお姉さんを訪ねました。

「元気ないねえ。これ見て?綺麗でしょう?」

お姉さんが手にしていたのは、バラの花のような木の実でした。

私は、そんな木の実を初めてみました。

 

 

「これ、ヒマラヤスギの松ぼっくりなんだよ。かわいいよね」

「これが、松ぼっくりなの?」

 

聞けば、病棟前の職員駐車場に、沢山ヒマラヤスギがたくさん植えられていました。

 

シーダーローズとは、ヒマラヤスギの事です。

 

もさもさした樹だなあとしか思わなかった私には、こんなかわいい松ぼっくりが出来るなんて知らないでいました。

 

私は、治療の長さを思い、夫との生活を思い、もやもやし始めると、ヒマラヤスギの下で松ぼっくりを探すようになりました。

 

 

大きなヒマラヤスギの下を散策しながら、嫌なことを忘れて松ぼっくりを探すのが日課になりました。

そこここに用意されていたベンチに座りながら、ぼーっとヒマラヤスギを眺めていると、心がすっとするような気がしました。

今度一時帰宅したら、子供たちにも見せてあげよう。

 

ヒマラヤスギの松ぼっくりをそっと手に包み込んで、病室に戻りました。