118 紫電改 ~WWⅡの翼から第11回~

紫電改

 

お久しぶりになっちゃいました、ゴメンナサイ

ゼロ戦についで日本人が大好き、かもしれない紫電改

毛が生えてきたりもします!?

敬愛する航空エッセイスト故・宮田豊昭さんの力も借りて

(参考文献:国破れて戦闘機 宮田豊昭=著) ※一部抜粋 

 

あたしの力も借りなチャイな

 

強風

紫電改の原型となった水上戦闘機

欧米を真似て、ひたすら拡大発散してきた帝国日本

占領した南洋島嶼の防衛は如何に

 

水上戦闘機という世にも珍妙な機種

バッタバッタと、誰をなぎ倒せるつもりでいたのかなあ?

 

軍事政権の宿命

富は偏り、国自体はボンビー

優秀な人材を集めては権力闘争、派閥争い

農業や基礎工業力など後回し

飛行場を設営する機械力もまるで足りず

まともに整地され舗装された滑走路など国内でもわずか

 

岸に乗り上げて整備も大変そうだ

偏向するトルクを避けるため2重反転プロペラを採用したけど

扱えきれなくてすぐにボツ

 

そうだ広い海なら滑走路はいらない

水上戦闘機を作らせよう

優秀な幕僚が机上で編み出した妄想

 

水上戦闘機は飛行場ができるまでの「補用戦闘機」だ。

もしくは飛行場を作るまでのない、

暇な戦域を守る「暇な戦闘機」である。

 わざわざ本格的に作る戦闘機ではないはずだが、

熱を入れて作ったところが日本海軍である。

 

猫は暇が一番

 

例によって開発は難航、実用化できたのは1943年末期

すでに戦況はひたすら劣勢

強風がのんびり活躍できる場などどこにもなく

100機にも満たず生産終了

 

あれやこれやソレ

優秀な頭脳は先端技術を駆使して妄想まみれ

実戦ではほとんど役にたたなかった

 

時を少し巻き戻して

強風の受注に成功した川西

飛行艇または水上機の開発経験が豊富な会社

 

飛行機がヘソ天したら大変なことになるけど・・・

猫は💕

 

じゃがしかし!

飛行艇などは生産数が少なくこのままではジリ貧

「陸上戦闘機もやらしておくれやす」 必死の営業

時は、太平洋戦争開戦直後

実際は薄氷の勝利だったにもかかわらず

望外の勝利に浮かれて帝国海軍

「良きに計らえ♪」

 

勝って兜の緒を締めよ、そんな格言を忘れて

浮かれている高級官僚を思うと、今もそうだと暗い気持ちになる。

 

紫電

太い胴体に繊細なエンジン

長過ぎた脚に精緻なプロペラ

技術ばかりが先行、工業力を無視した無謀な設計

 

紫電

最大のライバル「雷電」の開発が先行している

 

川西にもご祝儀発注で、「雷電」に遅れをとれば、

いつ海軍の気が変わらないでもない思いがあったろう。

「強風」のマイナー・チェンジで対応しようとした決心が分かる。

強風は雷電とエンジンも同じだし、

フロートを外せば雷電に近い性能は出せる。

エンジンが「誉」なら雷電を越せるかもしれない。

遅れをとって海軍から「もう要らない」、

と言われるのが川西最大の恐れだったろうと思う。

 

近所で見かけた黒白

わりと人馴れしてた

強風は中翼だ

理由は水しぶきを避けるため

紫電は中翼のまま主脚をつけた

当然脚は長くなるから、油圧による2段引込式を採用した

 

盲者の蛮勇というべきだろう長い足を選んだ。

機銃の位置は変えられないから、

いったん縮めてから引っ込めるという奇術のような方式である。

若気の自負がむんむんする。

 

2023千歳基地航空祭の予行飛行してた

F-15J

 

これが文字通り紫電の足を引っ張っる

整地不十分な飛行場では

簡単にグランドループし、折れた

離陸すれば引き込まず、着陸時には出ない

多くの操縦士が失われた

 

その上エンジンも変えた。

失敗を忘れてしまった功名心が見えるようだ。

博打で負ける典型的なパターンである。

もし雷電がそこそこに成功していたら、

紫電は敢えなくボツになっていただろう。

 

札幌へ行く用事があった帰り

千歳駅で出会った単両の石勝線用キハー105-110

気になってたから感激しちゃった

 

優秀な技術者たちの頭脳が作り上げた

高オクタン燃料を前提にした

夢の高性能小型軽量2000馬力級空冷エンジン

 

最後まで紫電改のライバルだった雷電

本来は爆撃機専用インターセプターだったけど

実際の戦場ではそんな区分など吹き飛ばされてしまった

 

帝国海軍はカタログ性能に狂喜乱舞

しかし、トラブル続出

マトマもなマニュアルも与えられず経験だけが頼りの

現地整備兵にとっても扱いきれない製品だった

 

誉は現場でエンジンを作る人たち、

それを整備する人たち、使う場所、使うガソリンの質など、

現実的な配慮にまで及ばない設計であった。

 

はたせるかな実用段階で故障が続出した。

油温上昇、冷却不足、混合気不均等、油漏れ、

軸受け破損などが続発し著しく稼働率が落ちた。

 

機動飛行中のF-15Jに挑むカラス??

