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いつも心に太陽を 社労士・行政書士で活きる

実務経験がないまま社労士・行政書士で開業 一度きりの人生だもの おじさんになっても新たなことに挑戦してもいいじゃないか  

本日の講義内容は『労働関係の成立』と『賃金』について。

 

【三菱樹脂事件 最大判昭48.12.12】

法律の勉強をした者ならだれでも知っているであろう重要判例。労働法のみならず、憲法上も重要な論点を含んでいる(憲法の人権規定を私人間に適用できるか?~民法等の一般規定を用い憲法の理念を実現する間接適用説が現在も通説・判例)。

労働法上では思想・信条を理由とした採用差別の適法性(こちらも憲法上の問題はあるが)と、試用期間をもって解雇したことから試用期間の法的性質が問題となった。

採用の差別では現在は面接についてのガイドラインにより思想・信条を理由とした差別につながる事は聞いてはいけないことになっている。例えば尊敬する人(どこかの宗教の教祖とか)、どんな本が好きかとか、どんな新聞を取っているかとか聞いてはいけないらしい。判旨では使用者による経済活動の自由(憲法22条・29条)を根拠に、思想信条を理由とした採用拒否も当然に違法とは言えないとしている(間接適用するとした民法90条の公序良俗違反や民法709条の不法行為にも当たらないとした)。逆に言えば企業の採用の自由から応募者の思想・信条を調査しても問題はないと言える。

試用期間の法的性質については判旨では『試用期間中に管理職要因として不適格であると認めた時は解約できる旨の特約上の解約権が留保されているのであり~』として、解約権付留保契約という考えに立っている。

この判例に関連して、採用時にHIV検査やB型肝炎検査をすることはどうか?という問題提起があったが、これは未だ社会的偏見があるから許されず特段の事情(例えば医療従事者)でなければ行ってはならない。HIV感染を理由とした解雇は当然許されないが、判明した場合でも会社は人事担当者や社長が伝えることは許されず医療従事者が伝えなければならない。

 

【大日本印刷事件 最判昭54.7.20】

採用内定が争われた事例。この判例で印象的なのが内定を拒否した理由が『グルーミーな印象』との会社の言い分。

採用内定の法的性質については前述の三菱樹脂事件を受けて『解約権留保付採用』との考えを踏襲している。先生はこの判例で一番大事なところは判旨の最初の部分、『いわゆる採用内定の制度は、従来わが国において広く行われているところであるが、その実態は多様であるため、採用内定の法的性質について一義的に論断することは困難というべきである~』。つまり採用内定は解約権留保付採用としつつも、その性質については契約の解釈や両当事者の意思の合致による、としている。

どの時点で労働契約が成立するか?との問題に判旨は『採用内定通知により始期付・解約権留保付の労働契約が成立したと判断し~』としている。また解約権の行使については『留保解約権の行使は客観的に合理的で社会的通念上相当と是認することができるときに限り認められる』とした、例えば入社時までに学校を卒業できなかったような場合が該当する。この考えによると内定の辞令を受けてから就労の始期までの間に内定を取り消すと解雇となる。

この判例に関連して、採用の内々定の場合はどうか?。事案によるが内々定の時点で労働契約が成立するとした判例はない。もっとも内定の直前で内々定を取り消した『コーセーアールイー事件』では、始期付解約権留保付労働契約が成立したとは言えないとしながらも、採用プロセスから外れた会社の対応について損害賠償を命じている。

 

【三晃社事件 最判昭52.8.9】

退職金の性質について争われた判例。自己都合で退職した労働者が退職後、同業他社に就職したことにより退職金が2分の1とされた事例。退職金の減額、あるいは不支給については、就業規則に定め周知されており合理性があることが必要とされる。退職金の性質は①功労報奨的性格②賃金後払的性格を併せ持ったものと考えられているが、判旨では『本件退職金が功労報奨的な性格を併せ有することにかんがみれば、(競合する他社に就職したことを理由に減額することは)合理性のない措置であるということは出来ない』としている。

懲戒処分による退職金の不支給や減額についての判例では、これまでの功労を抹消するほどの重大な背信行為があった場合に減額した例や、非違行為により懲戒解雇を有効としつつも退職金の一部を支払った例がある。

なお、退職金の賃金後払的性格の強い退職金としてポイント式退職金(積立式退職金)というものもある。この場合は功労報奨的性格はない。前払いした人に返せとは言えないのが理由で、この場合は不支給や減額の処分を定めた就業規則は合理性がないとされる。

 

※その他、賃金についての判例では、賞与の支給日に在籍していない者には支給しないことを有効とした『大和銀行事件』。退職金の放棄の意思表示が有効(自由な意思に基づいて放棄した)と認められた『シンガー・ソーイング・メシーン事件』。退職金を自由な意思のもとに相殺したものとして賃金全額払いの原則(労基法24条1項)に反しないとした『日新製鋼事件』などを取り上げた。

 

本日の講義 テキスト『ケースブック労働法第4版』 P140~P170