前回のブログで、子どもたちの食事から、卵除去を徹底させることは、難しいとの話をしました。
 
その理由は、室内に卵蛋白がどこかについていて、無意識に、子どもの手や体から体内に、卵蛋白が入ってしまうらしいのです。
 
子育中、兄弟や親の食事の時に使われる卵の蛋白成分は、家の中のあちこちに広がってしまうということなのでしょう。
 
家の中のどこに、食品成分が散らばっているかがわかるようになったのは、科学の進歩により、食品蛋白が微量まで、測定できるようになったおかげです。
 
吸いとったり、ふき取ったりして得られた検体から、微量でも卵蛋白が検出できます。その結果、いろいろな事実がわかってきたのです。食物除去など、簡単ではないことがわかりました。
 
結局、除去する、しないにかかわらず、いろいろなルートで食物蛋白が体内に入ってきて、子供たちは、減感作されていくのでしょう。
 
以下は、卵でなく、ピーナッツ蛋白についてですが、室内のどこに、ピーナッツ蛋白があるかを検討した研究です。
The Journal of Allergy and Clinical Immunology;132, , Pages 623r 2013
 
この論文によると、ベット、室内カーペット、家具、お手拭きには、ピーナッツ蛋白が検出でき、ピーナッツの食後には、唾液中に3時間、ピーナッツ蛋白が残ったままになるようです。
 
しかし、ピーナッツ蛋白は、空気中にばらまかれることは少ないと、この論文は示しています。
 
ピーナッツ蛋白の測定には、3種のエライザキットを用いて、それぞれの測定系を比較しています。
吸い取ったほこりの中のピーナッツ蛋白の測定値と、ふきとったほこりの中のピーナッツ蛋白測定値は、よく数値が相関し、今回の測定法の精度が高いことを証明しています。
 
ピーナッツを食べた後の手や唾液には、食後3時間までピーナッツ蛋白が検出されました。
 
室内空気中のピーナッツ蛋白は、測定感度以下でした。ただし、ピーナッツのさやをむいた後には、若干の蛋白が空気中に検出できるようでした。
 
ピーナッツに関して、もう1題を紹介します。
 
ガーナの学童たちのピーナッツアレルギーについてです。
The Journal of Allergy and Clinical Immunology;132, 639-647, 2013
 
なんで、ガーナのデータ?と思われるでしょうが、ピーナッツアレルギーの反応(IgE抗体)がでる子どもたちの多くは、ピーナッツに反応しているのではなく、ピーナッツ以外の類似の構造物に反応しているという事実を、この論文が示しています。

アレルギー検査をすれば、アレルギーの状態が正確に判定できると、早合点してはいけません。検査の結果は、それほど精度の高いものでなく、数値が出たから、大変と考えなくて良いのです。

なぜ、反応が陽性となるのかの理由について解説いたします。
すでに、交差反応と言う言葉を勉強済みの方もおられると思います。アレルギーを起こす食品と、似た構造を持つ物質はたくさんあるのです。
 
もちろん、検査として正確でないのですから、改良が必要です。他の抗原検査でも、今も、改良の努力が続けられています。
 
今回、ピーナッツアレルギー検査で陽性に出たガーナの子どもたちは、実際には、ピーナッツアレルギーは無く、交差反応でピーナッツに対する陽性反応が出ました。
 
陽性となった原因のひとつは、子どもたちの寄生虫感染です。さらにもうひとつは、ピーナッツ蛋白とは関係しない炭水化物へ反応が起きたからです。その結果、IgE抗体検査で、陽性反応がでてしまったのです。
 
ピーナッツに対する特異IgE反応が陽性の子どもたちは、多く寄生虫に感染していたということが明らかにされました。もちろん、日本ではガーナの子どものような寄生虫感染はありません。
 
日本でも、ピーナッツが食べられる子供の中に、ピーナッツに対する特異IgE反応が陽性になる子どもたちがいます。
実際に、ピーナッツ蛋白に反応している子供もいれば、ピーナッツ蛋白以外に反応している子供もいます。
 
ピーナッツに対する特異IgE反応が陽性に出ても、ピーナッツを食べられる子どもたちの方が多いです。
 
反応が出ると、びっくりして、すぐピーナッツを止めてしまう親がいますが、すでに普通に食べれる子どもは、ピーナッツを食べていた方が、アレルギーへの進行が避けられる可能性が高いです(個人差があります)。
 
実際にピーナッツを食べてアレルギーが出る子どもは一部です。本物のピーナッツアレルギーでも、食べて慣らしていく減感作が可能です。

 
今は、若い男性から、子育てで疲れるとの話を聞きます。
 
仕事で疲れて帰っても、又、家で家事手伝いをして疲れると言うのです。そんな時、私は、「お父さんが子育てに参加すると、賢い子どもになるような気がするけど・・・」と話します。子育て中に、男性の気づく視点があるし、男性特有の科学的な目というもあるような気がします。
 
赤ちゃんが離乳食の食物に反応した時、除去に走る母親に対して、父親は男性特有な科学的な目があり、母親の思いこみへの抑止力を発揮しそうです。日ごろから、父親が子育てに参加していれば、母親も父親の意見を聞きいれやすいでしょう。そこには、長い目でみる子どもの将来展望が期待できます。
 