低速格闘戦ではカラスの方が勝つな!

 

プロペラ

戦前にライセンスを取得したのは

ハミルトンスタンダード社の定速可変ピッチプロペラ

零戦を含めほとんどの国産機に使い回されたけど

戦争により更新の道は閉ざされ、無許可改造も限界

同盟国ドイツ製のライセンス生産を目指した

 

プロペラは直径3.3mの恒速4翅。

油圧式VDMだがこれが問題だった。

信頼性に乏しく取り扱いが難しい。

2,000馬力を吸収するプロペラは、

もうライセンスを買っての模倣では済まないレベルに達していた。

 

実戦を経験した零戦パイロットの要望は

被弾に弱い、高速急降下ができない

武装(20ミ砲)が少ない、横転性能が悪い

 

ドイツでは普通に大量生産されてる

飛燕に搭載されたダイムラー・ベンツ製のエンジンも同じだ

軍事政権御用達の財閥系大企業

偏差値優秀な人材を集め技術は一流を目指したけど

実現するための基礎工業力

育てる気配は微塵もない

 

太平洋戦争中、帝国日本最大の仇敵戦闘機ヘルキャット

世界レベルでは平凡な性能といわれたけど

日本がこれを超える戦闘機を作れなかったのはホントだ

 

 

夢に描いた妄想は

ドラえもんのポケットように自在に出現してはくれなかった

 

日本に鹵獲されてたヘルキャット

技術と工業力には圧倒されただろうな

 

脚、エンジン、プロペラの三重苦を背負った紫電

もはやというか最初から旧式化してた零戦

期待・切望の後継機として

太平洋戦争後半のフィリピン戦に投入されたが

 

日本軍に対しては圧倒的だったけど

決して無敵ではなかった

空母エンタープライズに着艦失敗

 

信頼性に乏しく稼働率は5割にも届かなかった

戦闘損失よりも訓練損失のほうが多かったと言われている

まともな活躍などできないまま消耗してしまった

 

翼をこのように折り畳めた

先端を手動で折りたたんだだけの日本機とは空母搭載量に

圧倒的差ができた

 

 

振動と視界不良によりいつまでたっても実用化されない雷電

陰口が囁かれた

「雷電 紫電 国を滅ぼす」

 

日本機撃墜マークを描いたヘルキャット

日本の戦果はちょお誇大、アメリカだって割りと過大気味だった

だから損失を見るとだいたいホントのところがわかる

 

紫電の改造は意外と早く試作機が飛び始めた頃だ

 

本来なら「急がばまわる」のが筋なのだ。

川西だって分かっていたはずである。

でなければ短期間で紫電を作り、紫電改に改造する設計を、

矢継ぎ早に時期を失せずできるわけがない。

たぶん心の底に、

海軍の気が変わらぬうちに実績を作ってしまいたい

目論みが働いていたのだろう。

そこには軍とメーカーの不健全な関係がある。

 

中翼から低翼

小直径の誉に合わせ機首周りをややスリム化

前方視界が改善

垂直尾翼は紫電までとは違い、胴体下部まで延長

方向安定性がよくなった

 

戦後アメリカに渡った紫電

アメリカの整備力と高オクタン燃料によって

ようやく時速600キロ超を出せた

 

生き残った精鋭を集め紫電改を集中装備した343空

呉沖邀撃戦でアメリカ艦上機群を58機屠った

(52とか発表では60機以上という異説あり)

ことになっているが

米軍の損失は攻撃機を含めて10数機

紫電改も同じくらい失われているから

よくて互角、4対6くらいの劣勢がたぶんホントのところ

 

紫電改のライバルともいえる陸軍の疾風

同じエンジン誉を積んでた

 

自動空戦フラップ

紫電と紫電改に装備されてた

速度と水銀により旋回加速度を検知し

 

どんな速度でも最適揚抗比になるようフラップを操作する巧妙なシステムである。

 

原理、機構、作動は素晴らしい。

・・・・・

しかし自動空戦フラップを手放しで称えることができない。

旋回戦闘への拘りだからだ。

空中戦を旋回戦闘と信じている証拠品で、

空中戦を根本から考え、いかに勝つかを考えていない告白に等しい。

 

骨まで削り限界以上に減量した零戦

ほとんどアップデートできなかったけど

戦地の要求に必死で答えようとしたら

「あれえ?」

それってワイルドキャットの性能に近づいてねえ!

最初からワイルドキャット買っとけばよかったな?

