こうして
この地井さんから
色々と不思議な事や
また、私や卯月先生との
親密な関係性の事などを
色々と話して貰って居る内に
ふと私自身にも不思議な事が
次から次へと起こった事を
思い出したのでした。

「…ぁの…ねぇ、地井さん…
そう言えば…実は今日…
蒲ちゃんと一緒に行った
舞島先生の葬儀の時に…
なんか…ホント、変な事が
有ったんですよねぇ…」

「…変な事?…って、一体
どんな事なんだ、サーコ?」

「実は、蒲ちゃんと2人で
お焼香の為に並んでた時に…
あ、それがまた…ホント、
小雨の降る中なのに
参列者の数も凄い数で…
しかも、列が何重にもなって
折り返す様な…まるで大蛇が
少しずつ移動して居る様な
そんな感じだったんですよね…
それで…私達が並んでる列の
中程ぐらいまで来た時に、
どこからかヒソヒソと、
なんか伝言みたいに声が
聞こえて来たんですよ…
で、それがなんと
『卯月先生の彼女が居る…
ここに来てる』
って言う声だったんで、
私も蒲ちゃんも、そりゃぁ
ビックリして…でも、もし
それが本当なら、是非にも
その彼女を一目でも見てみたい…
そう思って、勿論、そこに並んでた
皆んなと同じ様に、キョロキョロ
回りを見回してたんですよね…
ところが、暫くすると…
なんか、ホ〜ント…
全く不思議なんだケド…
気が付くと、私達の回りに居る
皆んなが、なんだか私の事を
ジロジロと見てるんですよ…
どうやら、私の事を…
まるで卯月先生の彼女だと
勘違いしてるみたいにで…」

「ナニ言ってんだょ、お前は!
そんなのは、ホントに
その通りだからだよ…
だから、皆んなが見てたんだよ!
だってな、サーコ…
お前達二人は高校生の時から
お互いに結婚しようと本気で
思って居た程なんだからなッ!?
そう云うワケだから、
卯月さんの彼女って云うのは、
勿論、お前の事に
決まってるだろう?」

「えーっ!? なんですか、ソレは?
…いや…でも、そんな事…
言われてもなぁ…
とにかく、私としては
ホント気味が悪いって云うか、
なんか居心地が悪くて…
それで、蒲ちゃんと2人で
列を前の方に押し進めながら、
早々その場から離れたんですよ…
でもね、まだ有るんです…
なんか、もっと不思議って云うか…
ホント…変な感じの事が…」

「ほ〜ぅ?…ソレは一体、
どんな風に変なんだ?」

「それがですね…私と蒲ちゃんは
それ迄はずっとお寺の中へも
入れずに、そのお寺の敷地の
外の列に並んで居たんだけど、
やっと、そのお寺の門から
中の敷地に入る事が出来た
と云う辺りで、それこそ、
お焼香の香りやお坊さん達の
御経の声も凄くハッキリと
分かる様な所まで辿り着く
事が出来たんで、私達も少しは
安心してたんですょ…
そしたら、なんだか前の方から、
並んで居るそこら辺の人達を
まるで掻き分ける様にして、
こっち…つまり、私達の方に
向かって来る人達が居たんです…
ところが、その人達はピッタリと
私の目の前で止まったんですょ…
それで、その人達と云うのが、
清水先生の他に何人か居て…
そしてなんと、その中の
一人と云うのが、舞島先生の
お母さんだったんです…!」

「え!ま、舞島さんの…
お母さんが…お前の所に
…来た…だって… !?」

「そ…そうなんですょ…
それが…またまた、
摩訶不思議って云うか…
ホント、全く奇妙な
事なんですケド…」

「な、なんだよ…サーコ…?
ソレで、一体…
何が起こったんだ?」

「ぁ、は…い…実は…ですね…
なんだか…その舞島先生の
お母さんが言うには、
舞島先生が亡くなる前に
『どうしても死ぬ前に、
一目、天田に会って“ありがとう”
とお礼が言いたい!』
と病床で言い残して居たと…
それで、亡き娘がずっと
果たしたくてもし切れ無かった
その天田と云う人に、是非とも
自分が会って直接お礼が言いたい…
と先生方にも頼んだらしくて…
それで、清水先生がワザワザ
私の所まで、そのお母さんを
連れて来た…
って、云う事らしいんですよ…」
 
「そうか…なるほどなぁ…
そう云う事だったのか…」

「はぁ?…なるほどなぁ…
って、地井さんまで…!
そんなの全然、なるほどでも
ナンデモ無いですよ…
大体、この私自身が
一体、何の事やらサッパリ
分から無いのに…しかも、
舞島先生のお母さんは、
私に会うなり、私の両手を
自分の両手でしっかり挟んだまま
涙ぐんで、まるで拝む様にして
何度も頭を下げながら、お礼を
繰り返してたんですからね…!」

「ふ〜む…そうだったのか…
それで?…その後は…
どうなったんだ?」

「そ、そりゃぁ…まぁ…
いくらなんでも、私自身が
全く身に覚えの無い事なのに…
しかも、こんな風にお礼を
言われたんじゃ、やっぱり
申し訳無いって云うか…ねぇ?
大体、この事自体が私の事じゃ
無いワケなんだから、
なんとも決まりが悪くって…
そこで、そのお母さんには
本当に気の毒だったケド…
『本当に済みませんが…それは
私の事では有りません!』
って、ハッキリと伝えたら、
可哀想に…そのお母さんは
さすがにガックリとした様子で…
それで…もと来た方向に
引き返して行ったんですよ…」

