こうして
私が地井さんの
質問に答えると、地井さんは
その先を知りたい為か、直ぐに
再び質問をして来ました。

「サーコ、その理由…って…
お前がこの地球に
生まれて来た理由って云うのは、
一体、何なんだッ!?」

「…理由ですか?
…それは、つまり…この地球が、
このままでは、本当に
大変な状態になるから…です…」

「え?…本当に大変な状態…
って…一体、何だよ?
どう云う事なんだ?
まぁ…だけどサ…そんな事、
イキナリ、言われてもなぁ…
そもそも、大体…どうしてお前に、
そんな事が分かるんだよ?」

「それは、こっち…この地球に
生まれて来る前に…いずれ、
地球はそうなるって
教えられたからですよ…」

「へ?…教えられた?…
一体誰に、そんな事、
教えられたんだよッ!?」

そこで
私は出来るだけ
地井さんが理解し易い様に
私が見て聞いて来た事を
一つずつ話し始めました。

「その事を教えてくれたのは、
長老です…ほら、さっき私が
『地球人』じゃ無い仲間達の
話しをしたでしょう?
その中の長老が、その事を私達に…
仲間の皆んなに、説明しながら
教えてくれたんですよ…」

「えぇ!…ちょ、長老?…って…
お前…その仲間の中には、
長老なんかも居るのか…?」

「はい、居ますよ…
それで、その人が…いや、
人じゃ無いか…とにかく、
その長老が私達に、今後
この地球に起こる色々な事や、
その後の地球の事なんかを
教えてくれたんです…」

「そ、それで…その長老は、
この地球が、一体、どうなるって
言ったんだよッ!?」

「は…い…それが……
つまり、このままだと…
人間がいつまでも、このままだと、
やがて人類は3分の1しか
残らないだろうって…そして、
この前は『水』だったけど、
今度は『火』が地球を覆うから…
多分、それくらいしか
人類は残らないって…」

「え?…こ、この前は水…って、
ホントに、そう言ったのか?
…その…長老は…!
お前、それは…もしかして
大洪水の事なのか?
ホラ、あの『ノアの方舟』の事を
言ってるんじゃないのかッ!?」

「はぁ?…大洪水?
…ノ…ノアの箱・・?って…
何ですか、ソレは…?」

この長老の話しで
なんだか地井さん自身は
一気に興味をソソられたのか
更に興奮度が増した様でしたが
この当時の私には、この様な
地井さんの様子に就いては
全く見当も付きませんでした。

「ぉ、お前は…『ノアの方舟』
の事を知らないのか?
…ほら、キリスト教の聖書に
出て来る、あの有名な大洪水だよ!
なんだょ…ホントに
お前は知らないのかぁ…?」

「あ…はい…だって…
ウチはずっと仏教なんで…
キリスト教とか、聖書の事は…
余りよく分から無いんですょね……
まぁ…でも…確かに…なんか、
前にどっかで聞いた事が有る様な…
そんな気もしますケド…でも、
ホント、よくは知りません…」

「そうか…お前が、その大洪水の
話しを知らないんじゃ、
しょうがないよな…」

そう言うと
地井さんは電話越しに
聖書の中に出て来る
『ノアの方舟』の内容を
私にも分かる様に、
簡単に話してくれました。

「なぁ?…その長老が
話してたって云う、
『この前は水だったけど…』
って云うのは…やっぱり、
この『ノアの方舟』の大洪水の
時の事なんだろう?
…だって、お前…それしか
考えられ無いじゃないか!」

「ぅ〜ん…さぁ…その事は、
私にも、よく分かりませんケド…
でも…凄く大変な事だったと云う
事だけは、なんか分かりますょ…
だって、なんてったって
世界中が水に覆われたって
事なんですからね…!」

「あぁ、そりゃ、そうだろうな…
でも…そのお前の長老の話しだと、
なんだか…これからもっと、
凄い事になるんだろ?
なんたって、水なんかじゃ無くて…
今度はそれこそ、火が地球を覆う
って…言うんだからなぁ…
それが…もし、ホントなら…
そりゃぁ、人間なんて、
到底、生きてられ無いよな…」

「ぅ〜ん…いや、でも…
その前にも…まだ色々と
起こるんですよ…
それで…その為に、大分、
人間が死んでしまうんです…
だって、火が地球を覆うのは、
最後なんですからね…」

