この様にして
我家のお金に関する
全ての責任からは離れる
事となった私でも、やはり
それ迄の習慣か、いつもの様に
何気無い、ふとした瞬間に
不安な気持ちになる事が
有りました。
ところが
そんな或時、何かの用事で
母親に呼ばれて久しぶりに
実家に戻ると既に姉達は来て居り
そこで私達三姉妹が集まって
それぞれの近況を話しましたが
やはり遠くの土地で暮らして居る
私達家族の暮らし振りに就いて
色々と答えて居る内に私自身
もっと何か気の利いた話題は
無いものかと考えた末、そこで
引っ越しを機に家計の全てを
喜久雄に預けたと云う事を
我家の最新情報の一つとして
話した途端…
「えーッ!?…サ、サーコ…
あんた、何言ってんのよ!?
それって…ホントなの?
ま…まさか、冗談…だよね…!?
だって、もしそうなら…そんなの、
まるで自殺行為じゃない !?
いや、いや、絶対に有り得無いわ!
…ねぇ、芽衣子ネェ…?」
「…ったく…バカねぇ、美奈子…
そんなに驚いちゃって!
勿論、今のはサーコの冗談に
決まってるじゃない!?
大体、何でそんな事するのよ…?
するワケ無いじゃ無い…
そんなの、当ったり前でしょ!
全く…ホント、そんな悪い冗談、
サーコも、よく言うわョ、ねぇ〜?」
「ヤダ〜、サーコ !?
なんだ、芽衣子ネェの言う通り…
やっぱ、冗談だったの?」
「いや、2人共…別に、
そんな冗談なんかじゃ無くて…
本当に…ホントの事なんだケド…?」
この様に
私の話しなど
全く信じる気配も無い
この2人の姉達には
取り敢えず、一応そうなった
経緯として、とにかく
支払いなどの為にワザワザ
身重の私が幼い泰介を連れて
遠くの銀行まで、それこそ
度々、出掛けて行くのも
段々と難しくなる事などを
詳しく説明すると、この2人も
何と無く、その様な引っ越し先の
不便な状況に対してダケは
理解を示して居ました。
「でもさぁ…サーコ…
あの喜久雄さんに…全部って…
それこそ通帳から印鑑から
何から何まで渡しちゃったなんて…
あんた、ホントに心配じゃ無いの?
本当に信用出来るの?
ねぇ、やっぱり美奈子だって…
そう思うわよね…?」
「ほんとよねぇ、芽衣子ネェ!
だってサ、喜久雄さんったら…
あんな500万円も借金してながら、
隠したままサーコと結婚してサぁ…
しかも、その事がバレるまで、
ずっと誰にも黙ってたでしょ…?
結局サぁ、サーコやアタシ達や
皆んなの事を騙してたんだモンねぇ!
まぁ…もし、アタシだったら…
そんな大金を借金して来る様な
危なっかしい旦那には、それこそ
絶対に死んでも通帳や印鑑や
しかも、家の全てのお金なんか
預けるなんて考えられ無いワよ!
そんなの、全くトンデモナイわッ!?」
「ホントよね、美奈子!
それにサぁ…言っちゃ悪いケド…
あの喜久雄さんが、いつまた
借金して来るかも分から無いしね…
そう思うと、ホント!
やっぱり、何だか不安よね…!?」
この様に
私が行った方法には
まさに、この姉達2人は
全く否定的で有り、しかも
可なり心配して居る様子さえ
窺えたので、そこで私としては
少しでも、この2人の姉達に
安心して貰える様にと
更に説明を続けました。
「そうよね…これ迄の事を
考えれば、そりゃ当然だし…
2人の言ってる事も分かるケド…
それに…正直、私も最初は、
やっぱり、2人と同じ様に
大丈夫か考える事も有ったしね…
でもサ…そうは云っても
今となっては、もう完全に
私自身が家計やお金の事に対しては
一切、関わって無いワケだからね…
まぁ…だから起こっても無い事を
色々と考えたり一々想像して
心配してみたところで、
結局は、どう仕様も無い事なのよ…
それに…大体、現実的じゃ無いしね…
って言うか…そんな事考えたって、
実際、私の手元には、もう通帳も
印鑑も何にも無いワケなんだから…
もう完全に私には何の手出しも
出来無いって事なのよ…!