男性は、社会的にいろいろな情報にも恵まれています。一方、母親には口コミ的な情報、もあります。現実的かつ科学的な情報に囲まれて、偏らない子育てを期待したいです。
 
健康情報はたくさん出回っていますが、証拠を確認することの重要性を大事にしていきましょう。
 
今回は、食物アレルギー克服に向けた、興味ある論文をご紹介します。
 
除去食一辺倒だった、世界のすう勢に対抗して、オーストラリア小児科学会が負荷食の重要性を発信してきました。そうしたチャレンジは、現在も続いています。
今回は、生後4カ月からの乳児に、卵抽出粉末を食べさせ続け、1歳時の卵アレルギーの発症の予防効果を検討したものです。
 
よりよい食を求めて、時にはリスクを冒しながら、人々の挑戦は続いています。

食物アレルギーの治療として先駆的なウェスタンオーストラリア大学、パースで行われた研究です。
J Allergy Clin Immunol. 2013 ;132(2):387-392. Palmer DJ,ら PubMed23810152
 
研究から得られた事実は次のようです。
4か月の時点では、乳児はかなり卵に反応すること、
卵を割り当てられない群の赤ちゃんでも、卵に対するIgE抗体が陽性になったこと
(つまり、赤ちゃんには、なんからのルートで卵が体内に入る可能性があること)にご注目ください。
乳児に完全に卵除去をすることは、うまくやれないようなのです。
結論として、卵粉群では、卵アレルギーと診断される割合は、1歳時には36%で、対照群の51%と比べると、卵アレルギーの発症はやや減りました。しかし、対照群との間に有意差が無かったのです。
 
統計的には有効とは言えない数値で、卵粉群に脱落した赤ちゃんがいることなども考慮し、この方法では卵粉の有効性を証明するのは難しいようです。
 
但し、協力した親と研究者、及びがんばった赤ちゃんには敬意を表します。食物アレルギーの発症のメカニズムについて、重要な情報を発信しました。
 
以下が論文です。
 
二重盲検無作為法で、臨床試験を行いました。4~8ヵ月の月齢の赤ちゃんを、毎日茶さじ1杯の殺菌非加熱の卵の粉(n = 49)を与える群と、対照として米粉(n = 37)を与える群に分けました。(親も医師も、どちらの群であるかは、知らされません)
 
生後、8か月からは、加熱卵を、両群の赤ちゃんに与えました。この子どもたちが12ヶ月になった時、生卵を食べさせてみた反応と、皮膚プリックテストの結果とに基づいて卵アレルギーの有無を検討しました。
 
結果:
15/49(31% )の赤ちゃんは、卵粉に対するアレルギー反応がおきたために、卵粉摂取を続けませんでした。
 
生後4ヵ月で、卵粉摂取の有無にかかわらず、卵特異抗体が陽性になった割合は、全体で36% (24/67)でした。
 
生後12ヵ月になった乳児では、卵アレルギーと診断された割合は、卵粉グループは(33%)で、対照群は51%でした。 相対危険度、0.65; 95%のCI、0.38-1.11; P = .11)。
 
 卵特異IgG4レベルは、赤ちゃんが生後8と12ヵ月の時点で、卵粉群で高くなりました(P .001)。
日本の日常診療において、溶連菌感染症は、今もすこぶる多い疾患です。
 
1年中を通して、子どもたちの咽頭ぬぐい液から、即時検査の溶連菌反応が陽性に出ます。子どもだけでなく、両親、保母さんも、溶連菌感染症にかかります。抵抗力の低い大人が増えたという印象です。
 
溶連菌感染症は、咽頭の赤味が強い、鼻水がない、くしゃみがない、唇や舌が赤い、目が赤いなど、いくつか特徴はあるものの、検査の結果は、しばしば予想とはずれ、絶対陽性のはずが陰性だったりします。
 
一方で、発赤がそれほど強くない場合でも、時に陽性反応がでます。病気の出方は、本人の抵抗力との兼ね合いなので、「この病気なら、この症状!」と必ずしも言えないのが実情です。
 
抗生剤が良く聞きますので、つまり耐性菌はいないということですが、医者は助かります。抗生剤を投与しても、熱が下がらない場合は、他のウイルス合併をしているなどを考えた方が良いです。
 
最近のおかあさんは、溶連菌が陽性でも、「薬を飲めば大丈夫だから、バレエの発表会に、ぜひ行かせたい。」とか言う人がいたりして、病気のおそろしさに対する認識が今一つ欠けています。確かに、薬の飲めば、子どもはすぐ元気になります。

すぐ病院で診て診断してもらえる、すぐ抗生剤が手に入るなど、溶連菌感染症に関しては、日本は恵まれた医療環境にあります。そこは感謝したいところです。
 
溶連菌は治って当たり前と思わないで、やっぱり、恐い病気なのだということも肝に銘じておきましょう。
 
溶連菌感染症の怖さは、リウマチ性心炎を起こすと、その後、弁膜症などで、心臓の働きが悪くなっていきます。
 
日本と異なり、医療環境の悪い地域では、溶連菌感染症がどんな猛威をふるって、人々を不幸にしているかの貴重な成績が出たので、これを勉強して、感謝の思いをはせましょう。