「えッ!な、なんだってッ!?
その前にも…まだ何か
色々と起こるんだと?
そ、それで大分、人間が死ぬって…
ソレは一体、何なんだ?
どんな事が起こるんだよッ!?」

「えーと…それはですね…
先ずは、世界中の各地で
争い事が起こって…それから
紛争とか戦争なんかが始まって、
それと同時に、地震や噴火、台風、
津波などが起こるんですけど…でも
それが今迄とは、全く比べ物に
なら無い程の凄い規模や威力の
天変地異なんです…」

「ナニッ!?…せ、戦争って…
第三次世界大戦の事か?
ま、まさか…本当に…
そんな事が起こるのかょ…?」

「いえ、まだ有りますよ…
それらの戦争や天変地異と同時に
人々が病気になって、皆んな
次々に死んでしまうんですよ…」

「え?…病気…?
…死んでしまう病気って、
もしかして…癌の事か?」

「癌?…いえ、そんなのは、
薬で治る病気ですからね、
だから癌では死にませんよ!」

「な、なに言ってんだよ、お前は!
…癌は治らない…死ぬ病気だろう!
だから…舞島さんだって…
助から無いんじゃないのか?
だって、半年の命なんだろうッ!?」

この『癌が治る病気』だと云う
私の話しを聞いた途端に
地井さんが、まるで怒りを
ぶつけるかの様に、私に対して
食って掛かって来たのも
仕方の無い事でした。

当時としては
不治の病として
人々から恐れられて居た
この癌自体が、この地井さんと
親しくして居た舞島先生の
体中を蝕んで居たのは
実際、事実だったのでした。

「そうか…そうですね…
今はまだ、癌は死んでしまう
病気なんですょね…」

「そうだよ、だけど…
癌じゃ無いなら、それじゃぁ…
その病気ってのは…
一体、どんな病気なんだ?」

「はい…その病気はですね…
空気で感染するんです…
しかも、その病気になると、
内臓が溶け出して、体中の
穴からは血が噴き出して、
そして、死んでしまうんです…
ホント、恐ろし病気なんですよ…」

「ホ、ホントかよッ!?
もし…そんな病気にでもなったら、
そりゃあ…当然、死ぬよなぁ…
でも、実際、本当に…
そんな病気が有るのかょ…?
そんなの聞いた事も無いゾ…!?」

「まぁ…多分、存在はして居ても、
まだ表には、出て来て無い
だけじゃ無いのかなぁ…?
だって…もし、そんな病気が
初めから存在しないなら、
長老がワザワザ私達に
そんな話しをする理由も
無いワケですからねぇ…?」

「ふ〜む…そうか…なるほどな…
まぁ、だけどな…やっぱり
そうは言っても、そんな簡単には
信じられん話しだよな…」

長老が教えてくれた
この様な、まさしく本当に
恐るべき病気は、まるで1976年に
初めてアフリカで発生した
エボラ出血熱の症状の様ですが
しかし、この当時1979年現在の
私達にはとっては勿論の事
そして、恐らく専門家以外の
他の人々にも殆ど、この病気…
エボラ出血熱の事は、多分
知られては居ませんでした。

ところが
それから約20年後の1995年
ダスティン・ホフマン出演映画
『アウトブレイク』が各地で
上映された事により、その存在が
人々にも知られる事と
なったのでした。

そして
地井さん自体が
この様な世にも恐ろしい
今までに、全く見た事も
聞いた事も無い様な、まるで
得体の知れない病気に対して
懐疑的になるのも
無理は有りませんでした。

「とにかく、地井さん…
それで、結局…最後には
この地球自体が火に覆われて、
その後に生き残った人類が
3分の1になってしまう…
と云う事なんです…!」

「ん~…ソレって、ホントなのかよ?
だけどな…もし、ソレが…
仮に本当だったとしても…
そんな事になるんじゃ…
もう…俺達、地球人には
どうしようも無いじゃないかッ!?」

「そうでしょう?
地井さんも、そう思うでしょうッ!?
だから…それだからこそ…
私はこうして、この地球に
生まれて来たんですよッ!?」

「はぁ!?…お前…ナニ言ってんだよ!
お前だって、地球人なんだから、
ココに居たら、結局は
俺達と一緒に死んじゃうんだゼッ!?
それともナニか?…まさか…
その時になったら、お前の事を
その宇宙の仲間かなんかが
迎えにでも来るってのか?」

「えい…ソレは無いです。
でも…いつか私が…
この事を思い出した時には、
私自身がもっと色々な事が
出来る様になるから…
そうしたら、きっと皆んなを
助ける事が出来るって…
そう思って、こうしてココに…
この地球に生まれて来たんです!」