まぁ…或意味、そう開き直って、
考えてみたら…なんだかサぁ…
それ迄に喜久雄が勝手に作って来た
あんな借金なんか、寧ろ無実の
この私なんかじゃ無くて、それこそ
喜久雄が全部、自分の責任で
何とかすれば良い事なんだ…って!
まぁ…言ってみれば当然過ぎる程、
当然な事では有るんだケド…でもサ、
漸く、そう強く考える様になったのよ…
とは言ってもサ、喜久雄自身では
到底どうにもなら無い様な
大変な金額の支払返済なんかの
算段自体は勿論、当然ながら
とっくに私が対処して、既に
全て済ませて置いたからね!」
「サーコ、あんた…よく、
そんな呑気な事が言えるわね…!
あんた…ホントに、このまま
あんな喜久雄さんなんかに
全部、任せちゃって大丈夫なの?
ねぇ…芽衣子ネェだって、
ホントに、そう思うでしょ?」
「美奈子ネェ、大丈夫よ…!
だって、あの喜久雄の莫大な
借金が発覚した時には、直ぐにも、
本当に大変だった月々のサラ金の
支払い分は、この私が夜も働いたり
銀行でも何とか300万円を新規で
借りる事が出来たりして、それで
取り敢えずは、一息付けたしね…
それに、後の残りのサラ金の
150万円だって姉貴達夫婦にも
協力して貰って、とにかく高金利の
サラ金の元金ダケは何とか、
全て完済する事が出来たんだから!
そうしたら、その後の支払い分は
それこそサラ金の返済よりは遥かに
少額な銀行の新規のローンを
月々、引き落とされるダケだし…
それにサ、2人に借りた分は、
それぞれ既にボーナスを貯めて
一括で返済する計画も、当然、
予定通りに、ちゃんと現在も
進んでるから勿論、安心してね!
と、まぁ…こう言うワケだから…
我家の家計の遣り繰りって言っても、
ただ水道光熱や家賃なんかの
細かい支払いダケで、ホントに
特に難しい事なんか何も無いし…
まぁ、喜久雄に任せて置いても
別に大丈夫って事なのよ!」
「ふ〜ん…そうなのね…
う〜ん…でもなぁ…そうは言っても…
やっぱ、アタシだったら出来無いわ!
そんな…サーコみたいに、
自分の旦那なんかに…しかも
何もかも全て全部、預けるなんて…
そんなの死んでも無理だワよッ!?
ねぇ、芽衣子ネェ!」
「う〜ん…そうね…
美奈子の言う事も分かるケド…
まぁ…でもサ、サーコだって…
きっと、ちゃんと色々と考えて
決めた事なんだろうから…
もう、これ以上トヤカク言っても…
どう仕様も無いんじゃ無い…?
それに…だから私達としては…
後はサーコ達が上手く行く様に
見守るしか無いんじゃないの…?」
「うん…ありがとう…!
美奈子ネェも芽衣子ネェも
2人共、本当に心配してくれて…
ただ…こればかりは、とにかく
やってみなきゃ分から無いからね…!
