蒲田のこの様な
まるで告発の様な発言に
直ぐ様、卯月先生が
反応しなかった事に対して
蒲田自身は、きっと卯月先生も
自分と同じ様に驚き、唖然として
しまったのだと思った様でした。

「…あの〜…先生……
そんな事…って……やっぱり…
有り得ないです…よね…?」

「ん?…あ…、あぁ…そうだな…蒲田…」

「そうですよね、先生!
ホント…全く……そんな…
ソコの準備室に、
地井さんが居るワケ…なんて
無いですよねぇ〜、先生?
ほら…ね、サーコ…!
やっぱり、地井さんなんて、
居なかったじゃ無い !?」

「ぅん゙~~ン………でも…なぁ…」

この様に
蒲田は取り敢えず
卯月先生からも確認を
取る事が出来た事で
まさに自分の正しさが
証明されたと言わんばかりに
まるで勝ち誇ったかの様でした。

すると
その側から卯月先生が
質問し始めました。

「う〜む…だがな……
どうして…そう思ったんだ…?
一体、それはどう云うワケで、
そんな事が分かったのか、
言ってみろ、蒲田!」

「えッ!? …どうして…
そんな事が分かったか…?…ですか?
…と…云う事は…あの〜…つまり…
どうして地井さんが居る事が
分かったのか…って云う事ですか…?
えーっ!?…そ、それって…
もしかして…じゃぁ…
やっぱり…その準備室には、
地井さんが居るって、
事なんですかッ !?…先生!」

「う…い、いや…
そ…そうでは無いゾ、蒲田…
お、俺は…そんな事は言っとらん…!
それは…ホレ…この俺の…
タダの言い間違いだ!
…だ、だから…つまり、
俺が聞いて居るのは、だな…
どうして、そんな事が
分かるのかって、事だッ!
ふん、…そんな事はいいから
それよりも、今、俺が聞いた事に、
早く答えんか、蒲田!」

この様に
卯月先生から放たれた質問には
些か不審感を覚えた様な
蒲田でしたが、それでも
直ぐに卯月先生から
その事の訂正がされ、しかも
更には、威かす様に返答を
催促された事で、蒲田自身に
浮上して居た先程の不審感は
一遍に消え去ってしまいました。

「え!?…あ、あのォ…そんな…
私に…答えろと言われても…」

「おン?…何だ、蒲田ッ!
お前は、そんな…
自分でも答えられん様な事を、
さっきから、言って居ったのか !?」

「ち、違います、違うんですよ、先生!
ソ、ソレは…つまり、ここに居る…
天田さんが、言った事なんです……
だ、だから…私自身だって…
大体、なんで天田さんが、
そんな事、言ってるのか、
ホント、全く分からないんですよ…
それに、この私にしたって…
そんな事、絶対有るワケ無いって…
勿論、思ってるんですからね!」

ここで初めて
蒲田は自分の考えと
卯月先生は同じだと云う事を
アピールして居たのでした。

「それじゃぁ…ナニか…?
その様な事を言って居るのは…
お前では無く、この天田だと
言うのか、蒲田?」

「ぁ…はい……そうなんです…」

「ほぉ〜…!?」

この蒲田の返事を聞いて
驚きと共に、卯月先生の眼の奥が
まるでイタズラっ子の様に
微かにキラッと輝くと、それこそ
なんとも嬉しそうな顔付きで
舐め回す様に私を見ながら
質問をして来ました。

「ゥオッほん!…では、天田…
改めて聞くが…どうして、お前は、
そんな事を言ったんだ?
…その理由とは、一体、何なんだ !?
…ちゃんと答えてみろ、天田!」

「へ?…理由ですか?
んーー…そう言ってもなぁ……
まぁ、言ったところで、
多分、皆んなには…
理解出来無い事ですから…」

「そ、そんな事は…言ってみなければ、
分からんじゃ無いか !?
…それともナニか?
お前は、理由も言えん様な、
そんな、適当なデタラメを
言って居ったのか?」

「へ?…まさか…そんな…
幾らなんでも、
久しぶりに来た母校で、
しかも、卯月先生を相手に、
例え冗談だとしも、
そんな馬鹿げた事…言ったり
するワケ無いじゃ無いですか ?!
…それに、大体コレには、
それなりに、ちゃんとした
根拠だって有りますしね…」

