

“二重反転プロペラ萌え”としては押さえておきたい架空機体、それが『復讐の急降下』に登場いたします試作急降下爆撃機でございます。
『復讐の急降下』は新谷かおる氏原作の第二次大戦下を舞台に描かれた戦記モノ短編集「戦場ロマンシリーズ」のうちの一編。
約30ページほどの当作品のストーリーはいたってシンプル。
主人公はドイツ空軍のパイロット。急降下爆撃機《ユンカース Ju-87 スツーカ》を駆りロシア軍の戦車に攻撃を仕掛けるが、戦車に装備された対空ロケットランチャーによって返り討ちを喰らい機は撃墜されてしまう。かろうじて脱出したものの降り立ったのは先のランチャー装備の戦車の目と鼻の先。お情けで命こそ奪われなかったが両腕をキャタピラに潰され復讐を誓う...。
戦記モノと言えば松本零士氏の「戦場まんがシリーズ」がございます。そして多くの方がご存知のように新谷かおる氏は松本零士氏のアシスタントをされていた時期があり、独立後しばらくして「戦場ロマンシリーズ」を手掛けることとなります。
新谷かおる氏の「戦場ロマンシリーズ」は松本零士氏の「戦場まんがシリーズ」と同様、第二次大戦下の兵士の生き様を皮肉やユーモアを交えて描いた史実を背景にしたフィクションです。
同じような題材を同じような様式で描いた双方の作品ではありますが、それぞれ個性的な作品として成立しているのはさすがでございます。
ただ両作品に共通して言えること、それはメカ描写。
豊富な知識と正確な考証を基にした緻密な描写、実際のイメージや特徴を反映した高い再現度でありながら実物よりカッコ良く描かれた各種メカ。
メカを正確に上手く描く作家さんは数多くいるのでしょうが、この両氏の描くメカは生きてます。異常なほどのメカ愛によって一旦咀嚼されてから生み出されたという印象。正確にトレースしただけでは醸し出せない鼓動すら感じます。

画像の物々しいデザインの機体が本作の主役メカ。ドイツ空軍が1機だけ試作した急降下爆撃機…という架空設定の架空機体です。
主人公のパイロットは潰された両腕を義手に換え復讐の機会を伺ううちこの機体に巡り会います。
そしてこの機体を管理保管する老整備兵の制止を半ば強引に押し切り、復讐を果たすため先のロシア戦車に急降下爆撃を仕掛けます。
この機体は新谷かおる氏の想像の産物による架空機体でもちろん実在しません。松本零士作品にも《キ-99》という架空機体が登場しますが、それよりもかなりSFチックなデザインです。
ただ、大戦当時のドイツ試作機には突拍子のない発想やデザインの機体が多々あるので、それらを基準にすればそれほど非現実的なデザインでもないように見えてくるのです。
長く伸びた機体先端には二重反転プロペラ。エンジンは劇中のセリフによればターボプロップを搭載。
ターボプロップってのは要するにジェットエンジンの排気から、または回転軸から直接得た駆動力でプロペラを回すという機構です。つまりこの急降下爆撃機の胴体にはガスタービンが収まっているのです。

それを急降下爆撃機に搭載する必然性があるかどうか?
そんなこたぁこの際どうでもいいのです。単にこういう設定が好きなだけですので。
個人的にターボプロップという言葉だけでもゾクゾクするのに更に二重反転とくればそれだけでご飯3杯いけるのでございます。意味不明でしょうけど(笑)
類似のものにターボシャフトなんてのもあってヘリや船舶にも使われます。興味のある方は調べてみてください。

