かねてよりインド伝統武術にして中国武術の源流とも謂われるカラリパヤトゥに興味があったので、大変面白かった。

 カラリパヤトゥの技が、何故、こんなにも秘匿され、表に出ないのか、その理由に納得出来た。

 武医同術と云うけれど、カラリパヤトゥは武医一体の体系で、その伝統は日本の古流柔術にまで及んでいる。ゆえに、現代武道が医術を捨ててしまったことは残念でならない。

 「他流修行者や未熟者等、見る資格の無い者が秘伝書を見ると、神罰により目が潰れる」と云う日本古武術の教えと同様、カラリパヤトゥの修行者もその内容を大切に秘匿していたようだ。

 この本の最後に触れている獅子吼金剛拳。チベットが侵略された際に継承者が根こそぎ抹殺され、遂に絶伝してしまった、のだそう。
 日本の占領時代にもGHQによって武道禁止令が出されたことがあったが、これによって絶伝してしまった武術流儀は、多分、無かったのではないだろうか。

 本の内容は勿論、素敵なイラスト満載の楽しい本です。