こうして
全く受け入れ難いと思える
この様な不思議な現象と
直接、地井さん自身が
対峙しながらも、自問自答を
繰り返して居る間
方や私自身は、その少し前の
なんだか腑に落ち無い様な
地井さんの言動に対して
それこそ、全く不可解な事として
感じて居たのでした。

「へぇ…そうなのか…
誰も地井さんの赤ちゃんが
産まれて来る事を知らないのかぁ…
でも…それにしても変だなぁ…?
だって…子供が産まれるなんて、
ホントはお目出度い事だから、
普通だったら、知り合いには
大体、喜んで話すのになぁ…?
しかし…なんだって地井さんは
誰にも言わないんだろう?
ふ〜む…全く不思議だな…」

電話口のこちら側で
私がこんな事を考えて居る間
地井さん自身は、どうやら
先程の自分の中の困惑とは
どうやら、折り合いが着いたのか
または、それ以上に好奇心に
衝き動かされたのか、再び
私への質問を開始しました。

「も、もしかしてサ…お前には…
その…まだ産まれて無い…
つまり…これから産まれて来る
俺の子供の事なんかも…
分かったりするのか?」

「え?あ…はい…分かりますよ…」

「そ、そうか…そうなんだな…!
それじゃぁ…一応、聞くケド…
その…産まれて来るのは…
今度は…どっちなんだ?
男か…男なのかッ!?」

「ふ〜ん…なるほどね…
この産まれて来る赤ちゃんは
地井さんの二人目の子なんですね…
それに、最初の子は女の子だから…
じゃぁ、お姉ちゃんになるのかぁ…」

「お、お前は…ホ…ホントに、
産まれて来るのが二人目だって…
そんな事まで分かるのかッ!?
し、しかも…
最初の子が女の子だって…
本当に…その通りなんだゾッ!?
や、やっぱり…お…お前は、
本物の超能力者だったんだなッ!?」

「えーっ?…やだなぁ〜
…なに言ってんですかぁ?
そんなの、さっき地井さんが
自分で言ってた事じゃないですか〜!」

「え?…お、俺が…か?」

「そうですよ!
だって…ほら…
『産まれて来るのは、
今度はどっちだ…男か?』
って、なんか凄く真剣に
聞いてじゃないですか〜
…だから、地井さんが今度は
男の子を望んで居るんだなって、
私にも分かったんですよ…
それに、なんてったって、自分で
『今度は』って言ってたでしょ?
だから、そうなれば、
最初の子供じゃ無い事ぐらい
簡単に分かるワケですよ…
まぁ…とにかく…少し落ち着いて…
それにね、私が言った事に対して、
なんでも超能力だって、直ぐに
思い込まないで下さいよ、地井さん!」

「ぁ…あぁ…そ、そうなのか…
俺は…またテッキリ、お前が…
その…超能力とかなんかで
分かったのかと思ったんだょ…
そうか…俺が言った事だったのか…!
…いや…それでもサ…
さっき、お前は、確か…
産まれて来る子供の事が…
分かるって言ってたよな…?」

