ツッパリ仲間達から
誘われて居た
超豪華版の
ディスコパーティーが
週末に終わり
次の週初めになると
学校では
ツッパリ連中が集まっては
その時のパーティーの話しで
持ち切りとなって居ました。

そのパーティーに行った
仲間の子達は
皆んな口々に
その規模や音響の良さ
また、選曲の素晴らしさにも
感動した様でした。

そして、何よりも
そのパーティーに
来て居た人達が
皆それぞれ、モノ凄く
スタイリッシュだった事に
嬉々として居ました。

勿論、そのパーティーには
素晴らしいディスコダンスを
披露する人達も沢山
集まって来て居たので
私の仲間達は、皆んなこぞって
ディスコダンスを満喫し
満足仕切った様でした。

「ねぇ~? ホント、サーコも
来れば良かったのに〜!」

「そうだよ、もうホント
凄かったんだから〜!」

「そうだよ、サーコ
何で来なかったの ?!」

「ぇ……? あぁ…まぁね、
お金無かったから……」

「だからそんなの、
あたしが貸したげるって、
電話でも言ったのに……」

「ぅ…ん、ありがとう。
でもサ、やっぱ
返すアテも無かったし……」

「そんなの気にしなくたって、
返すのなんか
いつでもイイのに……
そんな事より、あたしは
サーコが来れなかった事の方が
よっぽど残念だったよ!
一緒に来れたら
本当に良かったのに……
ホント、すっごく
楽しかったんだから!」

「本当だよ、サーコ、
あんな凄いパーティーは
このあたしだって
初めてだったからね!」

「へぇ〜?
咲江がそれ程まで言うなら、
そりゃ、
相当なモンだったんだね……
なんだかサァ、
皆んなの話しを聞いてたら、
今頃になって、ものすご〜く
行きたくなったヮ〜 ?! 」

「アハハハハ、そうでしょう?!
だからあんたも
来れば良かったのに……
ホントに可哀想だね、サーコは……
まぁ、
今回は運が無かったケド、
次回は絶対に
無理しても来なよね!」

「うん、そうだね。」

こうして
仲間達は私に
そのパーティーの素晴らしさを
一生懸命に説明しながら
そして、また何よりも
私がそのパーティーに
行けなかった事を
本当に残念がって居たのでした。

そして
この大盛況だった
パーティーの話題も
日を追うごとに
仲間達の間では
段々と下火になって
来て居ました。

しかし
丁度その頃に
考えもしなかった様な
私達にとっては、重大事件が
とうとう起こったのでした。

その事件とは
学校側が
そのパーティーに行った
生徒達を探し出して
実際に誰が行ったのかを
徹底的に調べ上げて
その生徒達を処分する
と云うモノでした。

それは
まるで一斉検挙でも
行う様な勢いで
一人ずつ当りを付けて
呼び出しては尋問すると云う
暴挙に出たのでした。

勿論、生徒達がその様な
パーティーに参加する事自体が
そもそも立派な校則違反なので
学校側のして居る事には
何も文句を言えた義理では
有りませんでしたが、しかし
この様なパーティーなどの件で
こんな大々的に
捜査が行われた事は
今までかつて
無かった事でした。

学校側の
この一見
魔女狩りの様な調査は
直ぐにもツッパリ仲間の間で
持ち切りになりました。

それは
この件が、当然ながら
風紀委員の顧問である
……まるで憲兵の様な
厳格な卯月先生が
取り仕切ると云う事が
分かって居たからでした。

この卯月先生と云うのは
普通の教師とは
なんとなく
どこか違って居て
何を考えているのか
分からないと云った
感じのする先生でした。

この学校では
毎週月曜日の朝には
校庭に全校生徒を集め
学年とクラス毎に整列させて
全校生徒と全教職員による
朝礼が行なわれる事に
なって居ました。

しかし
静かに整列して居るのは
教師達の顔が並ぶ列に
対面して居る最前列辺りの
生徒達だけで、後は
殆どの生徒達が周りと
お喋りをして居ました。

そしてまた
夏休み明けの朝礼ともなると
久しぶりに再会する
クラスメートとの話題は尽きず
増々お喋りにも花が咲いて
終いには朝礼だと云う
自覚さえ無くなって
段々と、話す声も大きくなり
また笑い声や奇声を上げる
生徒達も出て来て
殆ど収拾が付かない様な
状態になりました。