上の画像は主人公が作品冒頭で撃墜されてしまう機体ユンカース Ju-87 スツーカ。
ちなみに某帝国機動部隊・第二空母艦載機の急降下爆撃機のモチーフはこのJu-87スツーカ。(新作では「空間艦上攻撃機DMB87スヌーカ」)
ところで本作品「復讐の急降下」はタイトル通り最後に主人公がロシア戦車に復讐を遂げようと全速で急降下爆撃を仕掛けるんですけどね、実はこの機体には重大な欠陥があったんですよ。
それは降下速度が速すぎて投弾後に機首の引き起こしが不可能なんです。つまり急降下爆撃を仕掛けたが最後、自らも地面に激突するまで降下するしかないのです。
主人公にこの機体を渡す羽目になった老整備兵がその欠陥を知ってたのかといえば…、もちろん知っていました。
それを知っていながら主人公には教えませんでした。
この数年前、老整備兵の家を敵の司令部と間違えて家族もろとも爆撃で吹っ飛ばしたドイツ急降下爆撃機のパイロット…それがこの主人公パイロットだったのでございます。
──────コメント(13)─────
顔アイコンook**akou*i37
こんにちは。
「戦場ロマンシリーズ」は昔読みましたよ。
ドラマレコードも持っています。
新谷さんと言えば、「ファントム無頼」や「エリア88」ですが、本棚の奥に漫画本もあります。
2014/6/28(土) 午後 6:48
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ニホンセン
こんばんは♪
ソリッドさんもなかなかのメカ愛に溢れていると文体からも伺えますよw
大昔、新谷かおるさんと聖悠紀さん(超人ロック)は絵柄から女性漫画家かと思っていた時期がありました
戦場ロマンシリーズ読んでないんですよ
エリア88とふたり鷹ならアニメも見てました
こぉの 扶養家族!(笑)
2014/6/28(土) 午後 8:02
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ソリッド
ミルキーさん、こんにちは
私も「戦場ロマンシリーズ」は昔読んだきりだったんですけど、先日その一部を読み返す機会がありまして作品の魅力を再認識しました
ドラマレコードをお持ちとは ミルキーさん恐るべし(笑)
もしも機会がありましたらグッズ紹介シリーズ(?)でのアップを期待しております
新谷かおる作品と言えば「エリア88」や「ファントム無頼」…おっしゃる通りですよね。でも敢えてマイナーな方を拾いたくなる私です(笑)
2014/6/29(日) 午前 10:50
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ソリッド
ニホンセンさん
メカ愛溢れてますか?
確かにゼンマイとか大好きです(笑)
戦場ロマンシリーズは短編集なので機会があればぜひ一冊お読みになってみても良いと思いますよ
正確で緻密に描かれたメカと少女漫画キャラの取り合わせの大戦モノです。…あれ? ちょっと違うかな(笑)
「ふたり鷹」のアニメありましたね。今の作画レベルで観てみたいですね。
2014/6/29(日) 午前 10:51
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顔アイコンカムロ
おっと~二重反転Love炸裂ですね。
うちに小学生の頃に近所の大学生に貰った1/48のスツーカが有りますので差し上げましょう。
フォッケウルフ持ってますよね?ひひひひひw
2014/6/29(日) 午後 11:37
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ソリッド
禿零さん
二重反転式の扇風機があれば買いますね。
四翔×2、ボディカラーはグリーン/グレー・ツートンで。
フォッケは持ってないですよ
1/48スツーカ、凸モールドで合わせ目もスカスカなんでしょうね、デカール死んでて。そんな苦行に等しい迷わ…難易度高いキットは謹んでご辞退申し上げます。いや断固いりません(笑)
フォッケとスツーカじゃターボプロップのアレは作れませんよ
2014/6/30(月) 午前 4:28
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ばいきんダディ
読んでいるはずがすっかり忘れていましたが・・・
さすがヤッタラン。
ソリッドさんの文章を読むだけでグッときました。
トレースしただけでは出せない咀嚼した後に生み出されたメカ描写・・・
なるほど。まさにおっしゃる通りですね。
最近はCGのようなメカ描写をする漫画家さんが目立ちますけど。
確かにSFチックですが、実在の機体と言われても納得しますね。
当時のドイツ軍のビックリドッキリメカの数々からすると。
先日、ふと思い立ってエリア88の文庫版を購入したのですが、油の乗り切った頃の新谷節はいいですね。メカもキャラもお話しも。
よいタイミングで記事を書いて頂けました。
こちらも読み返してみたいです。
2014/6/30(月) 午前 9:00
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ソリッド
ダディさん
ヤッタラン副長、聞いた話によればアシ時代は本当にプラモばっかり作ってたそうですね(笑) もっとも仕事…松本作品の資料用としてですけど。
メカ描写に関しては、知識と表現力、そしてメカ愛を兼ね備えてるという点で双璧をなす存在が松本氏と新谷氏だという印象を持ってます。
人物キャラと同様、実在するメカですらもうひとつの主役として自分の生み出したキャラクターのごとく生き生きとカッコ良く描写してしまう表現力はCGのような正確さをもってしても届かない魅力だと思います
新谷かおる氏は少女マンガ家志望だったということもあって緻密で正確なメカ描写から乙女チックな繊細さまでを表現できる振り幅を持った稀有な作家さんのひとりではないでしょうかね。他の作家さん知りませんけど(笑)
戦場ロマンシリーズに少なくない女性キャラがメインのエピソードには新谷作品の魅力が詰まってるような気がします。
この「復讐の急降下」と同じ巻(文庫版)の「ハリケーンキャット」なんてまさに新谷ワールドなエピソードですよ
2014/6/30(月) 午後 8:51
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ネビィラ 71
松本先生の御弟子さんとは初めて知りました。f(^^; どうりで素晴らしいメカ描写ですよね♪ 擬音の書き方迄一緒の気がします。
2014/7/2(水) 午後 1:39
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ソリッド
ネビィラさん
アシ時代すでにプロデビューはしてたようです。
似通った部分もありながら甲乙つけ難いオリジナリティを確立してますよね
2014/7/2(水) 午後 7:10
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そんなぁ~ 是非フォッケボディにスツーカ翼で~ 4翔x2はシャープなのでスクラッチですね?
って事で是非差し上げます。
2014/7/3(木) 午前 10:31
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ウェストランドワイバーンの方が簡単そうですね。48キットとか有るのかな?
二重反転ラブなソリッドさんなら積んであるはず!
2014/7/3(木) 午前 10:37
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ソリッド
禿零さん
昔コレ作ろうと思って図面描きましたけど、流用キットは芯にしかならないのでフルスクラッチするのと一緒です
ワイバーンの方がカンタン…って全っ然カタチ違うし~(笑)
飛行機の積みは1/72キ-64が2機だけです
ヤルとしても48じゃなく72で
2014/7/3(木) 午後 6:02