「はい、分かりますよ…
知りたいですか?」

「も、勿論だよ!
…分かるんなら、教えてくれよ!」

「えーと…それじゃ…
ぅ〜ん…あぁ…産まれた赤ちゃんが、
抱っこされてるのが見えますよ…」

「えーっ!ホ、ホントかッ!?」

「はい、可愛らしい…女の子ですよ!
それに…真っ白で…色白の…ホントに
地井さんソックリの赤ちゃんです…」

「おぉ…そ、そうか…女の子か!
…しかも…俺にソックリの…
色白の女の子なんだなッ !?
そうか…俺にソックリなのかぁ…」

「良かったですね、地井さん…!
それに…どうやら…
母子ともに無事の様ですしね…」

この後
地井さんは
少し黙ったままだったので
電話口の向こうで、幾分
感慨に耽って居る様な
様子が窺えて来ました。

ところが
その後直ぐに、地井さんは
ふと何かに気が付いた様に
また私に対して、再び
質問をして来たのでした。

「…サーコ…
お前サ…確か、さっき…
『いつかこの事を思い出したら、
もっと色々な事が出来る様になる』
とか…言ってたよな…?
それって…どう云う事なんだ?」

「え?…それは…
だから、そのままの意味ですよ?
つまり、私が今日、話した事…
この事を思い出せれば、
もっと凄い事が出来る様に
なるって事です…」

「…この事を思い出す?って…
何言ってんだよ、お前は…!
だって、思い出すもナニも…
さっきから、俺は今お前から、
この話しを聞かされてんだゾ?
なのに…いつかお前が思い出した時…
って、そんなの、変だろう?
全く理屈が通らないし、絶対に
そんな事、有り得ないじゃ無いかッ!?
大体サ、サーコ…その…
『いつか思い出す』ってのは、
一体、どう云う事なんだよ…!」

「えーとですね…それは…
つまり、忘れちゃうから…
思い出す必要が有るんですよ…」

「わ、忘れる…だとッ!?
…お、お前なぁ…いくら何でも…
ソレは無いだろう?
なに言ってんだよ、全く!
それとも…お前、ナニか ?
…もしかして…俺の事を、
からかってんのかッ!?」

「へ?…ゃ…やだなぁ〜…
そんなの、ち違いますよ…だって、
本当に、忘れちゃうんだから…
しょうがないでしょう…?」

「お前サぁ…そんな、いくら
『忘れちゃう』
って、言われたってな…
考えてもみろよ…?
だって…大体、こんな…
普通じゃ有り得ない様な事を
色々と聞かされたんだゼ…?
しかも…実際に、俺自身が
不思議な事まで体験したりしてサ…
だから、そんな簡単に、
そんな事を直ぐに忘れられる
ワケが無いだろう?
イヤ、イヤ…寧ろ絶対に、
忘れられ無いだろうがッ!?」

「う〜ん…だけど…不思議と、
それが、忘れるんですょね…」

「なんだよ…シブトイな、お前も…!
ふ〜む…それじゃぁ、聞くケドな…
一体、どの部分を忘れるんだ…?」

「ん?…えーと…多分…
今日の事、全部…ですかね…」

「えーっ?…な、なんだって!
…そ、それじゃぁ…なんだよ、今日、
お前と蒲田がココに来た事もか?
…もしかして…ソレは…さっきの
お前と卯月さんの事もなのか?
ホントに…何もかも全部なのかよ…!?」

「はい…全部、忘れるんです…」

「ィ…イヤ…だ、だけど、お前…
いくら何でも…卯月さんの事まで
忘れるなんて、有り得ないだろう…
まさか…そんな事…ウソだろう?
だってな、あんなに真剣に…
本気でお前の事を好きになってる…
あの卯月さんの事を、そんな
簡単に忘れてしまうなんて…
大体…お前にしたってサぁ、
そんなの絶対に無理な事だろうがッ!?
そ…それにサ…実は…俺には…
あの時の卯月さんとお前の事が、
全く羨ましいくらい…ホントに
二人は似合ってるなって…
そう思ってたんだゼ…だってな、
ほら…お前達はお互いの事を
本当に信頼してるし、それに…
本気で好き合ってるって事が、
俺にも凄く、よく分かったんだょ…
…だ、だからサ、こんな…
こんな大事な事まで忘れるなんて…
そんな…そんな事、言うなよッ!? 」

「んーー…でもね、地井さん…
そんな事、言っても…
私だけじゃ無くて…皆んなだって、
忘れちゃうんですよ?」

「え!なんだって?
そ…それは、ホントかッ!? 」

「はい…本当ですょ…
でも、皆んなが一緒に、この事を
同時に忘れてしまうのかどうか…
そこまでは…さすがに、私にも
分かりませんけどね…」

「ぅ〜ん…イヤ!
…それでも、俺は…俺だけは、
絶対に忘れないで居るゾ!
それでな、例え、お前が
忘れてしまって居ても、
今日の事を…イヤ、なんと言っても、
あの真剣な卯月さんの事や、
お前達の本気で真剣な間柄の事を
絶対に、お前に話してやるよッ!」