「な、なんだと !?
…そうなのか、天田 …?
…だったら、そんな
四の五の言っとらんで、
その根拠とやらを、
早く聞かせてみてくれ!
俺はな、どうしてお前が
そう思ったのか、そのワケを
是非とも、聞いてみたいんだ!
だから、遠慮せずに話してくれ!」

先程の
半ば威しの様に
蒲田に質問した時とは
打って変わって、卯月先生は
まるで私に対しては
宥めたりすかしたりしながら
畳み掛けて来たのでした。

「そうですか……それじゃぁ、
私が、何故この様な事を
思ったのか?
…と云う、その切っ掛けから、
先ずは、最初に話しますね…
それは…つまり、卯月先生自身の
今日の様子や、ちょっとした
態度などに、時折、違和感を
感じた事からなんです…」

「な、何だと!?…この俺…のか?」

「そうです…まぁ、簡単に言えば…
いつもの先生とは、なんだか違う
感じがする事に疑問を感じて、
その原因を探って行ったら…
そう云う答えに辿り着いた…
と云うワケなんです…」

「ふ〜む…しかしだな………
幾ら…と云うワケなんです
…と言われてもな…
これじゃ全く、なんの事だか、
サッパリ分からんなぁ……
もっと、俺にも分かる様に
説明してくれんか?…天田…」

「ん~…そうですか……それでは…
先生の何がいつもとは違って居て…
つまり…まぁ、変だったのかを
説明するとですね…
それは…私達が先生の質問に答えると、
先生はその私達の答えた言葉を
背筋を伸ばして、顔は斜め上向き
加減にしながら、しかも
大き目な声でオウム返しの様に
繰り返して居たんですよ…
こんな変な事が、何回も有れば、
さすがに可怪しいと思いますよ…
なので、私としても、当然、
その理由が何なのか、
探り出したくなったって
事なんです…」

「ほぅ…なるほど…?そうなのか……
天田は、俺が、そんな風に
して居ったと言うのか…?
ふ〜む……しかしだなぁ……
おぉ、そうだ…蒲田!
お前は、どうだ…どう思うんだ !?」

「え?…私ですか?ん~~……
…そう…言われてみれば…
確かに、そうですね…やっぱり…
天田さんが言ってたみたいな…
そ〜んな感じでした…かね…」

「う〜む…そうか…蒲田…
お前まで、そう思うのか……
だがな、そう言われてもなぁ……
大体、この俺自体は、
自分がそんな風にしとるとは、
全く、気が付かんかったゾ…!?」

「えぇまぁ、そうでしょうね……
だって、もし知ってたら…
勿論、当然そんな事は
する筈が無いですからね…
多分、無意識の内に
して居たんだと思いますよ…
だから…そこなんですよ!
つまり…一体、先生がなんで、
そんな不自然な姿勢をしながら
しかも、ワザワザ私達の答えを
繰り返して居るのか…
と、その理由を考えたんです…
そしたら、考えられる事は、1つ…
先生はきっと誰かに、
その私達の答えを聞かせる為に、
ワザワザして居たんだ…
と言う事だったんです!」

「ほほぅ!?…それはまた…
面白い事を言うな、天田は…!
…それで?…それでどうしたんだ?」

「…はい…それで、ですね……
勿論、最初は先生が、
誰に聞かせ様として居るのか、
全く分かりませんでした…
でも、その誰かが、どこに
居るのかって事は分かったんです…
つまり、それが、
ソコの準備室って事ですよ…」