教師がマイクで注意を促すと
一時的には静かになりますが
暫くすると、また直ぐ元の
カオス状態に戻る
と云った状況の中で
朝礼は行なわれ、いよいよ
朝の挨拶の為に校長先生が
朝礼台に上がって来ても
生徒達のお喋りの嵐は
一向に止む事を知らずに
校長先生もやむを得ず
一時的に朝礼台から
降りて来る程でした。

すると
その様子を
脇でじっと見て居た
卯月先生が、おもむろに
朝礼台に上がって来て
暫くの間
ただじっと黙ったままで
前方に広がる生徒達全体を
見渡して居たのでした。

その間、卯月先生は
何も一言も発する事は無く
また、後ろを向いて
お互いの話しに
夢中になって居た生徒達には
その様な朝礼台の上の
卯月先生の存在さえ
気付かずに居たので
生徒達のお喋りは
全く止むことが
有りませんでした。

ところが
この様に、いつまで経っても
何も言わずに、ただじっと
前方を眺めて居るだけの
まるで普通の教師とは違う
卯月先生の
尋常とは言い難い様子に
気付いた生徒達が
次第に周りの生徒達にも
合図を送ったりして居ました。

「ねぇ、卯月先生が朝礼台の
上からこっち見てるヨ!」

「え、何で?……卯月、
いつの間に朝礼台に
上ってるじゃん!」

「ホントだ……でもサ、
何でじっとしたままなの?
何で、何にも
言わないんだろう……?」

「……って言うかサァ〜
生徒達にも全く注意しないし……
一体、あそこで何をやってんだ ?
卯月は…?」

「…う〜ん ?……だいたい、
何を見てるんだろう?
まさか、誰かを探してるとか?」

「そりゃ〜、きっと、
うるさく騒いでるヤツを
見つけ出そうと
してるんじゃ無い?」

「それにサ、卯月……
さっきっから、ずっと黙った
ままなんだケド…
ホント、なんかちょっと
マズく無い…?!
って云うか、恐くない ?!」

「やっぱ ?!
そうだよ、卯月は
きっと怒ってるんだよ…!」

「ひぇ~?! 
卯月を怒らせると
マズいよ、絶対……!」

「しッ!……あたしらも、
もう話すの止めた方がいいよ…」

こうして
生徒達が互いに
話しを止める様に促すと
次第に生徒達の話し声は
聞こえ無くなくなりました。

しかも
最終的には
卯月先生のこの様に無言で
しかも無心の様な
直立不動の佇まいが
この校庭に居た全校生徒や
全教職員に対してさえ
とうとう息をするのも
阻まれる様な静寂を促して
その結果
学校中がまるで水を打った様に
シーンと静まり返ったのでした。

この様な
静かな生徒達の様子に
納得が行ったのか、卯月先生は
直ぐさま踵を返して
朝礼台を下りると
校長先生に向かって
「校長、どうぞ。」
と静かに声を掛けて一礼をし
校長先生が
朝礼で挨拶がし易い様に
ベストな状態を
創り上げたのでした。

この日の朝礼は
この後もずっと穏やかな
静けさの中で最後まで
進められて居ましたが
その間も、マイクを持って
話しをする人以外は
誰一人として
言葉を発する者は
居ませんでした。