「…なるほどね…そうなのか……
地井さんは、そんなに…
そこまで、私や卯月先生の事を
思ってくれてるんですね…
本当に優しいんですね…
だけどね…多分、ソレは…
無理だと思いますよ…
だって、私が先に、
この事を忘れちゃったら…
多分、そうなるでしょうケド…
そしたら、そんな私自身が
全く覚えて無い様な事を、いくら
地井さんに教えて貰ったとしても、
先ずは…絶対に理解出来無いのは
当然だろうし…まぁ、それに
納得もしないと思うんですよね…」

「なんだよ?…お前は…俺が、
一生懸命に話しても無理だって…
ムダだって…そう言うのかよ?
…ふん…だったら、聞くがな、
お前が思い出すのはいつなんだ?
半年後…いや、それとも一年後か?
一体いつ、お前はこの事を
思い出すんだよッ!? 」

「う〜ん?…えーと…それは…
多分…30…歳…かなぁ…?
…もっと…?…いや…ぅ~ン…」

「えっ!なんだってッ !?
…30歳…って…10年も先なのかよ!
ま…まさか…ホントかょ…!
イヤ…な、なに言ってんだよ…
お前な、その頃には…卯月さんは、
既に40を過ぎてんだゾ…
その事を、分かってんのか?
まぁ…お前はまだ30だから、
少しは若いかも知れないケド…
でも、そんなんじゃぁ…
一体、卯月さんは、どうなるんだ?
ホントに10年もそのままなのかよ?
大体、それにだなぁ…
それから結婚するってったって…
そりゃぁ…そんなの…随分と
卯月さんが可哀想じゃ無いか…
そうは思わないのか、お前は… !?
だからな、サーコ、お前サぁ…
卯月さんの為にも…何とか、もっと、
早く思い出す事は出来無いのかよ…?」

「ぅ〜ん…多分…イヤぁ…
早く思い出すって云うのは、
まず無理だと思います…
だけどね、地井さんが、そんなに
心配してくれる気持ちは本当に
嬉しいし、有り難いんですケド…
でも…例え思い出しても
結局、私と卯月先生は…
結婚はしませんよ!」

「えーッ!な、なんでだよッ!?
なに言ってんだ、お前はッ!?
あんなに…お前達ほど真剣に
お互いの事を思ってて…
それでも、結婚しないって…
一体、どうして…なんで、
結婚しないんだッ!? 」

「つまり…それはですね…
卯月先生は、私じゃ無くて、
他の人と結婚するからですよ…
しかも、今度は、ちゃんと、
その相手の人と恋愛して
結婚するんですからね!」

「えーっ!ま、まさか…
ホ、ホントなのか、それは…?
それじゃぁ、お前は…
もしかして…お前の方も…その…
今の彼氏と結婚するのか…?」

「ん~~…多分…このまま行けば…
そうなるかも知れないですね…
でも…まぁ…どうなのかなぁ…?
まぁ、私の場合は…
その時にならないと、ちょっと
まだ分かりませんケドね…」

「そうか…それじゃぁ…
卯月さんもお前も、結局、
この今日の事を、全て忘れたまま、
お互いの事も思い出さずに、
ホントに、それぞれ別の人間と
結婚してしまう…って事か…
本当に、そう云う事なんだな…!
なんだよ…そうなのかょ…
でもなぁ、それでもサ…
俺としては…やっぱり、
なんか納得出来無いケドな…」

「でも…でもね、コレばかりは
仕方ない事なんです…
まぁ…いくら地井さんが、
私と卯月先生が結婚しない事を
そこまで残念に思ってくれてもね…
だって…初めから、そうなる事は、
決まって居た事だったんですから…」

「そ…そうなのか?
ホントに、初めから…
そうなるって…決まって居たのか !?
ふ〜む…そうか……決まってたのか…」

地井さんが
そう言った後、なんだか
電話口の向こう側では
まさに、ガックリと
肩を落として居る様な
そんな感じが窺えました。

しかし
それでも、この事自体が
『既に決まって居た事』
と云う、私の話しを聞いて
幾分、地井さん自身も
納得せざるを得ない事だと
感じて居た様でした。








続く…




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