「え?なんだよソレは…?
『もっと色々な事が出来る様になって、
皆んなを助ける』…ってのは…
もしかして…アレか?
なんだ…その…テレパシーとか…
そんな様な…例えば、超能力…
とかなんかの事を言ってんのか?
お前サ、言っちゃぁなんだけど…
だけどな…ホントに、本気で、
そんな事で、この地球上の人類を
救えると思ってんのかょ?
大体…その、色々な事が出来る様に
なるってのは…例えば、一体、
どんな事なんだよ、サーコ?」

「ん〜…それは…えーと…
人とか…相手の事とか…例えば、
病気とかが分かったり…」

「あぁ!…ソレって、お前が…
舞島さんの病気の事を
分かったりした事か?」

「そうですね…でも、それ以上に、
そんな病気とかも治せる様に
なるんですよ…多分…
でも…今はまだ、私自身に
そこまでの能力が無いから…
舞島先生の癌を治す事は
無理なんです…残念だけど…」

「えーっ!…な、なんだって !?
…そんな、病気まで…癌まで
治せる様になるってのかよ!
そ、それで、他には…例えば…
どんな事が出来る様になるんだ?」

「ぅ〜ん…他にですか?
そうだなぁ…例えば…未来の事とか…
多分、これからその人に
起こる様な事とかですかね…」

「ぇえェ !?…ホントかよ、それじゃ
本物の超能力者みたいだな!
だけど…ソレは…ちょっとなぁ…
いくら何でも信じられんなぁ〜
…ん?…そうだ、それじゃぁ…
試しに、この俺の事はどうだ?
もしも、なんか分かる事が
有ったら言ってみな!」

「はい、いいですよ…
ん~…地井さんねぇ…そうですね…
あぁ…女の人が見えます…多分、
この人は地井さんの奥さん?
…だと思いますケド…
そうか…もう地井さんは、
結婚してるんですよね?」

「ぇ?…あ…あぁ…うん…
そうだよ…結婚してるょ…
で、でも…一体、なんなんだぁ?
まさか、お前には…その俺の女房が
見えてるってのか?」

「はい…ハッキリと見えてますよ…
今、その奥さんが座敷で座ってる
姿が見えてるんですケド…
ふ〜む…でも…奥さんのお腹が…
なんだか大きくなってるのが
見えてるんですよね…
はぁ〜…そうか、分かった!
奥さんは妊娠してるんですね…」

「ぅ゙ッ!…な、なんで…
お前に、そんな事が分かるんだ?
…お前…ホントに…
ホントに見えてんのかッ!?」

「勿論ホントに見えてますよ…
それに…奥さんは…
可なり大きなお腹だから…
そうか、きっと臨月なんですね…
地井さん、もう、そろそろ
赤ちゃんは生まれて来ますね!」

「ほ…本当に…お前、見えてんだな…
だ…だって…俺は、それこそ…
女房が妊娠してる事や…
もうすぐ子供が生まれるなんて事…
誰にも話して無いからな…それに…
今日、ココに居た連中にでさえ、
その事に就いては一切、
一言だって話して無いしな…
勿論、成ちゃんにもな…!
だから、絶対に有り得ないんだよ!
そんな…お前が…本当に
全く何も知らない筈のお前が…
俺の女房が今、妊娠してる事や、
しかも、もうすぐ子供が産まれる
なんて事まで知ってるなんて…
そ、そんな事…断じて、絶対に
有るワケが無いんだよッ!」

地井さんは
こう言いながらも
動かし難い地井さん自身の事実…
それを、全く知り得る筈の無い
電話口の向こう側に居る
この私によって、まさに見事に
言い当てられた事で、恐らく
完全に動揺してしまったのでした。

そして
最初から聞かされて居た
この時の私自身には
『人に起こる事が分かる』
と云う、如何にも尋常では
無い様な事が、その場の
地井さん自身にも実際に
起こった事で、さすがに
衝撃の余り、とっさには
どんな理解も判断も出来ず
ただ、ただ必死に抵抗しながら
その現象を有り得ない事として
否定して居るだけなのでした。

ところが
そうは言ったものの…
地井さんが自分自身で
現実に経験した、この現象は
やはり、否が応でも事実として
受け入れざるを得ないと云うのが
この時の地井さんの本心では
よく分かって居た事でした。





続く…




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