この様に
その場に居た全員が皆
なんだか良く分からない
まるで魔法にでも
掛けられた様な、明らかに
目では見え無い何かが
作用して居たのを
感じて居たのでした。

卯月先生は
外見的には普通の
体育教師でしたが
その得体の知れ無い
カリスマ性により
この学校では
最も影響力の有る教師として
生徒だけでは無く
他の教師達からも
一目置かれる存在でした。

また不思議な事に
ツッパリ連中でさえ
この卯月先生に対しては
楯突くと云うよりは、寧ろ
大人しく従うしか無いと
観念させられる様な
独特の威厳と風格を感じて
この先生の口数少なく
しかも竹を割った様な性格に
ある意味では
尊敬の念さえ抱く者も
少なからず居ました。

そこで、この様な
卯月先生の取り調べを
受ける事になった
ツッパリ連中の皆んなは
一様に怯えてしまい
自分達の行く末に対しても
不安と恐れを抱いて居ました。

そんな中で
先ず筆頭に尋問の
呼び出しを受けたのは
ツッパリ仲間の大将の様な
立ち位置の咲江でした。

その後からは
あのパーティーに行った
仲間達は次々と芋ずる式に
一人残らず呼び出されて
尋問を受けて居たのでした。

こうして
一応、全員の尋問が終わって
シンミリとはしながらも
皆んながそれぞれ、少しは
落ち着きが戻って来た、まさに
その時、どう云うワケか
私も呼び出しを受ける事に
なったのでした。

これを聞いた仲間達は
皆んな驚きと怒りを
露わにして居ました。

「大体、何でパーティーに
行って無いサーコまで、
呼び出されるワケ ?! 」

「そうだよ、
そんなの可怪しいヨ!」

「だってサ、
サーコはこの間まで、
あたし達と一緒に
あのパーティー行けなかったの
本当に残念がってたのにねぇ ?! 」

「そうだヨ、サーコ!
ホント、何であんたまで
卯月に呼び出し食わなきゃ
なら無いのヨ……
全く、あたしらは
納得出来無いヨ!」

「そうだよねぇ……サーコは
あたし達とは違って、
本当に行って無いのにサァ、
こんなの濡れぎぬだよね……?!」

「ホント!
サーコは無実なのにサ、
こんなの絶対に変だヨ!」

「……う…ん。
……皆んな、ありがとね。
まぁ、きっとなんかの
誤解だとは思うケド……
とにかく、呼び出してる
卯月んとこ行って
話して来るからサ……
皆んな、心配してくれて
サンキューね!」

こうして私は
仲間の皆んなの心配を背に
卯月先生の呼び出しに
応じるべく
教室を後にしました。

この時の
私の心境は
一抹の不安を抱えて……
と云うよりも
寧ろ、敢えてこの事態の
真相解明に乗り出して行く
と云った様な、または
こんな単純なミスを犯す
学校側を糾弾しよう
と云った考えさえも
密かに巡らせて居たので
なんだかゾクゾクとした
武者震いさえ感じて
居たのでした。

指定された時刻通りに
5時限目の始まりの
ベルと共に職員室に行くと
卯月先生は
私を職員室の隣の資料室に
連れて行きました。

この部屋は
教師や生徒達が
常に出入りして居る
職員室とは違って
普段は誰も使用して居ない為に
外界から閉ざされて居る様な
まるで時間や周りの空気までが
止まってしまった様な
ある種、不思議な異空間に
感じられました。

このヤケにひっそりと
静まり返って居る
資料室に通された私は
知らず知らずの内に
なんだか身体が徐々に
緊張して来ました。

「いよいよ何かが始まる……。」

と云う、期待と云うより
実際には
何とも言えない様な
圧迫感さえ感じて居ました。

卯月先生は
そんな私の様子には
全く無関心な素振りで
部屋の中程に有る
テーブルを見ながら

「そこのテーブルの椅子に
掛けて待って居る様に。」

と言い残すと
さっさと部屋を出て行って
しまったのでした。




続く…





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