以下の情報は、医師向け情報サイトから情報をいただいています。2013/09/03 [Cardiology News Now] | nc035869 | 提供元:自治医科大学教授 苅尾七臣先生
 
溶連菌感染症を放置すると懸念されることは、その合併症です。代表的なものに、腎炎、リウマチ熱、リウマチ性心疾患があります。
 
同じリウマチとの名前がついていますが、リウマチ熱は、成人の自己免疫疾患である、リウマチ性関節炎とは別の病気です。
 
オーストラリア・王立小児病院のJoanna G. Lawrence氏らが、原住民の多い地区で、1997年から心疾患の発症に関して統計をとりはじめています。
 
オーストラリア原住民は、医療アクセスが悪く、子どもたちが溶連菌にかかり、心臓疾患を起こし、さらに心不全や死亡などして、その予後が不良なのです。
 
オーストラリア北部地域は、住民(22万5,000人超)のうち、原住民(アボリジニやトレス海峡島民)が約30%(約6万4,000人)を占めます。彼らは、隔絶された狭小の地域に住み、大半が貧困で生活水準が低く、 医療へのアクセスが不十分です。

1997年から2010年にかけて、オーストラリア北部住民の臨床観察をして、リウマチ熱とリウマチ性心疾患の発症頻度を調べました。
 
長期観察の結果、1,465例(リウマチ性心疾患1,149例、リウマチ熱初回診断615例)が診断され、彼らの病気の経過を観察しました。リウマチ熱登録615例のうち、97.6%が原住民でした。
 
彼らのリウマチ熱罹患率は、5~14歳群で最も高率でした(10万人当たり男性162人、女性228人)。
10年以内にリウマチ性心疾患が起きてくる率は61%、リウマチ性心疾患と診断後5年以内に心不全となる(心臓がポンプとして働かなくなること)確率は27%でした。
 
診断後10年の、生存率(相対比)は88.4%でした。
 
医療が十分に行きわたらないことにより、オーストラリア原住民にリウマチ熱およびリウマチ性心疾患が増え、死亡しやすくなっていました。
 
以上は、溶連菌感染症を契機に、心臓が悪くなり、10年以内に死亡するリスクが高くなる状況を、数値で確認した貴重なデータです。
 
先進国には、アレルギーが多いですね。その原因は、胃腸炎や肺炎などの感染症の病気が少なくなったからと考える専門家は多いと思います。
 
以前から、衛生環境とアレルギーの関係については、このブログでご紹介していますが、ここで、再度、おさらいをしてみましょう。
 
アレルギー反応も、本来は、体を守るしくみのひとつですが、それが働き過ぎて過剰な反応となった時、人々は「アレルギーの病気が起きた」と感じます。
 
杉の花粉が鼻につけば、くしゃみと鼻水で外に出す働きが起きます。人は、なりふりかまわず、とりあえず、花粉を体外に振り払おうとの反応が起きます。この働きをしているのが、IgE抗体で、危険物を瞬時に、追い出すための免疫のしくみです。
 
赤ちゃんが、おかあさんの胎内にいる時から、赤ちゃんの免疫細胞は、危険なものを見分けるために働き始めます。生後に、卵やミルクが赤ちゃんの口から入ると、赤ちゃんにとって初めての異物ですから、いろいろに反応するのです。
 
元々、人は、卵やミルクが大好きです。食べると、おいしい、おいしいと感じて、栄養素として体に吸収します。それは、動物の進化の過程で、卵やミルクである異種の蛋白質と、人の腸管が、最終的に妥協環境に到達しているおかげです。
 
この妥協が低下すれば、人はすぐ腸炎を起こしてきます。
 赤ちゃんは、まだ、妥協関係が未熟なのですから、乳児期は、一過性にミルク・卵に反応をしてもいたしかないのです。
 
お母さんが、感染症の多い不潔な環境にいると、赤ちゃんも、感染症を生き延びるために、免疫を備えて生まれてきます。
 
ところが、先進国のおかあさんは、感染症が少ない環境にいますので、あかちゃんは準備不足となります。
 
生まれてすぐ、戦う相手のいない清潔な赤ちゃんは、抵抗力の活躍の場がなく、混乱が起きると、食物などに反応しやすくなると想像されます。
 
先進国のアレルギーの増加は、こんなふうに説明されています。すごく、説得力があるのですが、それを証明するのは難しいです。
 
それでも、科学者たちは、そうした現象を説明すべく、アレルギーモデルを作って、思索しています。
 
ネットでアレルギーを学んでいる人は、Th1とTh2のしくみについて、ある程度の情報を得ているかもしれません。体は、Th1とTh2と呼ばれる異なるしくみで、体を守っています。アレルギーの免疫系は、Th2と呼ばれる型の異物排除のしくみです。

少しづつ、じくじくと免疫細胞が攻撃されるとTh2の型になりやすいと言われています。

Th2に対する言葉は、Th1ですが、普通の感染症では、Th1が大事で、まずこれが立ち上がります。Th1が立ち上がる感染症として有名なのが、結核です。薬の無い時代は、世界中の人にとって結核は致死的でした。
 
結核は強力な菌であるために、最後に人が選んだ戦略は、結核菌との妥協でした。人は結核菌と闘わず、体内に封じ込めるのです。60歳を過ぎる日本人は、結核菌を持っています。
 