「ほぅ……それで…?」

「それで…ですね…次には…
一体、誰がソコに居るのかって、
考えて居たんです…
ところが…そう考えて居る内に、
先生は、私が先生以外にも色々と
分かる様だと云う事を知ると
今度は自分以外の他の
教師達の事に就いて、次々と
名前を挙げ出して、それぞれ
私に答えさせて居たんですが、
最後の方になると、私達が全く
知らない様な、私達の卒業後に
入って来た先生の名前まで
言い出したんですよ……
そこで私は再び、どうして
先生がそんな有り得ない様な事を
言い出したのか、その原因を
考えてみたんです……まぁ、
コレは先生の性格を考えれば、
直ぐに分かる事なんですが……
つまり、先生がそれまで
私に答えさせる為に
名前を連ねて来た教師達は、
先生自身がその場で
想像した様な、偶然的に
考え付いた人達では無く、
既に、皆んなこの場に存在する…
要するに、ソコの準備室に居る
人物の事を、それこそ先生が
一人ずつ頭に思い浮かべながら
思い出しては名前を挙げて、
私にその人達に就いての事を
聞いて居たって事です…」

私が
そこまで話し終わって
卯月先生の方を見てみると
よっぽど驚いたのか、卯月先生は
目を見開いたままでしたが
それでも、私の事を
まるで睨むかの様に
じっと見据えて居ました。

すると
卯月先生と一緒に
私の話しを聞いて居た蒲田が
如何にも訝しそうな感じで
横から顔を出しました。

「全く…
サーコの話しを聞いてると、
一瞬、ホントの事かと
思っちゃうワよ!
…だけどサ、先生だってさっきから、
そんな事は有り得ないって
言ってんだからサァ…
ねぇ〜、そうですよね、先生!」

「ん?……あ…あぁ、そうだ…な……
全く…蒲田の言う通り…なんだが…」

「へ?…なんだが…って…先生、
…私が言った事以外にも、
何か有るんですか…?」

「いや…別にそう云うワケでは無く……
ただな…天田が、よくそこまで…
そんな事まで、分かるもんだと…
本当に、俺は感心して居ったんだ!」

「え?…分かる?…感心した?…って……
コトは…それじゃぁ…先生!
…やっぱり…あの…それは…つまり、
サーコの言った事は…まさか
本当の事だって言うんですか !?」

「イ、イヤ、違うゾ、蒲田!
…俺は、そう云う積もりで、
言ったんでは無いゾ!
つまり…だ…ココに居る天田がな、
よくそんな事まで考えられる…
思い付くもんだと、
感心して居っただけだ!」

「な〜んだ…そうだったんですか…?
でも、アレですね、先生…
やっぱり、本を沢山読んでると、
不思議な事を思い付いたり
想像力が凄く付くって
事なんですかねぇ〜?」

「ん?…お、おぉ…そうだな、蒲田…」

「アハハハハㇵ…なるほどねぇ〜
想像力が付くって云うのは、
本当かも知れないですケドね…
でも…但しコレは、
想像上の事じゃ無いですよ!
ちゃんと、それなりの根拠も有るし…
大体、先生の不可解な言動と云う
現象として、しかも実際に目の前で
起こってる事ですからね…」

そこで
再び蒲田は、私の考えに
異論を唱える様に続けました。

「だから、そんな事……
幾らサーコが、想像や
思い付きじゃ無くて、ちゃんと
根拠が有るって言ったってサ、
そんなの…さっきから先生だって、
違うって言ってるんだし……
大体サァ〜…そんな事よりも、
今、問題にしてんのは…
そもそも、サーコ自身が、
ソコの準備室に…
『地井さんが居る』
なんて、突然、言い出だした
からなんだからサァ…
ソコんところを、もっと
ちゃんと説明して貰わ無いとね!」

「おぉ、そうだったな、蒲田!
…天田、どうなんだ?
…どうして、お前は、ソコに…
地井さんが居ると思うんだ?
…さぁ、そのワケを
ちゃんと、話してみろ!」

こうして
私は蒲田と卯月先生からは
完全に異端視され、まるで
吊るし上げられる様に
問い詰められたのでした。


続く…



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