いつも心に太陽を 社労士・行政書士で活きる

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実務経験がないまま社労士・行政書士で開業 一度きりの人生だもの おじさんになっても新たなことに挑戦してもいいじゃないか  

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日経新聞の5月30日朝刊記事より

『職場でのパワーハラスメント(パワハラ)防止を義務付ける関連法が29日、参院本会議で可決・成立した。働きやすい環境を整える狙いで、企業に相談窓口の設置や発生後の再発防止策を求め、悪質な場合は社名を公表する。厚生労働省はパワハラにあたる具体的な行為を明示する指針を年内にもつくるが、線引きは難航する可能性もある。』

 

【パワハラの定義】

社会問題として一般用語になっているパワハラだが、これまでは法律上の定義もなかった。平成24年に厚生労働省が『職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ』にてパワハラの定義を検討し、現在厚生労働省では、職場のパワーハラスメントとは、『同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為』と定義している。

 

厚生労働省ではパワハラの典型例として6類型を挙げている(これだけに限られるわけではない)

①身体的な攻撃

②精神的な攻撃

③人間関係からの切り離し

④過大な要求

⑤過小な要求

⑥個の侵害

 

※これまでは企業の自主的努力とされたパワハラ防止措置が法律上義務付けられる。具体的な措置は今後、厚生労働省のガイドラインにより明確化されるが、これまでの同省での見解を踏まえた内容となるだろう。法案の施行時期は大企業で公布日の1年以内、中小企業で3年以内とされている。

 

【パワハラ判例~ザ・ウィンザーホテルズインターナショナル(自然退職)事件(東京高判平25.2.27)】

第11回特定社労士試験問題のベースにもなった判例。

上司からパワーハラスメントを受けたことが原因で精神疾患を発症後、会社を休職し、その後、自然退職扱いとなったとして不法行為に基づく損害賠償及び現在も従業員の地位にあると主張して、自然退職後の賃金を求めて提訴した事案。

控訴審判決では精神疾患とパワハラの因果関係は認められないとして自然退職後の賃金請求は退けたが、個別具体的な内容については不法行為(民法709条・715条)を認め損害賠償150万円を会社と上司に命じた。

その個別具体的内容とは①飲酒強要(『俺の酒が飲めないのか』、部下嘔吐しても『酒は吐けば飲めるようになるんだ』等)②運転強要(体調が悪いと訴える部下に車を運転させる)③精神的苦痛を与える留守電やメール④休暇中の携帯電話への留守電(『ぶっ殺すぞ』という内容もあった)。

この事案では上司の立場を逸脱し許容範囲を超えていた点を認定した他に、業務時間外に行われた上司の行為であっても業務関連性ありとして使用者責任も認めている。会社はパワハラを訴えた部下に対し両者を隔離するなどの適切な処置を取らなかったので使用者責任は免れない、という論法はセクハラ裁判例と同様と考えられる。