それにサ、芽衣子ネェの言う通り
ホント…自分で決めた事だから、
取り敢えず、暫くやってみるワ!」
そう私が言うと
この2人の姉達も
漸く納得した様でしたが
それでも、やはり心無しか
引き攣った様な笑顔で
頷いて居たのでした。
そして
この様にヤタラと
心配する2人の姉達の
言葉や気持ち自体が、まさに
尤もな事だと、十分に
私自身が分かって居たので
それこそ、この2人に何か一言
言われる度に私の心は酷く
揺さ振られ、そこで気持ちが
暗く萎えて行きそうになるのを
必死に堪えながらも、それでも
この2人に対しては、その様な
様子を一切見せずに私自身も
笑顔を振る舞って居ました。
こうして
その様に一見
無謀とも思える様な
『喜久雄に家計を全て預ける』
と云った計画は、その後も
ずっと続けられる事となり
まさに当初は喜久雄自身も
不安な為か、何かに付けて
例の家計簿を私に見せて
これで良いかと念を押しては
安心感を得て居た程でしたが
しかし、さすがに初めての
家計の遣り繰りには喜久雄自身も
それなりに奮闘しながら真剣に
向き合って居た様でした。
そして
半年もする頃には
私も喜久雄も、それぞれが
大分お互いの役割りにも
慣れ親しむ様になり、しかも
更にその上、私自身は何だか
いつの間にやら喜久雄の
借金の事を心配する気持ちも
薄れて行きました。
そして
実際そんな事より
まさに日に日に張り出して来る
お腹の赤ちゃんの事と
その出産準備や、また
いつも側にちょこんと居る
幼い泰介の世話や、更には
日々の家事などで、とにかく
次から次と私の頭の中は
考える事や、また体にしても
する事が一杯だったのでした。
そう云った
我家の日々の
生活費のお金に就いては
勿論、喜久雄が計算し
それを2人で相談しながら
金額などを決め、そして毎月
それを私が直接、喜久雄から
現金で手渡されるので、当然
そこから泰介が風邪などで
掛かった病院代や、また直接
集金に来る新聞代などを
支払うのですが、それでも
食料品や生活消耗品などは
週末に一度、まとめ買いの為
それこそ喜久雄が愛車を出して
家族皆んなで一緒にスーパーに
出掛けて行く様にしました。
この様に
例え貧しくても
割と幸せで穏やかな
日常が続き、そこで
いよいよ出産が間近に迫った
12月の下旬頃には、それこそ
喜久雄も有給を取り、また更に
叔母さん自身も私の出産入院中に
泰介の面倒を見たいと云う事で
ワザワザ山荘からやって来る
事になり、こうして我家の方は
準備万端となりました。
ところが
私の出産に関しては
やはり母親と同様、陣痛微弱で
出産迄には可なりの時間が掛り
しかも陣痛自体が余りに
酷い激痛だった為、そこで
今回の出産は無痛分娩で
出産する事にしたのでした。
しかし
その出産予定日は直接
医師の都合などを考慮した上
お互い相談して決めると云う事で
まさに驚いた事に自分が出産する
その子供の誕生日を、まるで
神か創造主の様に予め決めると云う
実に畏れ多い事を、その産婦人科で
初めて経験する事となったのでした。
それでも
この産婦人科は
私営のクリニックだったので
看護婦さん達もベテランが多く
また病院の様に施設が広くは無い分
そのセイか家庭の様な安心感の有る
まさにアットホームな雰囲気で
私自身も出産から退院までの
約一週間を割と心地良く
過ごす事が出来ました。
しかも
今回の出産では
私自体が出産前の自然な
『おしるし(微量の出血)』
が来てから、その産婦人科に
行くのでは無く、当然ながら
私も医師とは既に出産日を
決めて居たので、その当日に
準備した荷物を持って車で
出掛けて行くと云う、まるで
出産日とは思え無い様な
余裕しゃくしゃく振りで有り
更には、やはり何と云っても
今回が初産では無く2回目と
云う事も有ってか、それこそ
前回とは打って変わって
全く切羽詰まった様な感覚や