一方、結核菌ではなく、それ程、強力でない病原体が遷延するとTh2に移行するようになるようです。マイコプラズマ感染症も、こうした遷延感染のパターンが推定されていて、喘息との関連が疑われています。
しかし、いろいろ個人差や例外が多くて、研究が今ひとつ進みません。

長い月日をかけた、病原体と宿主の相互作用は、お互い、取った、取られたで推移しますので、科学の力での解明は、まだ、不十分です。
 
Th2反応の代表格であるアレルギーについての研究を紹介しましょう。

人工的に、動物モデルに卵アレルギーを作ることができます。
 
卵白アルブミンという卵の成分を使います。ラット腹腔内に、この卵蛋白を入れるのです。腸管の中ではなく、腹腔内に入れます。腹腔とは、本来無菌で外から蛋白は入りません。本来、卵由来蛋白が入ってくる場所ではありません。ラットは、必死に、卵蛋白を排除しようと免疫反応が起きてきます。こうして作り上げたモデルラットに、卵を食べさせ、アレルギー反応を起こさせます。
 

ラット実験の途中で、いろいろな物質や薬を添加するなどの条件を変えて、卵アレルギーへの影響をみます。今回は、細菌から抽出した成分をラットの口から入れて、卵アレルギーへの影響を見ています。
 
なぜ、こうした事をするかというと、菌抽出物質を食べたラットでは、アレルギー反応が弱まることを確認するためです。菌の排除能力を高めたラットでは、卵に対する反応が減弱するというストリーです。

Int Arch Allergy Immunol. 2011;156(2):196-204. PMID: 21597300

生後42日のブラウン・ラットに新生児期から42日目まで、菌抽出物を食べさせました。そして、生後、35、40、45日目の3回にわたり、ラット腹膜内に、卵白オバルブミン(OVA)をいれて、卵感作ラットを作りました。
 
生後60と61日に、ラットに、胃管を用いて、強制的に卵白オバルブミン(OVA)を入れて、卵アレルギー反応を観察しました。対照として、菌抽出物を入れないラットでも、卵感作ラットを作り、両者を比較しました。
 
結果:
菌抽出物を入れた卵感作ラット血清中は、菌抽出物を入れないラットより、卵白オバルブミン(OVA)特異IgEとIgGの濃度が低値でした。
 
腸管のリンパ球の反応性は、菌抽出物を入れたラットの方が、卵に対する反応が弱まり、調節性が高まっていました。
 
つまり、菌抽出物を入れたラットの方が、卵負荷時の腸管透過性の低下がみられ、IL-10の産生が高まっていました。
 
マウントサイナイ病院(Mount Sinai Hospital)は、アメリカ合衆国ニューヨーク市の マンハッタンにあるマウントサイナイ医科大学の附属病院です。今夜は、この病院での食物アレルギーのある子どもたちを対象として行われた、食物負荷テストの成績を紹介します。緊急注射薬のエピペンの注射の使用頻度も書かれています。
食物アレルギーが予想される子供の2/3は、症状が無く食べれること、アナフィラキシーは、年長児で要注意のことにも、ご注目ください。
J Allergy Clin Immunol.2009 Dec;124(6):1267-72.
 
食物負荷テストの時に、エピネフリン注射を要する頻度や、負荷後に二相性反応(即時に出る反応に加えて、その後に遅れて出る2種類のアレルギー反応がおきること)が起きるかどうか?については、不明な点が多いため、この点につき研究した。
 
背景:
食物負荷テストの際のエピネフリンと二相反応について、その頻度と危険因子を決定すること。
 
方法: 1999~2007年に行われた食物負荷テストの反応の詳細について、コンピュータ化されたデータベースを使い集計しました。
 
食物負荷テストをするかどうかの小児患者の選択は、病歴、特異IgE濃度と皮膚テストを参考に、負荷後陽性反応が起きる(食後にアレルギー反応が出る)の可能性が50%以下と予想される場合で、強い反応が起きないであろう見込の小児たちを対象としました。
 
結果: 1273回行われた負荷テストのうち、436回の負荷テストで、陽性反応(食後のアレルギー反応)が34%に出ました。 エピネフリンは、50回の負荷テストで使用されました(陽性反応の11%、負荷全体では3.9%)。
 
負荷後(食べた後)に、エピネフリン注射を要した食品は、多い順に並べると、卵(n = 15、卵への陽性反応の16%)、ミルク(n = 14、ミルクへの陽性反応のうち12%)、ピーナッツ(n = 10、ピーナッツへの陽性反応のうち26%)、木の実(n = 4、木の実への陽性反応の33%)、大豆(n = 3、大豆への陽性反応の7%)、小麦(n = 3、小麦への陽性反応の9%)と魚(n = 1、魚への陽性反応の9%)の順でした。
 
エピネフリン注射が必要となるケースは、年長児で起こりました。注射を要した子どもの平均は、7.9歳で、要さない子どもは5.8年歳で、年齢差に有意差がありました(P .001)。
 
ピーナッツ負荷後の反応が有意に高い(P = .006)結果でした。
 
 性、喘息の罹患率、アナフィラキシーの既往、特異IgE濃度、皮膚プリックテスト反応程度には関係しませんでした。 エピネフリンを2回必要としたのは、小麦、牛乳、ピスタチオの3人(6%)でした。二相反応が、1回(2%)ありました。陽性反応のうち、致命的な呼吸困難や心血管系症状はありませんでした。