 

時速400キロ未満の低速格闘専用機

「零戦」が誕生する前

日本ではまだ96艦戦の時代

1000馬力級エンジンを搭載したドイツ戦闘機

求めたものは速度と高度

たちまちイギリスが続き、日本を除く世界が追従した

戦闘機に必要なのは速度と高度だ

 

隼や鍾馗の下地があったから生産は紫電改より多く

大東亜決戦機などと期待された疾風も

エンジントラブルに悩まされ

軽戦の格闘思想に引きずられたから

もっさりとした性能で

パイロットからの評価は低かったともいわれている

 

地上からレーダー支援を受け、仲間と連携を取り

時速600キロ以上での高速機動、組織戦闘が標準となる

紫電改の時代、すでにヨーロッパでは

Me262ジェット戦闘機が登場し時速800キロ以上で

空戦ではレシプロ戦闘機P-51マスタングを圧倒していた

 

新千歳空港で見かけたプリキュア・ピーチ

プリキュアに仮面ライダーと戦隊ヒーローもの

シンプルでたまにシリアス

子どもや一部変態的?オトナに受けるのがわかる

 

欧米において戦後、自動空戦フラップに感心した気配はない

帝国日本で最良の戦闘機は「雷電」という評価がある

つまりひたすら速度と高度

低速格闘戦能力など見向きもされない

 

双胴の悪魔とドイツ人に恐れられたP-38

ただし地上軍にとってであり

空戦ではカモに近い

 

太平洋戦争におけるアメリカの撃墜王は

格闘戦能力皆無と言える双発戦闘機P-38のパイロット

第2位もそうだった

山本五十六長官の乗った爆撃機を撃墜した機体でもある

護衛の零戦が1機も撃墜できず

1機も撃墜されなかったことが証明している

相手にされなかった

 

P-38を含む戦闘機は高速機動で零戦に対抗できた

P-51やF8Fは時速600キロ以上で機動する高速格闘戦闘機だ

ここに格闘戦への誤解やミスリードがある

零戦は時速400キロ未満の低速格闘戦専用機であり

世界に類を見ない珍機だった

 

 

紫電改はカタログ性能ではF6Fヘルキャットと同等

あるいは凌いでいる部分もあった

しかし、無線機の性能は相変わらず劣悪で

空に上がればほとんど単独戦闘しかできなかったから

苦戦は免れなかっただろう

 

ヘルキャットを一蹴したことになっている紫電改

実際の戦果は互角未満

紫電や雷電も含め戦闘よりトラブルで失われる機体の方が多かった

 

「誉」は制限がかけられ

実測1300馬力くらいしか出ていなかったとされる

それでも稼働率は30%くらいしかない

ドイツ製VDMプロペラも国産化では信頼性が低かった

さらに脚も

短くなったとはいえ大型化した機体を支えきれない

高速を目指した層流翼も

 

層流翼は層流が保てるように表面仕上げができないと

額面通りの性能は出せない。

P-51ムスタングは厚板を使って凹凸を無くし、

最後はワックス仕上げをしたというが、

残念ながら紫電の仕上げは粗かった

 

新千歳空港RUNWAY19Lに着陸侵入する

スカイマークのピカチュウボーイング737

 

何故か日本では理不尽に危険機扱いされてるオスプレイ

零戦や雷電、紫電・紫電改は

それよりはるかに多くのパイロットが犠牲になっている

多くの欠陥には目をつぶり

国内ではいまだに最強の戦闘機などと呼ばれている

零戦以降まともな航空機が作れなかった日本

理由が透けて見える

 

戦争は人間の営みのうち最もクリティカルなものであり、

クリエイティブなものだ。ダイナミックに形を変える。

先入観に縛られた方が負け、未来を予測して対応できる方が勝つ。

・・・

 

手本の社会があり、追いつくことが目標の構造では、

優秀な人材を官僚として選んで先頭を走らせる。

それが最も効率的な方法だ。

すなわち回答が分かっているのが前提なら、

偏差値秀才が優遇される原理である。

 

ところが手本が無くなれば、

とたんに偏差値秀才は無能レベルに到達する。

未来予測は努力の対象で無いからである。

不幸なのは秀才ともてはやされ、

本人も無能とは思わないし周囲にも思えない。

 

未来が重戦闘機の時代になるのか軽戦闘機の時代が続くのか

岐路に立ったとき、

秀才・軍事官僚たちは無能レベルに到達していた。

・・・

 

戦後経済が世界レベルに到達したとき、

復興で優秀だった官僚たちは一斉に無能レベルに到達した。・・・

 

高校時代雷電をデフォルメした妄想戦闘機

実際には実用化できなかった排気タービンもつけてるぞ

 

紫電改

民間より優秀な人材を集め

自分たちが至高であると信じて疑わない軍事官僚

その浮かれ気分のスキをついて民間が発想

雷電や烈風ほど理不尽な干渉は少なかった

 

紫電改を妄想改造してみた割りとオリジナルに近い機体

もちろん三五型なんぞ存在しない

 

が!

いかに優れた設計であっても

おろそかにしてきた

貧弱な工業力では製造できるはずもなく

七転八倒しているうちに

日本が破滅してしまった