緊張感も有りませんでした。
ところが
唯一の心配は
その初めての無痛分娩が
一体どの様な感じなのか
全く分からず、それこそ
事前に医師から説明されては
居たものの、それでも
その医師自体が男性だった為
当然、無痛分娩の実感などは
実際に分かる筈も無く、従って
その感覚や体感自体は、やはり
自分で体験してみない事には
何とも云え無いのでした。
そこで
私としては初産の時の
あの陣痛微弱の苦痛や、更には
執拗に襲い掛かる陣痛の
激しい痛みからさえ逃れられれば
と云う思いダケで未知の領域だった
この無痛分娩に、それこそ敢えて
挑戦する気になったのでした。
しかも
その効果は如何ばかりかと
期待して居たのも束の間で
先ず無痛分娩を行なう為には
背中から細い管(カテーテル)を入れ
麻酔薬を継続的に注入することで
陣痛の痛みを遮断し、しかも
意識は保ったままで分娩する
と云う事は当然、事前の説明で
分かっては居ましたが、しかし
何が痛いって、そのカテーテルを
腰の辺りから背中に入れて行く
それ自体が、それこそ全く
信じられ無い程、物凄く痛くて
本当に途中で何度もメゲそうに
なりながらも、これで陣痛が
楽になると自分に言い聞かせては
その苦痛に耐えて居ました。
ところが
その様な或意味
余計な苦痛に耐え忍んだにも
拘わらず、いよいよ、そこで
陣痛が始まったとなったら何と
その痛みは以前の陣痛の時と
全く変わる事が無いばかりか
まさに、その激痛は、それこそ
執拗に私に襲い掛かっては消え
そして、また暫くすると、更に
もっと痛みが激しさを増しながら
何度と無く繰り返されるので
まるで寄せては返す嵐の中の
荒波の様だったのでした。
しかし
陣痛前に行われた
先程の無痛分娩の施術では
海老の様に背中を丸めながら
ポーズをさせられて居ると
何と背後の医師からイキナリ
『本当に少しでも動くと危険だ!』
と突然そんな恐ろし事を云われたので
私は完全に恐れ慄いてしまい
そこで、ひたすらジッとして
それこそ息を殺す様にしながら
『まな板の鯉 』よろしく
まるで死体の様に硬直し全く
微動だにもしませんでした。
それでも
確かに背中からは
まさに異物を入れられて居る
異様な感覚と共に激痛が走り
それはまるで、それ迄には全く
経験した事が無い程の恐怖心と
何とも言い難い様な違和感を伴う
激痛だったのですが、しかし
それにも拘わらず、実際には
陣痛では全く、その激痛が
緩和される事も無く、やはり
前回の初産の時とは余りにも
変わり映えがしなかったので
それこそ無痛分娩施術の苦痛に
ワザワザ耐え忍んで来たのは
一体、何の為だったのかと
その無駄とも云える様な努力に
我ながら無念さを感じたのでした。
こうして
結局、陣痛前には
その無痛分娩の背中の
カテーテル挿入も無事に済み
私自身その恐怖心と激痛からも
漸く解放されて、やっと何とか
一安心して落ち着いて居ると
そこへ、ベテランの看護婦さんが
これから始まる長い陣痛と
出産するまでの、ほんのひと休みの
おやつとして、可なり大き目の
『どら焼き』とお茶を持って
来てくれました。
ところが
その時に食べた
『どら焼き』が本当に
美味しくて、またその皮の
カステラとアンコの絶妙な
甘さが何とも云えず、そこで
私も思わず幸せ一杯になり
先程の無痛分娩施術で背中に
カテーテルを挿入された時に
味わった恐怖や激痛の事なども
何だかスッカリ癒されてしまい
しかも、それだけでは無く
まるで、その『どら焼き』からは
何だか新たなエネルギーでも
生み出されて来るのか、まさに
そんな気がする程で、何故か
その後は、ずっと出産が終わる迄
不思議と体力を保ち続ける事が
出来たのでした。
続く…
※新記事の投稿は毎週末の予定です。
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