結論: 年長児であること、ピーナッツに対するアレルギー反応が、負荷テストによるアナフィラキシーの危険因子でした。 しかし、実際にエピネフリン使用を要することは少なく、二相反応の反応はまれでした。
 
 経口負荷テスト(OFC)は、食物アレルギーの診断のために行われるものです。
 
実際にその食品を食べさせてみて、症状が起きるかを確認するための検査です。その手順はすでに標準化されています。日本では、病院で行われる経口負荷テスト(OFC)に、医療保険が適応されます。
 
アレルギーの食品を除去すること(食物除去療法)は、実際に、その食品を食べて、症状が起きるかを確認した後に行うべしとされています。
 
昭和大学の今井先生たちは、日本アレルギー学会と小児アレルギー学会の会員である専門医を対象に、日本の経口負荷テスト(OFC)の現状について、アンケート調査をしました。
 
”アレルギー”という医学雑誌に、その内容が論文になっています。 2013;62(6):681-8。
 
1353人の医師から回答がえられました。49.9%の医師が直接、患者診療にあたる臨床家の医師でした。43.9% の医師は、100ベッド以上で病院の勤務医でした。小児科専門の医師は65%で、18.8%は内科医でした。
 
負荷テストは、全体の6割の施設では、まだ、実施されていませんでした。
経口負荷テスト(OFC)が行われている 541か所の医療機関において、どの位の回数で負荷テストが行われているかを調べたところ、その回答は以下のようでした。
 
経口負荷テスト(OFC)の回数は、1年間で、1~10回47.5%、11~30回22%、31-50回11.3%、51-100回8.7%、100回以上の負荷テストがなされているのは10.5%となっていました。
 
9歳以下の食物アレルギーある子どもたちのうち、負荷テストが行われている比率を調べてみると、病気を持つ子どものうちの6.4%程度と思われました。
 
日本での経口負荷テスト(OFC)は、アレルギーの専門医師により広く行われいましたが、しかし、まだ、全体の子どもたちの一部でしかない状態でした。PMID: 23969880
 
 
今回も、読売新聞に掲載された人生相談へのコメントです。
今回は、回答者が書いた内容に対する私のコメントです。
 
かつての新聞相談のスタイルは、一般人からの相談に、有識者が回答し、新聞読者は、その回答を拝見するというスタイルでした。

作家などの社会的見識のある人、教授と呼ばれる専門知識を持つ人が回答を寄せても、かならずしも、万人向けではありません。
 
今は、それぞれ一般人でもコメントを出す時代となりました。ブログもフェイスブックも、一般人によるやりとりを可能としています。
 
今回は、相談を寄せたのは、離婚歴があり、子持ちで、正社員として会社で働く女性です。彼女は、今まで、がんばって会社で信用を得てきたこと、家も子どもも順調であると書いています。
 
しかし、相談してきた女性は、結婚前に勤めていた大企業と比べると、今の会社の仕事に不満を感じると言っています。社内の企画書が通らないとか、会社での評価が十分でないとか、おしゃっています。

ご自身でも、生活は幸せであると評価していますが、仕事上の不満がつのり、今後、どうすべきか?の相談です。
 
今回の回答は作家の方がなさっています。回答の出だしの文章は、
「がんばってきましたね、実力がある方ですね」と、一定の評価をしています。
 
しかし、その後には、「周りの状況を見えていないのではないか?周りの人への思いやりや配慮が足らないのではないか?」との言っています。そして、「ご自身で自己分析ばかりしているが、自己分析ができると考えてはいけない!」と書いてありました。
 
こうした内容を読むと、相談を寄せた女性は、回答の最初の部分しか読まないと思います。有識者からの批判に傷つき、相談を寄せたこと自体を後悔するのではないか?と思うのです。
 
相談そのものを後悔させることになれば、回答に意味が無くなってしまいます。
 
新聞掲載のような一般論的な人生相談であれば、読者がいます。読者にも、読んで参考になったと思わせることが必要です。相談を寄せた女性が相談してよかったと思い、新聞読者にも、なるほど参考になったと思わせないと、新聞に掲載する意味がなくなると思います。
 
相談を寄せてきた女性は、自らの人生に誇りを感じています。正社員で、企画を出すような立場にいることも彼女の誇りです。女ひとりでがんばってきたことを、誰かにほめてほしいと思っています。それでいろいろ書いているのです。それは自己分析というより、自慢話です。女性である私の立場では、そこは十分に評価してあげたいと思います。
 
もし、対面で彼女をカウンセリングをすると仮定してみましょう。カウンセラーは、女性の自慢話を十分に聞いてあげるだけでも、彼女は満足し、その結果、自己反省に向かうでしょう。自分自身のおかれた環境を考え、今後の方針を自ら、決めて行くようになるのではないかと思います。
 
女性が得てきたポストは、女性自身の努力の成果であり、周りも十分にそれを評価しているだろうと言ってあげたいです。その上で、カウンセラーは、すべての働く女性が感じるガラスの天井について、話を持っていきたいです。
 
回答者はこう書いています。「あなた(相談者の女性)は、ご自身をこうした人間であると、決めつけています。自己分析をしていますが、分析できる程度の自分でしかないということに気づいてください。自分のことを自分が一番、良く分かっているというのは、幻想ではないでしょうか?」
 
私の印象ですが、上からの目線と感じます。
 
相談を寄せた女性の立場で考えると、こうした回答はうれしくないです。相談した女性は、批判めいたアドバイスに対し、「そんなことは、わかっている」「私も、他人への配慮は十分にしてきた!」と反発するでしょう。新聞を読んだ読者も、上から目線を感じる人は少なくないと思います。
 
人は、会社の事業の経験を積み、若い時より知識が増え、会社に益する企画書を作ることができるようになります。しかし、それが会社の上層部で通るかどうかは、別の問題なのではないでしょうか?
 