「な、何だよ、サーコ!
それは…そんなのお前の事に
決まってるだろうが!
大体、お前以外にサ…
他に誰が居るってんだよッ!?」

「そ、そんな…事言ったって…
私には、そのお母さんが
話してくれた様な…
そんな覚えなんか、
全く無いんですからねッ!
…ホントにしょうが無いし…
って云うより、全くどうしようも
無いじゃないですかッ!?」

「そ…それは…そうなんだけど…
でもな、サーコ…
これはな、ホントに全て真実で、
本当の事なんだゾ!
だから、その証拠に…
例えお前が覚えて無くとも、
今日、お前自身にはそう云った
不思議に思える様な事が
次々と起こってるんだからな…
これが事実じゃ無くて…じゃぁ
一体、何だって言うんだょ!」

「ぅ、う〜ん…そう言われれば…
確かに…その…これが…
皆んなが言ってる事の方が
ホントだとしたら…
それこそ不思議な事でも
ナンデモ無く、全て現実の事
として、辻褄は合うんだケド…
なんせ、こっちには全く、そんな
記憶が無い事だからなぁ〜…
だから…理解に苦しむのよねぇ…」

「いや…俺としては…
寧ろお前が、こんな
大事な事を何もかも忘れて
しまった事の方が、ホント
不思議でならんがなぁ〜?」

「え?…まぁ、そうか…
地井さんにしてみれば…
そう云う事にもなりますよね…?
あ、そうだ、スッカリ忘れてた!
それだけじゃ無かったんだヮ…
まだ、最後にも有ったんだ!」

「えッ?まだ有るのかよ!
そ…それで…今度は
一体、何なんだ、サーコ?」

「はい…今度は…実は、
やっと私達もお焼香を
済ませる事が出来たので、
そこで帰ろうと思って、
またもや出口に向かう列に
並んで居たら…
今度は、多分、以前から
顔見知りの男の先生達が、
何人か私達の行く手を阻む様に、
突然、目の前に現れたんですよ…
それで、なにやら私に対して
『別室の方に案内するから…
そこで、このお焼香が全て
済むまで、天田には待って居て
貰う様にと、卯月さんから
キツく命じられて居るから、
ここで暫く待ってる様に…』
とイキナリ言うので、ホントに
面食らってしまって…
でもその時は、多分コレも
卯月先生が私を誰か…
つまり、舞島先生の会いたがって
居た人と勘違いして、こんな
命令を先生達にして居たんだろう…
って、そう思ってたからなぁ…
それで、その別室の座敷で
お茶を出されたケド…
でも、そこで実際に
待ってる間に、再びお替りの
お茶まで出された後は…
なんだか…段々と不安にも
なって来て…だって、やっぱり
私自身は本物じゃ無くて…
人違いされた方の人間だから…
なんて思ったら、なんだか
居ても立っても居られ無い様な
気持ちになって来たんですょ…
そこで、蒲ちゃんにも
その事を話して、それで私達は、
黙ってサッサとそこから出て
帰って来た…ってワケなんです…」

「ふ〜ん…やっぱりそうか…
卯月さんはな…きっとお前と
会って話しをするつもりで、
それで、お前をその別室?に
案内させて、待たせて
置いたんだろうな…」

「へ〜!や…やっぱり、
そうだったのかなぁ〜?
じゃぁ、全部…今日の事は
ホントに私の事…だったのか…?」

「そうだよ、サーコ!
なんで、そこで、ちゃんと
待って居なかったんだよ!
そこで、もし卯月さんと
話しをしてたら…
お前だって…きっと、
その事を思い出したのに…
そうだ!きっと、まだ間に合うよ…
だからサ、今からでも、
その葬儀のお寺に行って…
それで卯月さんと話して来いよ、
なぁサーコ、絶対にそれがイイよ!
そうすれば、お前自身、
何もかもスッキリするし…
それにな…これで、やっと、
お前達二人がやっと一緒にも
なれるんだからサ…
俺は…実際、お前と卯月さんが、
ホント、純粋に真剣にお互いが
好き合って居るって事を
知ってるんだからな…
なぁ、悪いこと言わないから、
本当にそうしろよ、サーコッ !?」

「え?…ぅ~~ん…
あぁ…なんだか、地井さんに
そこまで言われると…
ホント、なんか私まで、
そんな気がして来たんだケド…
しかし…でもなぁ…」

そこで
私の脳裏にとっさに
浮かんだのは、もし仮に私が
その場所に再び戻ったとしても
卯月先生自体が、全く
地井さんの言って居た様な
その様な気持ちでは無かったら
どうしようか…と云った
不安や心配などでは無く
寧ろもっと現実的な思考…
つまり、ただ単純にもう
既に風呂まで済ませて居たので
今更、再び着替えたり化粧を
したりと云った支度をする事が
なんだか随分と面倒な気にも
なって居たと云う事でした。

そうなると
なんと気持ちの方も
大分落ち着いて来て、先程
地井さんの話しを聞いて居る内に
感じられた、なんだか思わず
興奮する様なワクワクとした
高揚感さえも次第に影を
潜めて居たのでした。






続く…







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