これ以上、この女性に活躍されたくないとか、表面に見えない評価があると思います。それは、女性自身が抱える問題であるだけでなく、時にはプラス評価の才能が災いすることあるでしょう。才能の持つ者は、排除されやすいと思います。特に、男社会である会社組織では、必ず女性に付いて廻る現実でしょう。
 
一般論としてのガラスの天井を話題として持ち出すことで、女性自身も自らがかかえる問題点に気づきます。自分自身で気づけば、女性は不快感を感じないであきらめることができるのです。あれこれ考えて、あきらめると言うのは、知的エネルギーではないでしょうか?
 
人は知識を求めます。そして自分の行動を決めて行きます。
自分のことは、自分が一番、良く分かっていると考えて良いと思います。
 
昔の女性は、自分で行動を決めて行くことができなかった。だから、多くの小説を産んできたと思います。
 
食の歴史を見ると、人の病気が見えてくる。
 
某新聞の書籍紹介コーナーに、「チーズと文明」というタイトルの著書が紹介されていた。著者は、ポールキンステッドとある。この本の内容を、京都大学教授の岡田温司氏が解説している。
 
彼の記載によると、人間がチーズを製造し始めたのは、紀元前7000年あたりとのことである。人がチーズという形態を発見し得た経緯として諸説あるが、一説に、子牛、子ヤギなどの胃袋に、凝固したミルクをみつけ、ミルクを変化させる手段を発見したと言う。
 
チーズは、運搬性、保存性に富み、大事な食糧として扱われており、旧約聖書では、神への貢物としての名誉ある食べ物であった。

昔も、ミルクに対する反応が起きやすく、ミルクを飲めない人が多かった。
しかし、発酵させたチーズは、成人でも反応する人が少なくなるということに、すでに気づいていたらしい。
ミルクに慣れない人は、チーズという形態になることで胃腸の反応が和らぐことを、人はわかっていた。
 
私が興味をもったのは、この頃から、人々は、成人と比較して、乳児では、ミルクに対して反応が起きないという事実を知っていたことである。乳児は、食べ物に反応しにくいという事実を、経験的に得ていた。
 
食べた(飲んだ)ものに反応しにくいということは、乳児の排除能力の低下を意味するものである。
それは、栄養素を取り入れるという意味からは、とても大事な能力と言える。
 
外来の蛋白質を排除する能力が、乳児は低いのである。そして、そのつけとして、乳児は、病原菌を排除できず、胃腸炎が重症化し、命を落としやすかったと思う。
 
乳児がミルクを良く飲めるというのは、ミルクに対して、免疫反応がおきにくいということである。
 
人は進化の過程で、雑食であることを選んだ。生存競争に勝ち続けて行くために、動物は、さまざまな外来性蛋白質を、他の生物から奪い取らなければならない。
 
乳児が食べ物に反応しにくくなっている理由は、外来の蛋白質を、栄養素として早く体になじませるという自然の摂理が働いているためと思われる。
 
経験的に乳児の離乳は、1歳までに完成させる指導がなされてきた理由も、この時期が一番、多様な食べ物を受け入れやすい時期であるという経験を人々は持っていたからだろう。
 
しかし、世の中が清潔になり、乳児の食べ物を厳選するようになってしまった。昨今の子どもも敏感になり、ミルク、卵の反応しやすくなってしまった。
 
その結果、早く離乳を完成させるというコンセプトも変わり始め、食物アレルギーのある子どもたちでは、治療として、反応する食べ物は食べないでおくという食事制限が勧められるようになった。

食物アレルギーは、世界的に増加傾向にあるが、日本では、特に、ミルク・卵など、乳児期に起きやすい食物アレルギーが、年長になってからも遷延化しているのが、特徴である。
 
食物アレルギーの治療は、除去のみとされていた時代が、30年以上も続いた結果、除去が続き、年長児になっても、卵、ミルクが食べられない子ども増えてしまった。特に、日本では、「念のために、除去する」子どもが、世界の他の国より、かなり多くなってしまったのである。
 
むしろ、今はその反省期であり、積極的な食物負荷試験(食べて様子を見る検査)が専門病院を中心に行われている。
 
そうした試みの結果、わかってきたことは、一旦、食べれるようになった食品でも、子どもがそれを食べないでいると、又、再発してしまうという事実であった。食物アレルギーのぶり返しであるが、こうした反応には個人差が大きなこともわかってきた。
 
食物アレルギーの克服には、子どもの性格もかなり重要であると言われる。神経質な子どもでは、なかなか克服できまないらしい。
 
そして、もうひとつ、注目すべきは、ミルクは卵に比べて、治していくことが難しいという事実がわかってきたことであった。
 
これらの原因については、今後も研究が進められていくと思われるので、又、新しい情報があれば、このブログで、ご紹介したいと思う。
 
今回も、読売新聞に掲載されている人生相談について、私が感じたことを書きます。
今回の結論は、「男性脳を理解するなら、おのずと女性の行動は決まってくる」というものです。
 
60歳過ぎの未亡人からの相談で、彼女は、サークルで知り合った独身男性を、好きでたまらなくなり、個人的に付き合い始めたものの、相手が急に冷たくなり、とてもつらいとするものである。
あきらめるべきか?行動すべきか?という相談である。
 
回答したのは、男性の有識者である。回答者は、この交際相手の男性は、他の女性と楽しい時間を過ごしているかもしれないので、あなたはあきらめた方が良いとするものであった。
 
回答した男性は、相手の気持ちを想定せよ!と教えている。恋愛相手であるこの男性の心理状態が、男性回答者には良く見えているのである。
 
男性はいくつもの脳を持っていて、それを操る。一方、女性はひとつの価値観を持っていて、それにこだわる傾向がある。これは、必ずしも、男女の脳の違いのみでなく、男女の社会的、経済的な立場の違いも影響している。
 
女性は、その長い人生経験の中で、多様な価値観を持ち合わせる機会に恵まれない気がする。しかるべき立場に立てないために、世の中が見えてこない。
 
“世の常“を知るということは、自らが経済力、権力などを獲得していく過程で得られることが多い。たとえ、その人自身が出世せずとも、社会に出れば、上司や社長など、上層階級の人や、リーダーシップを発揮できる人に接する機会が多い。
 
平の男性たちは、上層部に対し、陰で厳しく批判を浴びせながらも、するどく観察している。そうして、権力者の気持ちを想定したり、価値観を学んだりしている。こうして、複数の男性脳は、完成されていくのではないか?今、はやりの半沢融資課長も、そうした複数脳の持ち主である。
 
今回の人生相談についても、回答した男性有識者は、相手の男性の気持ちが良く読めているのだ。
 
相談者の女性が嫌われた理由は、女性が夢中になってしまったからである。好きになれば嫌われる、恋愛の最も残酷な一面である。若い人にはありがちが傾向だが、歳をとってくれば、こうした恋愛思考はいけないことを悟るようになる。弱い立場の人の足元を見るのはいけないことだ。
 
年配者が恋愛する時、若い時とは違って、相手を見る経験を積んでいる。相手の思わせぶりを、素早く見抜くこともできるし、相手に対する思いやりの心も完成する。
 
そして、自分自身の志向もよく理解し、心の変化は急ではない。相手に対し、急に冷たくするなどの手段はとらなくなる。深く付き合いたくないと思うなら、「困ったな」と気づいた時点で拒絶のサインをだすものである。
 
今回の相談では、前兆はなく、突然、男性が冷たくなったと感じている。その真偽はともかくとして、もし、本当にそうなら、この相手の男性は、歳をとっても思わせぶりをするイヤな奴である。こうした性格には問題がある。お付き合いは、女性の方からお断りして後悔はない。
 
私が回答者なら、「この男性は、好きなる価値がないと、思いませんか?」と、書きたいところである。
 
相手が熱くなると困るというのは、本来の恋愛のあり方に反している気がある。若いうちなら、許されるものの、老いらくの恋では、許されないものである。
 
老人の恋愛は、男性はお金のあるふり、女性はお金のないふり、をしろと言われているが、この格言は納得できるような気がする。
 
男性の価値観は、世の中に何らかのインパクトを及ぼすことであり、成果を求める。
経済力、権力は、その成果である。
男性の失恋の苦しみは、選ばれなかった自分に対する劣等感である。
男性の恋愛は、自らの存在感を満たすという要素が大きい。つまり、相手の女性がどうこうというより、その女性に選ばれるかどうかが、男性にとって大事である。だから、男性は、失恋体験から立ち上がれない。
 
男性は、自分が選ばれるかどうかに、神経をつかう。好かれるためにお金も使う。一方、女性にとって、今を楽しませてもれえるなら、人生の時間を使う価値はあるといえる。
 
新聞コラムに載った別の人生相談でのエピソードである。
老いらくの恋において、男性は女性の手料理を求め、手料理にかかるコストを男性は払わず、不満を感じる女性から、どうしたらよいか?という投稿があった。残された限りある人生の時間を、この男性に使うなどもったいと、私は思う。

女性自身が、食事代を払わなくてもつきあっていたいと感じる交際相手とだけ、付き合ってほしい。
老いらくの恋は、成果を求めない。その時、人生が充実したと感じることができるかが、老いらくの恋の決め手になる。
 
女性たちよ!、男性の複数脳を、あれこれ考察しながら、自らの行動は迷うことなく、自ら、決めて行こうではないか。
 
前回のブログに以下の文章を書いた。
 
更年期障害は、女性を苦しめ、望ましい状態ではないが、とりもなおさず、女性の弱い立場を象徴するものでもある。病気になったりしないと、周りにインパクトを及ぼせないのである。
 
これは、女性は仮病を使うと言う意味ではない。仮病というのは、本人が仮病であるとわかっている。
女性の心身症(自律神経失調などとも言う)は、社会的環境や立場の弱さがおおいに影響して、体の症状となって出てくる病気である。そして、本人はそれが心の問題であると思いたくない。
 
心身症の代表的な症状としては、体の痛み、疲れ、全身倦怠、うつ、無気力などである。のどのイガイガ、空咳、体のかゆみ、皮膚の違和感、口腔内の違和感など、それぞれの人ごとに症状は異なる。ひとつ無くなると、次に別の症状にとりかわったりもする。
 
こうした症状には、医師は取り扱いが困難で、診療現場で、医師に理解してもらうには時間がかかるが、日本の3分診療ではそうした機会はない。
 
ドクターから短時間で切り上げられてしまうと、患者さんは医師が真剣に向き合ってくれないとぼやく。
むしろ、胃腸症状、神経症状などの症状であれば、医師は病名をつけやすい。
結局は、不定愁訴と言われるごとくに、心の不安や不満から、さまざまに体の症状として、外にでているのである。
 
体はつながっているのだから、心のトラブルは体の症状になるのは、ごく自然なことである。
医師は具体的な病気を探そうとはしてくれるが、治療法のない症状にはあまり乗ってこない。
 
つまり、診療を受けたとしても、医者の言葉に決め手がないなら、それ以上は期待してもダメである。
むしろ、具体的な病名が無いなら、まず、安心するのが良いと思う。そこから、それぞれの人が、考えをめぐらし対処法を決めて行くことが有用である。
 
対処法は、100人いれば100人の方法があるような、多彩なものである。自分にとって、楽になる対処方を編み出す工夫をする。
 
体の不快な症状は、いつに出るのか?どういう時に悪化するのか?何により軽快するのか?などはそれぞれの人が一番、良く分かっている。しかし、こんなことを言っても・・・とか、意味がないのでは・・・と、医師では言わない患者さんも少なくないだろう。
 
いづれにしろ、自分自身の最高の主治医は自分であり、自ら気づくと言うことが、病気予防にとても有用と思う。禁煙なども自らの決意以外では、成功しそうにない。
 
このところ、読売新聞の人生相談の記事について書いているが、今回も、中年の女性(仮にAさんとする)が投降したひとつの悩みを紹介したい。
 
過去に、息子の学校担任だった女性の先生が、Aさんの駅近の自宅の駐車場に、時々、車を置かせてもらいたいと頼んだそうだ。Aさんは、この元担任の先生に、良い印象は持っていない。その理由は、かつて、この先生から息子について不愉快なことを言われたことがあったのだ。
 
さらに、先生に駐車スペースを提供するためには、早く起きて扉を開けなければならない。こうした状況であれば、息子の元担任教師と言えども、駐車をたのむ人は少ないだろう。この投稿への回答は、大学教授の女性であったが、「私なら断る。」というものであった。
 
Aさんの話によると、実は、先生の頼みに対し、最初に駐車を承諾したのは、義母であった。私は、ここが大事なポイントだと思った。もちろん、Aさんの場合がそうであるかはわからないが、Aさんの不快感は、駐車をたのんだ先生に対する不満だけではないような気がする。
 
Aさんの意向が無視されたまま、義母の立場を立てるために、駐車場の扉を空けなければならないことが、Aさんにはつらい。大事な息子をけなされた憎い先生のために、いやな仕事をしなくてはならない上に、自分の感情が無視されていることへの情けなさである。
 
本来、学校の先生は、親にとって大事な人なはずだが、それだけに反発が起きることもある。女性の教師は、母親はジェラシーを持ちやすい。しかし、息子の成績が良くなれば、母親の感情は尊敬に変わる。
 
しかし、Aさんは、義母の顔をつぶせない立場にある。義母に対して、Aさんは「反対です」と言えないのであり、家庭内でのAさんの弱い立場が思いやられるのである。
 
Aさんは、自分自身への情けなさや、義母に対する劣等感も相まって、先生に対しても、より強いくやしい思いが募ってしまっているのかもしれない。
 
投稿の文章では、憎しみは、先生に対して向けられているが、そうではないのだと思う。Aさんは、文章を作る時に、先生はひどいという表現をしているが、あえてその他の感情を書きこまなかった可能性がある。行間が気になる!代替的な感情なら、それに悩まされることは、Aさんの心の負担になりそうである。

では、Aさんは、どうすれば救われるのであろうか?少なくとも、Aさんは、泣く思いで扉を空ける作業をしてはいけないと思う。もし、Aさんが扉を空けようと決めたら、もう悔しい思いを超えて、自らの選択した結果を大事に考えて欲しい。扉を空けるとする作業は、Aさんが選択したのである。
 
もろもろ、家庭の中の自分の立場のため、息子の学校のためにと、Aさんはあれこれ考えた末、自ら扉を空けることを決めたのである。
 
それでも、扉をあける作業で、不快感が高まるなら、空けなければ良い。それもAさんの選択肢である。
 
女性が家庭でそれほど我慢せず、居心地の良い空間や時間を作り出すことが、とても大事だ。相手の立場も、自分の選択も大事にしていけば、被害者的な感情からも解放される。それは、「私さえ、我慢すれば・・・」というものとは違う。
 
心の悩みは、体の症状につながっている。それは、薬も医者でも、解決できないのである。